UNFPAケニア事務所 新井さつきさんトークセッション【第2弾】

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こんにちは、VoYJ事務局です。

今回は、2021年11月21日(日)の東京大学駒場祭にて国連人口基金(UNFPA)ケニア事務所の新井さつきさんをお招きして開催したトークセッションの内容を記事にしてお送りします。

日本政府のJPO制度(※)を通じてケニアに派遣されている新井さつきさんは、2020年からUNFPAケニア事務所でジェンダー専門官として勤務されています。
※JPO(ジュニアプロフェッショナルオフィサー)派遣制度
各国政府の費用負担を条件に国際機関が若手人材を受け入れる制度で、外務省は本制度を通じて、35歳以下の若手の日本人に対し、原則2年間国際機関で勤務経験を積む機会を提供している。

今回の第2弾では、仕事に対する考え方や新井さんのユース時代、ユースにできる国際協力についてお伺いします。
第一弾はこちらからお読みいただけます。

それでは、セッションの模様をお楽しみください。
当日の動画アーカイブはこちら

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さとこ:高齢者、障害者などの弱い立場に置かれている人々を守るために、自分の考える正義をどこまで介入させるべきか、お考えをお聞かせください。

新井さん:自分がいつも意識していることは、自分が思ったことをなるべくチームのメンバーや関係者に伝えることです。意見に「正しい」「間違い」という基準は存在しませんし「伝えないと伝わらない」ので、自分の意見が賛同を得られなくとも伝えることは重要です。特に、私はチーム内では若手の部類に入るため、チームへの共有は積極的に行うようにしていて、もしチーム内で賛同が得られればチームリーダーがそれを形にしていくこともあります。
例えば、高齢者に対する視点はケニアの方々はあまり持っていません。人口の75%を35歳以下の若者が占め、若者がフォーカスされている中、高齢者をいかに巻き込んでいくかという視点は持ちにくいのです。高齢者に対する意識は、日本人であれば馴染みのある視点で、日本人だからこそ持てる視点とも言えるので、積極的に共有するようにしています。
また、障害者を巻き込むための方法として、UNFPAケニア事務所が行っている「Sports for protection」という活動を紹介します。スポーツを楽しむだけでなく、それを通して自信を取り戻したり、チームスポーツによって社会性を身につけることを通して、ジェンダーに基づく暴力を減らし、女性のエンパワーメントに繋げています。
先日、その活動を行っているカクマ難民キャンプに行った際に、さまざまな障害を持った人々にも参加してもらうことを提案したところ、関係者から「ちょうどその点が問題だと思っていたんだ」と様々な意見が出て、議論を発展させることが出来ました。
このように自分の意識や考えを積極的に共有することで、更なる活動のきっかけになることもあります。なかなか自分の意見を言うのは難しいですが、新たな視点やケニア現地の方には無い視点が生まれることもあるので、意識して積極的に発言しています。

わかな:ありがとうございます。
自分の意見をしっかり言うこと、チーム内で共有していくことが、新たな視点の創出と多様なアプローチを可能にするのだと思いました。また、スポーツのお話は、私たちUNiTeは文化・芸術を重視しているというところで共通点があると感じました。
新井さんは、外務省のJPO派遣制度を通じてUNFPAで働かれることになったそうですが、応募するに至った経緯、学生時代の興味分野、活動内容をお伺いしたいです。

新井さん:私は、学生時代から国際協力に興味を持っていました。大学時代はゼミに所属して東南アジアの国々をいくつか訪れて、日本、世界銀行、国連開発計画(UNDP)のプロジェクトを見学したことがきっかけとなり、国際協力分野の仕事を目指すようになりました。日本の大学卒業後にはイギリスの大学院に進学し、その後は国連食糧農業機関(FAO)と国際農業開発基金(IFAD)でインターンを経て、パキスタンの日本大使館での仕事に就きました。
実は、それまでは国際開発協力の中で何をしていくのか、ということは自分の中で定まっていなかったんです。「国際開発協力」や「国連」と一括りにされがちですが、その活動は教育、ジェンダー、保健・医療、食糧、農業、水衛生、紛争予防、平和構築、環境など多岐に渡っており、さらに例えば「子どもの教育」「子どもに対する暴力の予防」などより細かい分野に分かれていきます。また、バックオフィスとして会計や総務、監査、購買などもあります。まずは、自分なりの国際協力支援のあり方を見極めることが課題でしたが、パキスタンに行ったことで、ジェンダーの問題、特にジェンダーに基づく暴力(GBV) に強い関心を抱き、その後、3年ほど日本のNGOでケニアのGBVの予防と対応に関する活動に従事しました。
国連については、学生時代から興味はあったのですが、国連で「こういうキャリアを築きたい」という強い意志は実はあまりありませんでした。ただ、日本には若手を国連に送り出すためのJPO派遣制度がありました。そこで、学生時代からの関心と、「大きな組織で自分の力を試したい」という想い、「国連はどういった活動をしているのか」という興味から、チャンスがあるならそれを掴みたいと思って応募しました。

れい:ありがとうございます。
新井さんの熱意の伝わる、学生時代からの濃いお話を聴くことができて感銘を受けました。国際協力に関心のあるユースの方々には、ぜひVoYJで行っているおうち会議などの企画に参加していただきたいと思います。前回は、先ほどお話に出たスポーツを通した支援に関するお話などをUNICEFの方からお聴きしたり、ディスカッションをしたりしました。
ユースが国連に関わる手段として、FacebookなどのSNSはもちろん、国連機関でのインターンというのがひとつあるかと思います。ケニア事務所でもインターン制度があると思いますが、インターンとしてどのような経験が積めるのか詳細に教えていただきたいです。

新井さん:現在はUNFPAケニア事務所にはインターンはいないのですが、毎年3ヶ月ほど、レバノンの大学の学生が来てインターンシップに参加しています。インターンは国連の仕事について知る一つの入り口ですし、私自身大学院を卒業した後に国連でインターンを経験しました。給与などの手当はほとんどもらえませんでしたが、若いうちに給与以上に意義のある経験をさせていただけたことは非常に重要なことだと思いました。国連はたくさんの機関があるので、それぞれの機関、部署によって業務内容はさまざまです。UNFPAは性と生殖に関する健康とジェンダー、人口問題も扱っています。
ユースの皆さんには、自分から積極的に国連にアプローチすることをお勧めします。公式に広報されている国連のインターンは東京にある事務所などたくさんありますが、現地で国連のインターンをしたい場合は、自分から知り合いのネットワークをどんどん作っていってアプローチしていくことが必要だと思います。
私は、国連のローマに本部のある国連食糧農業機関(FAO)と国際農業開発基金(IFAD)でインターンをしましたが、知人を通して自分の履歴書を送り、自ら「こういう経験を積みたいのですが、インターンを募集していませんか」と問い合わせました。ケニア事務所でも、インターン希望のメールや手紙が来ると、代表がリクエストを通すこともあります。積極的にネットワークを広げていって自分のやりたい支援、経験をしっかりと主張していくことが大事です。それによってインターンの仕事内容も変わっていきます。明確にやりたいことがあれば、積極的に伝えることで、さまざまな経験を掴むことにつながることもあるのです

みずゆう:私も10月末まで新井さんがお勤めになっている国連人口基金(UNFPA)の駐日事務所でインターンをしていました。新井さんの第一歩がFAOのローマ本部だったという勇気と行動力の高さに驚きました。
駐日事務所でのインターンのお話をさせていただきますと、新井さんが仰ったように自分から機会を作ることはできると思います。UNFPA駐日事務所に限らず、日本の国連機関の事務所では公式のインターン募集はだいたい半年に1回あります。さらに、駐日事務所長が公開イベントの際に「インターンを募集しているので応募してください」と言うこともあります。また、私の時は「大学4年生から」という条件がありましたが、実は3年生の3月に応募しました。「ほとんど4年生だからもしかしたら許可されるかもしれない」とダメ元で応募を出したら、開始時には4年生になっているから、ということで受け入れてくださいました。積極的にトライして、ネットワークを広げることが大切だと思いました。駐日事務所で一番お世話になった方に、今回のような企画に繋げていただきましたし、UNFPAのインドネシア事務所のJPOの方ともお会いしたのですが、その後個人的に別事務所のインターン募集のお知らせをくださいました。
インターンをやってみて新たにネットワークが広がって、皆さんとても温かくしてくださいます。勇気をもって一歩を踏み出すことで世界が広がることを実感しました。駐日事務所も次回は8月頃に募集が出るようですので、皆さんトライしてみてください。

新井さん:水島さん(みずゆう)のお話を聞いて、ネットワークの大切さをお伝えしたいと思いました。インターンをすることで他の事務所の方ともSNSなどで繋がり、若い頃からネットワークを広げるということは本当に重要です。
国連や国際協力の世界ではネットワークが全てと言っても過言ではなく、人員募集の情報収集や共有は非常に大切です。自分が大人しく真面目に仕事をしていれば仕事が降ってくるわけではなく、積極的に自らネットワークを広げていかなくてはなりません。積極的に関わりを広げていった結果、数年先のことに繋がっていくこともあります。
例えば、私もNGO勤務時代のインターンの方と今でもSNSで繋がっています。私ができることは少ないのですが、JPOに応募する書類についてアドバイスをしたり、UNFPAやインターンの活動内容や、よりその方の興味分野に近い知り合いを紹介したりすることもあります。私はそういうことを積極的にやる方には、自分のできること、知っていること、ネットワークを喜んで共有しますし、国際協力の仕事をしている方の中には、私と同じような考えの人がとても多いと思います。誰か困っている人を助けたい、そのために活動したいと思っている方がほとんどだからです。ですから若い人たちにとって積極性はとても重要だと思います。

さとこ:今、YouTubeのチャットから質問がきました。
国連機関にインターンをするには語学力はどのくらい必要でしょうか、という質問です。
新井さん:もちろん基本的な、「読み書き聴く英語力」はとても大事です。私自身生まれも育ちも日本で、英語力は全くありませんでした。大学院はイギリスでしたが、IELTSやTOEFLなどをパスする能力と実際に話せる能力は全く異なりますし、今でも時折、語学の壁を感じます。働き始めた当初はなかなか英語がうまく使えないということも多々ありました。でも、英語に自信がなくても仕事をしているうちにどんどん伸びていきます。初めは駐日事務所でのインターンなどから始めて、その後積極的に外に出るのも良いのでは無いでしょうか

みずゆう:私が駐日事務所でインターンをしたときは、基本的に事務所内は日本語で話し、英語は外部とのメールや書類作成の際に使っていました。こういう経験は初めてだったので、最初は「メール 件名 ビジネス英語」で検索して調べるなど、そのレベルからのスタートでした。

さとこ:ぜひみなさん、参考にしてください。
テーマの「ユースにもできる国際協力」という話をしたいと思います。ユースの活動ということで、私たちの活動「ボイス・オブ・ユース JAPAN(VoYJ)」をご紹介いたします。ユースの思いを発信するために記事を募ったり、個人の活動などもシェアをしたりしています。こういう活動のインパクトは、現場で経験を積まれた新井さんから見て、どう思われますか?また、改善点などがございましたらぜひお教えください。

新井さん:私も今回ご一緒させていただくということで、UNiTeやVoYJの活動を拝見させていただきました。本当に素晴らしい活動だと思いました。ユースは一番パワフルな世代で、ユースだからこそできることはたくさんあります。自分たちの意見を発信し、さらにイベントを企画していくことは素晴らしいと思っています。
実はUNFPAケニアでも同じような活動をしています。昨年ケニア政府、そしてユースとともに立ち上げた、35歳以下の若者が中心となってケニアの問題を解決するというイニシアティブで、「KENYA NI MIMIと言います。5つのテーマに分かれていて、1つ目は機会へのアクセス、2つ目はイノベーション&リーダーシップ、3つ目が健康と福祉、4つ目が平和、5つ目が環境保護です。それぞれのテーマに沿って若者が中心となって革新的な解決策を見つけていきます。「KENYA NI MIMI」は「私の国はケニア」「ケニアは私の国」という意味なのですが、このイニシアティブの素晴らしいところは、ユースが主役となって自分たちで解決していく、ユースが政府を巻き込んで活動をすることです。
大きなビジョンにはなりますが、「誰かに」届けるということだけではなく、「誰に」自分たちの声を届けるかというのは大事な要素だと思います。VoYJの活動も、自分たちの声を若者の間だけで共有するのではなくて、もっと異なる世代や、国を動かす議員や政府関係者に活動を知ってもらい、ユースがどんな問題意識を持っているのか、ユースはそのために何ができるのかを伝えていくことで、積極的に国を動かす人々を巻き込んでいくのも良いのではないかと思いました。
日本においては、政府関係者などにはなかなか届きづらいこともあるかもしれませんが、少子高齢化が進む中、若者の声は非常に重要だと思います。一番パワフルな世代だからこそできることを、具体的な行動に落とし込み、3〜5年といった長いスパンでどんなことを達成し実現したいのか、深く考えて活動するともっと有意義な活動になるんじゃないかと思います。

サクラコ:国際的な仕事を視野に入れているユースは多いと思うのですけれど、学生のうちから、特に日頃から心がけておくべきことをお教えいただけたらと思います。

新井さん:私自身、学生時代何か積極的にやっていたわけではないのですが、「やっておけばよかった」という反省点を含めてお話します。
大切なのは「世界で何が起きているか」をしっかり見ることです。グローバル化が進み、小さな出来事が世界中に拡散する世の中で、世界のごく一部で起こっていることが日本でも起こるかもしれないし、日本に影響を及ぼすかもしれないのです。国際協力や国際的な活動に興味がなくても、世界で何が起こっているかしっかりと見極めていくことはとても重要だと思います。様々な情報を手に入れるという意味で、英語力を高め、英語圏などの新聞にも目を通しておくのが良いでしょう。
私が自分の経験に基づいてお話しすると、なるべく早く自分のしたいことを決めることが大切で。私は早い段階で国際開発協力の道に進むと決め、学生時代からそれに向かってキャリアを積んできました。「自分が何をしたいのか」「そのためにどんなことが必要なのか」自分で調べて「1年後、3年後にはこれをできるようにしよう」とざっくりと決めると良いと思います。目標やそのための活動を調べる時にどうすれば良いか分からなければ、ネットワークを使って、いろいろな方にキャリア形成の経緯を聞くと良いと思います。積極性は、何も知らない学生だからこそ強みであり、武器になります。
また、私は性と生殖に関する健康と権利に関わる組織であるUNFPAで、女性が「誰といつ、何人子どもを産むか(産まないか)」を、女性の意思で決められるように活動しています。今この場にいるUNiTeの方々はみな女性ですが、いつ結婚し、いつ子どもを産むのかなど、まだ学生ですからなかなか実感が湧かないかと思います。でも、この点もしっかり考えておいた方が良いと思います。
私は30代に入って結婚をしましたが、20代後半になると焦ってくるものです。キャリアだけでなくプライベートも含めた自分の将来設計、子どもをいつ産むのか(産まないのか)などもバランスを見ながらキャリアを築いていくことが大切だと思います。妊娠・結婚などものすごくセンシティブな問題で、思い通りにならないこともたくさんあります。「いつ・何人子どもを持つのか、そもそも子どもを持つのか、そもそも結婚するのか」を考える中で、自分がプライベートライフで何をしたいのか、ワークライフバランスの部分も非常に重要になっていきます。キャリアを築いていらっしゃる方々に色々と聞いてみるのも良いかもしれません。

サクラコ:すごく具体的に、たくさんアドバイスをいただいてありがとうございます!世界で何が起きているかに目を向けていくことも大切ですし、自分の将来の世界地図、マップを作っていくということがすごく大事なのだなと思いました。グローバルなところに目を向けながら、自分の周りの人達も大切にして、そこからどんどんネットワークを広げて、「自分がどういうことをしたいのか」「世界がどうなっていったらいいのだろう」と考えながら、積極性を持って自分で決めて作っていこうと感じました。それからUNiTeの男女比は本来1:1くらいなのですけれど、今日はたまたまここにいるのが全員女性で(笑)


今回は、新井さんのユース時代や、国連インターンを含む「ユースが出来る国際協力」について素敵なお話をお聞かせいただきました。

最終回となる第3弾では、仕事をする中でのメンタルコントロールや、新井さんご自身の将来の展望についてお話を伺います。お楽しみに!

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