TBS 井上貴博アナウンサーインタビュー【第3弾】

インタビュー
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こんにちは!VoYJ事務局です。

2024年5月18日(土)に、東京大学五月祭にて「ボイス・オブ・ユース JAPAN 特別公開インタビュー」と題し、TBSの井上貴博アナウンサーにインタビューを行いました。

井上アナは2007年のTBS入社以来、主に情報番組を担当されています。「はなまるマーケット」や「朝ズバッ!」、「ビビット」などの番組を経て、2017年からは夕方の生放送番組「Nスタ」に出演中です。また、毎週土曜日にはラジオ番組「井上貴博 土曜日の『あ』」を担当するなど、ニュースキャスターからラジオパーソナリティまで幅広くご活躍されています。

当日は、東京大学UNiTeと白梅学園清修中高一貫部から6名のインタビュアーが井上アナのバックグラウンドやキャリアに関して質問をしました。

会場には幅広い年齢層の約50名が集まり、普段テレビで見る井上アナのお話に熱心に耳を傾けていました。

そんな井上アナへのインタビューの様子を、全3回に分けてお送りします。

第3弾となる今回は、テレビというメディアやアナウンサーという職業が持つ可能性について伺いました。

井上アナのプロフィールはこちら

井上 貴博アナウンサー:名鑑|TBSテレビ:TBSアナウンサーズ

 

インタビュー第1弾はこちらからご覧ください!

インタビュー第2弾はこちらからご覧ください!

インタビュー実施後の様子

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—【質問5】(東京大学UNiTe 金澤)テレビ業界に対する世間のイメージと実際の状況について、テレビ業界に長い間携わってきた井上アナはどのようにお考えですか。友人たちの中には、テレビ業界は上下関係が厳しい、というイメージを持っている人もいるみたいです。

—(井上アナ)みなさん、テレビ業界は上下関係が厳しいなんてイメージ持たれてますか。時代の流れもあるかもしれませんが、その前から私は上下関係が厳しいとは、あまり思ったことはないですね。もしかしたら、野球部時代に鍛えられていて、それを感じないだけかもしれませんが(笑)
テレビ業界はパッションがあって面白い人が多いです。もしかしたら、テレビ局はいつかつぶれてなくなるかもしれないけれど、まだまだ面白いことができるかもと、私はその可能性を信じています。

—(金澤)最近では、AIアナウンサー、なんてものも普及してきていますよね。一方で、地震などの災害時には生身の人間であるアナウンサーが伝えることの重要性も叫ばれていました。どのようにお考えですか。

—(井上アナ)私はむしろ、AIアナウンサーがどんどん普及していけばいいと思っています。アナウンサーという仕事がなくなってもいいけれど、それで世の中がどうなるのか見てみたいです。AIは噛まないですしね。もちろん負けたくないという思いもありますが、それが時代の流れであるなら、むしろ個人的には気になります。でもそれが、社会のために良いのかどうか、というのは自分でもまだわかりません。

—(金澤)井上アナは、今後もテレビ業界で仕事をしていく上での軸やビジョンなどは何かお持ちですか。

—(井上アナ)テレビで表立って何かを伝えることって、本当に難しいんです。特にコロナ禍ではそれが異常で、もうテレビに出たくないなと思うことさえありました。
自分でもコロナウイルスという感染症がどういうものなのか分からない中で、それが大きなリスクであると伝えると、「コロナはただの風邪にすぎない」と考える人からバッシングされ、逆にコロナはそれほど恐れなくても大丈夫だと伝えると、それを怖がっている人から批判されて。どちらの意見を取り上げても、アナウンサーとしての自分の人格すべてが否定されるのなら、結局何のために自分はいるのだろうと考えました。

テレビは、あたかも「これは正しいですよ」と報道するような傲慢さを持っていて、そのしっぺ返しがきたのだとも思いました。いろいろな意見を調整して、バランスを取る、というのもかえってエゴだと感じて、むしろ私は、今後は自分の軸を持って話そうと決めました。

—【質問6】(東京大学UNiTe 加藤)アナウンサーとして、誰かの「ボイス」を伝えることの責任は何でしょうか。私は地方出身で、テレビから情報を得る人が周りにはまだまだたくさんいます。すべての人の意見を満遍なく伝えることはできない中で、一部の声を切り取ったり、自分の言葉で誰かを傷つけたりしてしまうかもしれない、ということに怖さを感じることはありませんか。

—(井上アナ)そういう怖さは常にありますし、アナウンサーとしての責任も感じています。でも、そのような怖さを忘れる瞬間もあって、そのことも怖いです。
取材等を通じて、現場で全員の声を伝えることはできません。そんな時私は、「主語を一番小さくして話すこと」を意識しています。つまり、「高校生は〜」「若い人は〜」「国民は〜」という言い方はできるだけ避けるようにしています。
令和の時代になってからは、誰も傷つけない言葉を使おう、と言われることがありますが、果たしてそんな言葉があるのだろうか、その言葉を使うことで伝えたいことが本当に伝わるのかと思ってしまうことがあります。
もちろん、自分の言葉で誰かを傷つけてしまっていいとは思いませんが、それで「誰も傷つけない言葉」を使おうとすると、自分は何も言えていないんじゃないか、とも感じてしまうんです。最終的には、「自分」がそれで傷つく覚悟があるかどうかだと思います。
いずれにせよ、アナウンサーとして、自分の言葉で誰かを傷つけてしまっているかもしれない、という思いは常に抱いています。

—(加藤)現代はSNS等において暴力的な言葉が溢れていて、それで傷つく人も多くいると思います。そんな世の中で、テレビを通してメッセージを伝えることの意味はなんでしょうか。

—(井上アナ)テレビは、世の中を正すほどパワーのあるメディアではないと思います。私は1984年生まれですが、子どもの頃は「楽しくなければテレビじゃない」というスローガンが生まれるほどで、テレビは「正しさ」よりも「面白さ」という時代でした。
ですが、ここ10年ほどでテレビに「正しさ」がより一層求められるようになったと感じます。もちろんアナウンサーとして、テレビを通して真実を伝えたいとは思っていましたが、それは本来、姿勢を正して見るようなものではなかったはずなんです。
SNSは悪ではないですし、テレビとしてできることなどそんなにないのかもしれないと悲観もしていますが、それでもまだテレビに勝負できるところはあるとも思っています。いずれにせよ、テレビを取り巻く環境や期待される役割はますます難しくなっているようには感じますね。

—(司会 佐々)井上アナより、本日会場にいる、そしてインタビュー記事を読んでいるユースに向けて何かメッセージをいただけますでしょうか。

—(井上アナ)年齢を重ねると、「これは無理だ」「これはできない」と頭でっかちになって、何かをやる前に蓋をしたり、失敗や恥が怖くなったりします。
でも、若いうちは自分の可能性に蓋をしないでください。いわば誰しもが大谷翔平さんになれるのに、自分は彼とは違うと諦めてしまう人が多くいると思います。肩書がすごい人を前にしても、自分はそれを超えていけるはずと、大きく羽ばたいていってほしいです。

そして何より、いま「ユース」である時間を大切にしてもらえたらと思います。

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参加してくださった白梅学園清修中高一貫部のみなさんから、感想をいただきました

ゆきみだいふく:とても貴重な体験をさせていただきました。
井上アナウンサーが仰っていたことのなかで特に心に残っている言葉があります。
自分が今失敗だと思ったことでも、その後の自分にとって役立つこともあるため、たくさん失敗したほうが良いという言葉です。
私は普段、失敗することを恐れて何かに挑戦しようとしたことがありませんでした。
なので、このお話はとても印象的で、これからの人生において大切に心に留めておきたいと感じました。

なち:これから大学や会社など社会に入っていく前の高校生の時期に井上アナのインタビューを聞いて、大学での過ごし方や自分が後悔しないような会社の選び方など、今後役に立ちそうな、大人の視点の意見をいただいて、とても良い刺激を受けました。また、何にも捉われていない子どもの時期だからこそできることがたくさんあると聞き、学生の時間をより大切に、楽しんでいこうと思いました。

ゆうか:憧れとして見ていたアナウンサーに実際にお会いして、実際に話を伺って、とても貴重な体験になりました。アナウンサーの実際を知ることができて将来の参考になりました。
この体験をさせていただいたことはこれからの人生に役立つと思います。ありがとうございました。

まい:私は危険な道があると挑戦しようとしないことが多いですが、井上さんのインタビューで挫折を経験することも大切だと学ぶことができて、お話を伺えて良かったなと思いました。

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いかがでしたでしょうか。

TBSの井上貴博アナウンサーへのインタビューを行った今回のイベントの様子は、東京大学五月祭にて一般公開しました。

当日会場にお越しいただいた皆様、この記事を読んでいただいた皆様、本企画にご協力いただいたTBS社の皆様、そして何よりご多忙の中たっぷり1時間お話をいただいた井上アナウンサー、本当にありがとうございました!


 

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