IOM駐日代表 佐藤美央さん【後編】

インタビュー
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IOM駐日代表の佐藤美央さんにインタビューをしました。前編に続き後編では、IOMで働くということ、佐藤さんが今若者に伝えたいこと、そしてお話を伺ったインタビュアーがどのようなことを感じたのかについてもお届けしていきたいと思います。

【IOMでの仕事について】

「移動」は一人ひとりの状況や意思に配慮しなければならないお仕事だと思います。「移動」を扱うことの難しさやお仕事をする上で意識していることがあれば教えてください。

   一人ひとりそれぞれのニーズがあります。しかし、政府やその他のパートナーからいただいたお金を使う支援ですので、本人たちの望みをすべて叶えることはできません。それに、「人の移動」を扱うという意味では、国内での移動も含まれるため、全く移民になったことがないという人は少ないくらい「移民」に当てはまる人は多いのです。私たちは優先順位をつけなければなりません。やはり、生命の危機に関わることは最優先です。もっとも弱い立場にある人々は現状から、その場所から逃げることさえできません。そこで私たちが人権を守るために何ができるのかを考えます。ただ、支援される側は何もできないと思われがちですが、彼らにできることもたくさんあります。私たちは彼らのできることの幅を広げ、最終的にはなんとか自分で解決できるように手助けします。移動先の生活を見据えた技術訓練など、「移動したことで生じる新たな条件」への対応が重要になってきます。移民を受け入れることは容易なことではないので、受け入れ先のコミュニティーを支援することもあります。

移動する本人のことだけでなく、受け入れ先の立場に立って考えることも大切なのですね。では、IOMで働くことの楽しさや魅力は何だとお考えですか。

   いろいろな国籍の人、いろいろなバックグランドを持つ人と働くことができることです。IOMでは感染症対策のため医師やレントゲン技師とも行動を共にします。元軍人や警察の人がセキュリティを担当していることも多々あり、日本では一緒に働くことがないような人たちと関われることは非常に面白いです。

国際機関は女性にとって働きやすいと聞いたことがありますが、実際IOMで働いていてそのように実感しますか。

—    本当に女性にとって働きやすい環境だと思います。国内では、「制度はあるけれど利用しづらい」ということが度々あると思いますが、IOMでは男性も育児休暇を取るのが当たり前です。責任ある立場の人も、現地採用の人も皆育児休暇を取得しています。有給休暇もすべて使うことが普通なので、自分が休暇を取るときには他の人に仕事を頼みますが、嫌な顔をされることはありません。IOMでは、開発途上国やセキュリティの安定しない国などに赴任して、同僚とゲストハウスで一緒に暮らすこともあります。日頃の便利な生活とは異なる上に、ずっと同じ人たちと同じところで過ごすため、長期間だとストレスを感じることもあります。そのような環境では、セキュリティや医療へのアクセスなどの条件によって、6週間*勤務すると、5日間*はその生活から一旦離れることができるという制度があるなど、適切な方法で対応しています。(*それぞれの期間や頻度は地域によって異なります)

【最後に】

この記事を読むユースへメッセージをお願いします。

—    国際機関は「安定性が低い」と言われています。確かに次のポジションは毎回応募しなければなりません。しかし、どんな職業も100%安定しているわけではないことを考えれば、わざわざリスクをとる必要はないとしても、リスクを減らそうとする必要もそこまでないのではないでしょうか。世の中で言われていることにとらわれすぎず、選択肢を狭めずに、もう少し柔軟性をもって「人生」を考えてみても良いと思います。

コンピューターが普及して仕事の形態が20年前と大きく変わったように、働き方は常に変わり続けるでしょう。もちろんAIなどの最新技術によって失われる職業もあるかとは思いますが、新たに生まれる職業もたくさんあるはずです。そうした状況下では、自分の強みや好きなことを理解していることが大事になってきます。やっぱり好きでないことはできないですよね。また、これまでやってきたことに一貫性があるということは国際機関で働く上でも重視されます。しかしそれは説明力次第です。大事なのは、自分の姿勢が一貫していることを自分なりに説明できるかどうかだと思います。

【インタビュアーの感想】

—    IOMでの業務内容はもちろん、キャリアや学生時代の話も詳しく教えてくださり、私にとって刺激の多いインタビューとなりました。自分の「今」やりたいことにまっすぐ進む強さは、しっかりと自分と向き合ってこそ得られるものなのだ、ということを佐藤代表から学びました。まだ進路が決まっていない私ですが、自分の本当にやりたいことを見極めるように頑張りたいと思います。佐藤代表、貴重なお時間をありがとうございました。

(インタビュアー:もつ)

—    国際移住機関は人の移動に全て専門的に扱うため、どんなバックグラウンドをもつ人も、いろんな形で、国際移住機関に貢献することができるというお話が新鮮でした。私の専攻である医学が人の移動に関わるということは普段考えもしなかったので、移民の方が健康な生活をできるように出国前の健康診断を行なうという形で重要な役割を担うということに驚きました。この記事を読んでいるユースの皆さんは、勉強している分野や得意分野が一人一人異なり、中には将来どう貢献したら良いかわからない人もいると思いますが、どんな人もそれぞれの強みを生かして国際貢献ができると感じました。お忙しい中お時間を割いてくださった佐藤代表に心から感謝申し上げます。

(インタビュアー:かな)

前編・後編に渡ってインタビューの様子をお送りしてきましたが、いかがでしたでしょうか。国際機関で働くことという内容にとどまらず、ご自身のお仕事に対する姿勢や考え方も教えていただきました。私たちが職業選択をしていく上で役立つヒントもたくさんありました!佐藤さん、本当にありがとうございました。


 

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VoYJ広報部員。最近、降りたことのない駅で降りて、現地の人が経営している韓国料理/タイ料理/インドカレーのお店を探すことの楽しさに気がついた。辛い料理でエナジーチャージしている女子大学生。