サラヤ株式会社 代島裕世取締役【前編】

サラヤ株式会社 代島裕世取締役
インタビュー
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こんにちは。ライターの横山です。

私は、2019年の2月から3月にかけて、フィリピン・セブ島での公衆衛生のボランティア活動に参加してきました。活動を行う中で、手洗い教室を行うことになり、手洗いについて色々調べていたところ、ユニセフの世界手洗い、手洗い石けんで知られるサラヤ株式会社(以後、サラヤ)という日本企業の、ウガンダ支援のための「100万人の手洗いプロジェクト」に出会いました。今回は「100万人の手洗いプロジェクト」の立ち上げに関わって来られたサラヤ取締役の代島裕世さまにお話を伺うことができました。

ユニセフ・ウガンダ事務所出典をもとにしたサラヤのニュースリリースによると、ウガンダの5歳未満児死亡率は1000人あたり55人で、その原因となる主な病気は正しい手洗いで予防できること、そして、手洗い普及率は2007年の14%から、2018年には36.5%まで向上したそうです。

インタビュー前編は、「100万人の手洗いプロジェクト」を始めたきっかけやプロジェクトの内容についてお伝えします。

 

– 「100万人の手洗いプロジェクト」を始めたきっかけは何ですか?また、ユニセフとの取り組みを始めたきっかけは何ですか?

2009年に日本ユニセフ協会と仕事をするようになりました。2009年といえば、皆さんが小さなころだと思いますが、新型インフルエンザが流行したことを覚えていますか?

(横山:はい、中学生の頃でした。学校に行けなくなったのを覚えています。)

その年の4月にWHO(世界保健機関)が世界パンデミックを宣言しました。後に致死率は低いことがわかったものの、当初は致命的とも言われた新型のウイルスが世界で同時流行していたというのは人類初のことでした。その時、これはサラヤが役に立てる時だと思いました。

90年代から院内感染という言葉が話題になってきて、医療従事者の中ではアルコール消毒をするのが当たり前になっていたのですが、ウイルスにきくアルコール消毒を公共のスペースや学校で実施することは、この時を境に行われるようになりました。

前年の2008年、10月15日が「世界手洗いの日」に制定されました。そして、2009年という新型インフルエンザが大流行した年に、日本ユニセフ協会が「世界手洗いの日プロジェクト」を開始し、石鹸を使った正しい手洗いとアルコール消毒のキャンペーンをやろうということになり、手洗いが本業のサラヤや衛生に関わる複数の企業が一斉にサポートしたのです。これが日本ユニセフ協会とサラヤが一緒に何かをやる最初のきっかけとなりました。

その後、「手を洗うことで戦後日本を復興しよう」と1952年に創業したサラヤの本業中の本業である手洗いの事業で、日本ユニセフ協会と共にオリジナルのプロジェクトを行いたいと提案し、ウガンダの子どもたちの命と健康を守る「100万人の手洗いプロジェクト」につながりました。

– サラヤさんは、どのようにウガンダにおける手洗い普及活動に関わっているのですか?

実は、ウガンダで石鹸を使った手洗いのキャンペーンは私たちが最初に始めたのではなく、2010年にサラヤが支援を始めた時点で、ウガンダでは、National Handwashing Initiative(ウガンダ全国手洗いイニシアチブ)というウガンダ政府主導型を目指した取り組みがすでに始まっていました。

ウガンダ全国手洗いイニシアチブの啓発ポスター
©Uganda National Hand Washing Secretariat

これは、ウガンダ政府が官民のさまざまなパートナーシップをもとに、手洗いを全国的に広めようとつくった枠組みで、保健省や水と環境省の政策のもと、国をあげて主流化に取り組んでいる事業ですが、当初は財政面など、様々な課題がありました。そのイニシアチブに、サラヤがパートナーとして加わったという形です。

事業において、サラヤ製品が直接使われているわけではありませんが、「100万人の手洗いプロジェクト」による寄付は、ユニセフを通して、現地での手洗い普及、促進活動を支えています。そして、ユニセフ・ウガンダ事務所からの支援報告や現地視察を通じて、その状況を把握しています。

コミュニティ・ハンドウォッシング・アンバサダーのボランティアたち
 ©日本ユニセフ協会

 

現地を訪れた、サラヤ株式会社の更家悠介代表取締役
©日本ユニセフ協会

 

コミュニティ・ハンドウォッシング・アンバサダーのボランティアの人々
©日本ユニセフ協会

私が行った現地視察では、コミュニティの人々に手洗いを啓発する役割を担った、コミュニティ・ハンドウォッシング・アンバサダーのボランティアが、赤いベストを着用して訪問する様子を見ました。また、ティッピー・タップという簡易な手洗いの装置の普及を、数値的な目標を掲げて促進している人々もいますし、ラジオプロモーションなどのかなり大きなキャンペーンも行なっています。

簡易な手洗い装置、ティッピー・タップを使って手洗いをするウガンダの子どもたち
©日本ユニセフ協会

「100万人の手洗いプロジェクト」は、対象商品の売り上げ (メーカー出荷額) の1%をユニセフに寄付していることと併せて、ウガンダの状況を日本のみなさんに伝えてコーズ・リレーテッド・マーケティング(商品の購入が社会貢献に繋がることを知らせることで消費者の購買意欲に訴えかけるキャンペーンのこと)をおこなっています。日本の消費者と現地をつなぐ役目が「100万人の手洗いプロジェクト」なんです。

後編では、このプロジェクトの影響や、企業が社会課題に取り組むことについてお伝えします。お楽しみに!


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