自分らしく生きられる社会を目指して

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みなさんは、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)という言葉を聞いたことがありますか?

ダイバーシティ&インクルージョンは、「多様性をお互いに受け入れ、認めあい、活かす」という考え方です。ここで取り上げるダイバーシティとは、性別、人種、国籍、宗教、文化、年齢、障害の有無、LGBTQ+などの多様性です。

私たちが持っている属性は一人一人違います。また、個人の属性や所属する集団は、様々なきっかけで変わります。つまり、私たちは誰しも、置かれた環境によっては、マイノリティ性を持つ可能性があり、それによって不利益を被ったり、排除されたり、攻撃を受けたりすることがあります。私はその理由が「障害」であると考えています。ここで言う障害とは、人の属性によるものではなく、「社会に存在する障害」であり、「社会的障壁」とも表現されます。
「社会的障壁」という言葉は、内閣府の障害者白書によると、2006年に国連総会で採択された「障害者の権利に関する条約」の内容を基に、2011年に改正された障害者基本法第4条にも記載されたものです。それによって、障害の捉え方は、個人の属性により生じている「個人モデル」という考え方ではなく、周りの環境などの社会全体にあるとされる「社会モデル」に変わってきています。「社会モデル」は「障害」がマジョリティの都合に合わせた設備や制度、文化や慣習、差別や偏見といった無理解などの「社会的障壁」によって生じていると考え、その障害を解消するためには社会全体で取り組まなければならないという捉え方です。
つまり、目に見える部分だけではなく、私たちの考え方なども「社会的障壁」になり得るということです。みなさんは、無意識のうちに決めつけてしまっていること、普通だと思ってしまっていることはありませんか?相手に自分の中の普通を押し付けたり、属性を決めつけたり、勝手にラベリングをしたり…


自分の中の普通を問い直し、無関心にならず、全ての人が自分事として考えて行動することで、多くの人が暮らしやすい社会になるのではないでしょうか。

ここからは少し個人的な話になります。私は岩手県で生まれ育ち、今も暮らしています。そして、私はノンバイナリーというマイノリティ性を持っています。岩手県に住んでいて強く感じるのは、都市部と比較し、情報格差が大きく、選択肢も少ないなど、「社会的障壁」が多くあることです。私が自身の性別に悩んだ時、その相談先をなかなか見つけることが出来ませんでした。勇気を振り絞ってカウンセラーに相談しても否定され、むしろ苦しむことになりました。生きづらさを抱えていても、相談先にアクセスする手段が無ければ、安心して過ごすことが出来る居場所も、そして多様性について正しい知識を得る機会もありませんでした。

内閣府の「令和3年度子供・若者白書※1」によれば、居場所と感じられる場所の数と自己肯定感、将来の希望など、前向きな自己認識には相関があると明らかにされています。 つまり、様々な要因による居場所の少なさが、その人の生きづらさに繋がっている可能性が高いということです。 特に地方においては、

・地方独特の雰囲気がある(近所との結びつきが強く、何かがあればすぐ噂になったりする)
・相談できる場所が少ない
・地理的な影響で、移動できる範囲が限られるため、居場所にアクセスできない(交通手段、金銭的な問題等)、そもそも居場所がない
・選択肢が少ない(進学、就職先等)

ど、様々な情報や人に触れる機会が少ないのが現状です。それ故に、居場所と感じられる場所は都市部に住む人と比較して、多くないと推測されます。また、厚生労働省自殺対策推進室による「令和2年中における自殺の状況※2」自殺率を見ると、都市部よりも地方で高くなっていることが確認できます。これらのことから、 地方においてはアクセスしやすい居場所づくりや、様々な情報に触れる機会を増やすことが必要だと考えています。

私は地方の現状を変えたいと思い、東京へ予定していた就職を生まれ育った岩手に変更し、働きながらいわてレインボーマーチという団体でも活動しています。その活動では、「全ての人が多様な人生を選択・実現可能にし、自分らしく生きる人を増やす」ことを目的としています。岩手県だけではなく、地方には多様性を受け入れられにくい特有の雰囲気や、課題が多くあると感じています。

その「社会的障壁」を取り除く活動の一つとして、現在、多様性について知る・学ぶ・考えるきっかけとなる本を制作し、全国の学校や図書館に届けるプロジェクトを行っています。

本プロジェクトには、留学を経験したユース、プライドハウス東京の有志チーム(Proud Futures、サウザンブックスPRIDE叢書、一般社団法人S.C.P.Japan)、脚本家・ライターのエスムラルダ様、漫画家・作家として活躍されている野原くろ様、また、プライドハウス東京を2019年から後援する駐日英国大使館からも、サポートをいただくことが決定しております。この本を制作するにあたり、ダイバーシティ分野のオピニオンリーダーとして活躍されている乙武洋匡様をお招きし、お話を伺わせていただく機会もありました。

プロジェクトメンバー一同、このプロジェクトが、生きづらさを抱えている様々な人への大きなアクションになることを信じています。

◎プロジェクト詳細
【「ユース発!リアルなコミック・エッセイを全国に届けたい!」】
プロジェクトページ:https://greenfunding.jp/thousandsofbooks/projects/5511

【プロジェクト公式SNS】
Instagram:https://www.instagram.com/tobitateyouthpride/
Twitter:https://twitter.com/tobitatepride

【本の出版に関するオンラインイベントアーカイブ】
ゲスト:乙武洋匡様、エスムラルダ様
https://www.youtube.com/watch?v=iFNh25MAbH0


※1「令和3年度子供・若者白書」 内閣府
https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/r03gaiyou/pdf/r03gaiyou.pdf 

※2「令和2年中における自殺の状況」厚生労働省自殺対策推進室https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/R03/R02_jisatuno_joukyou.pdf

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