UNICEF東京事務所 正木絵理さんインタビュー【後編】

インタビュー
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国連児童基金(UNICEF)東京事務所 コミュニケーション専門官の正木絵理さんのインタビューを全2回に分けてお送りします。

後編では、ワークライフバランスやVoYJについての思い、今後の夢についてお話しいただき、最後にユースへのメッセージをいただきました。

現在のお仕事や、ユース時代から現在に至る軌跡に関してお話しいただいた前編はこちら

 

【正木絵理さんの経歴】
UNICEF東京事務所 コミュニケーション専門官

創価大学経済学部を卒業後、外資系商用車メーカー、PRコンサルティング会社、外務省に勤務。
米国ジョージタウン大学外交政策学修士課程修了。2019年からUNICEF勤務。カンボジア事務所と東京事務所でのインターン、NY本部でのJPO(Junior Professional Officer)を経て、2021年2月より現職。

 

⑥プライベートと仕事の両立について教えて下さい。

今0歳の子どもがいて、仕事とプライベートが両立が出来ているかと言われると、今はかなりギリギリのところでバランスを保っている、というのが正直なところかもしれません。

ニューヨーク本部にいたころは、子どもが生まれる前だったので、プライベートと仕事の両立が比較的簡単にできていました。例えば、17時に退社出来る日は、帰りにヨガ教室へ行って、そのあと友達と食事を食べに行き、瞑想して本を読んで寝るといったような生活を送ることも可能でした。子どもが生まれてからは、子どもが泣くタイミングとか、体調を崩すタイミングとか、自分ではコントロールできないので、色々な計画が思うように行かないことも計算に入れながら、今まで以上にずっと効率的に仕事の予定を組んでいかなくてはいけません。

ニューヨーク本部にいたころの、上司は40代女性で子どもが2人いて、華々しい経歴もあって、100人以上いる部下の名前をひとりひとりしっかりと覚えるような仕事面でも人格面でも素晴らしい人でした。そんな完璧な人がとあるキャリアセミナーで、自分自身のワークライフバランスについて聞かれた際「バランスをとることなんて出来ない」と正直にいったんです。子育ても仕事もどちらも力を抜くわけにはいかず、50%50%でバランスを取るなんて実際はできないのだから、私は両方で100%やるつもりで臨んでいる、というような話をしていました。母親になった今、この言葉の意味が初めてよくわかりました。子どもがもう少し大きくなると、少し変わってくるのかもしれませんが、今の私も、両立ではなく、どっちも自分の出来得る限りの精一杯を尽くす中で、なんとかやっている感じです。

ありがたいことに、そんな中でも、子育てと仕事を両方やってきた先輩方が周りにたくさんいて、大変さをわかった上で「お子さん小さいけど、大丈夫?」と声をかけてくれる先輩方がたくさんいます。UNICEFは子どもに関する機関ということもあり、組織として、子育てにはとてもサポーティブです。子どもの権利や幸せに携わる機関だからこそ、自分の家族を大事にすることを尊重してくれます。UNICEFの出産・子育てに関するサポートは他機関と比べても、とても充実しており、例えば産休は国連システム全体の中で、一番長い6か月間あり、NY本部には授乳のための部屋もありました。産休をとるにあたり、自分の担当していた仕事が中断することのないように、代替要員を配備する制度も整っており、「心配せずに産休をとっておいで」「待ってるよ」と後押しして頂けたことがとてもありがたかったです。

 

子どもの権利条約批准から30周年の節目を記念したイベントを実施した国連本部の総会議場で。

 

⑦VoYJについて現在どのような思いをお持ちでしょうか?

大学時代のモヤモヤした時期に自分を救ってくれたのは実はオンラインで繋がった仲間たちでした。mixi,blogなど、直接会ったことはないけど繋がっている友人たちの言葉に支えられたこともありました。オンラインだからこそ話せること、オープンになれることもあると思うんです。私は日常で触れあう友達に馴染めなかった分、オンラインで自分の書いた文章に関わってくれる人々の大切さを感じました。

ユース時代には、思うようにいかないこと、どこにぶつけたらいいかわからない思い、社会的に提起したいと思っているけど周りに同意見の仲間がいないという事があると思います。そういうときに「私の意見を聞いてもらえる場所がある」「私の意見って大事なんだ」と自己肯定できる場所は大切で、人とつながったり居場所になるユースプラットフォームの力ってすごく大きいなと、自分自身のユース時代を振り返って思います。今後もより多くの人にとってVoYJがそういう場であって欲しいと思います。

 

⑧今後正木さんが叶えていきたい夢があれば教えていただきたいです。

この質問が一番難しいですね。「世界中の子どもが、生まれた場所に関係なく自分の夢を追いかけられる世界を作りたい」という自分がずっとやりたいと思ってきたことを幸いにも今仕事にすることができています。今後もライフワークとしてやっていきたいなと思っています。今まで先進国のオフィスでの勤務が中心だったので、今後はもっと子どもたちと近い場所で、彼らのために働きたいと思っています。

プライベートでは、自分の子どもや、今の若い世代の人たちが大人になったときに、今日の社会が抱えている負の遺産を引き継がなくて良いように、今よりよい生活をしてもらえるような社会にしたいと思っています。例えば貧困問題や、子どもの虐待、移民問題。これらに個人としても何らかの形で関わりたいと考えています。

実は昨年に報告されたreport card 16(ユニセフ報告書「レポートカード16」 日本語版が完成しました (unicef.or.jp))では、日本の子どもたちの「精神的な幸福度」が38カ国中37位という結果になっています。今幸せだなと思える子どもたちが日本でも世界でも増えたらいいなと思います。

 

⑨最後に、これを読んでいるユースへのメッセージをお願いします。

自分のユース時代の原動力は、『青春対話』という書籍の中にありました。「青春に、取り返しのつかないことなど絶対にない。むしろ、青春の失敗とは、失敗を恐れて挑戦しないことです。また、自分で自分をあきらめてしまうことです。」という言葉が励みになりました。

最初からできないと思うことも、何事も始めてみたら意外とできるということがあると思います。ジョギングでも重い腰を上げて走り始めたら意外と走れたみたいなことありますよね。自分がやりたいことに対してできないと思う前に、楽しそうとか、これだったらやれるかな、ということをとりあえずやってみる、小さい挑戦のステップののちに気がついたら自分がやりたいところまでたどりついていたということがあると思います。

私も普通の高校生だったところから、社会科の先生と出会って、本を読んで、実際NGOに連絡とってみて、とひとつずつは小さなステップを踏んできて、気がついたら本当にやりたいことをできる場所を見つけられたということがあるので、小さくてもいいから挑戦を積み重ねていってほしいなと思います。

 

 

VoYJメンバーの感想

正木さんのユース時代のお話に励まされました。私は、やりたいことがわからず途方に暮れてしまいそうになることもありますが、正木さんのように好奇心と行動力を武器に、多くのことに挑戦したいです。また、私の夢は「すべての子どもたちが、生まれた場所やその他の制約にとらわれずに、可能性を広げられる世界をつくること」ですが、正木さんも同じ思いを持っていらしたと知り、ますますモチベーションが高まりました。

 

最後の原動力についてのお話が最も印象的でした。どうしても最初の一歩が重たくなってしまうことが多いので、まずはActionに移してみる、そこからどこまで自分ができるか、という点を私自身も大切にしていきたいです。また、日頃のVoYJのミーティングなどでは聞けない、正木さんのVoYJへの「思い」も伺うことができて、ユースが繋がれる場の構築へさらに広報部として尽力してきたい、と改めて決心しました。

普段のVoYJではなかなか聞けない様々な深いお話を伺うことができ、現在進路を考える時期にある私自身にとってもとても有意義な時間となりました。

 

寺尾

ひとつひとつのステップの積み重ねで今があるというお話が印象的でした。私はもともとフットワークが軽い方で、1ステップを割と簡単に踏み出せるタイプだったのですが、パンデミックが始まってから低モチベーションが続いていてその1ステップを踏み出せないことも多くなっていました。今回のお話を聞いて、今までの自分を信じてまた頑張ろうという気持ちになりました。ありがとうございました。

 

いかがでしたか?

2回にわたり、ユース時代のことから現在のお仕事のこと、そしてこれからの夢や目標まで、幅広くお話しいただいたことをお届けしました。進路に悩んでいるユースのみなさんから働き方について考えている社会人の方まで、多くの方に参考になるお話を伺えたかと思います。

正木さん、今回は本当にありがとうございました!


 

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