ユスラ・マルディニ選手【後編】〜世界難民ウィーク特別インタビュー〜

2020年東京オリンピックに向けてトレーニング中のユスラさん。(2019年3月、ドイツ)
インタビュー
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みなさん、シリア出身の競泳選手、ユスラ・マルディニさんをご存知ですか?

2015年の、あの感動的なニュースとともにその名前を記憶している方もいらっしゃるでしょう。

 

2015年夏、紛争を逃れてギリシャへ向かう人々を乗せた小型ボートが、故障し、沈没しかけました。そのとき姉たちとともに海に飛び込み、三時間半ボートを押して泳ぎ続け、20名の命を救った17歳の競泳選手がいました。シリア出身の競泳選手、ユスラ・マルディニさんです。

 

ユスラさんは競泳選手として、史上初の難民選手団の一員としてリオ五輪に出場し、次回の東京オリンピックに向けてトレーニングされています。また、2017年4月からは最年少のUNHCR親善大使に任命され、現在も世界の難民を助けるために活動されています。

 

今回はYouth×UNHCR for Refugeesプロジェクトの一環として、「VoYJこの日なんの日特別企画 世界難民ウィーク」にむけ、ユスラさんにインタビューさせていただくことができました!

 

VoYJではその様子を前編後編の2回に分けてお伝えしていきます。

 

後編となる今回は、UNHCR親善大使としての活動についてや、現在のCOVID-19影響下でのご生活、今後のビジョンなどを伺い、最後に若者へのメッセージを頂きました。

前編についてはこちらをご覧ください→https://voiceofyouth.jp/archives/2806

ザアタリ難民キャンプにて、UNHCR支援コミュニティセンターを訪問。(2019年9月、ヨルダン)

 

UNHCR親善大使としてのご活動

 

 難民の若者を勇気づける活動について、もっと教えてください。

          Can you tell us about your current activities to empower young refugees?

 

 

私はインスタグラムを使って、難民やUNHCRの活動についての情報を共有し、他の人たちに知ってもらおうとしています。私は今、自分の声で他の人を助けることができ、UNHCRの親善大使になる機会を得られたことにとても感謝しています。UNHCRは私と同じような人々を助けるために常に活動しています。そんな活動の中でシチリアで出会った難民の話は私を奮い立たせてくれますし、一人で地中海横断をした12歳の女の子にも会いました。一口に難民と言っても、物語や経験は全く別のものです。私は7000万の物語のうちの一つに過ぎません。

たまたま難民になったからといって、みんな同じではないということを知ってもらいたい。私は、UNHCRと一緒に旅を続け、問題意識を広めていきたいと思っています。そして、若い難民の方々が私のことや私の物語を知り、希望を見出してくれたら嬉しいです。

 

I use my Instagram to try and share information about refugees and the work of UNHCR to educate others. I am so grateful that I can now use my voice to help others and for having the opportunity to be a goodwill ambassador for UNHCR. They are constantly working to help people just like me. I have met some amazing people through working with UNHCR, the stories of the refugees I met in Sicily inspire me, I met one 12-year-old girl who made the Mediterranean crossing alone. Although we are both refugees, our stories and experiences are so different. I am just one of 70 million stories.

I want people to know just because we happen to be refugees, we are not all the same. I would love to continue to travel with UNHCR and spread awareness, I hope other young refugees can look at me and my story and it can give them hope. 

 

 

これからの展望と夢

これからの展望や夢を教えてください。

        Please tell us your vision and dream for the future.

 

水泳を続け、願わくば東京オリンピックに出場すること、そして自分の立場を生かして難民の苦境について人々の意識を広め、伝えることを目指しています。私は、難民であるというのがどういうことなのかについての世界の人々の捉え方を変えたいと思っています。

 

To keep on swimming, to hopefully make it to the Olympics in Tokyo and to use my platform to spread awareness and educate people about the plight of refugees. I want to alter global perceptions of what it means to be a refugee.

 

シチリア島カターニアのプールでトレーニング中のユスラさん。(2018年4月、イタリア)

 

COVID-19下で

COVID-19のパンデミックの状況下で、ご自身のモチベーションを保ち、家での時間を有効活用するために、どんな工夫をされていますか?

      How do you keep your motivation up and make the most of staying at home due to the COVID-19 pandemic?

  

東京に着いたらできる限りのことをしようという決意をしているので、モチベーションが上がります。

少しやる気が出ないと感じた時は、今まで頑張ってきたことを思い出して、集中力を維持するように自分を奮い立たせています。

 

休み時間を有効に使って、家族との時間を大切にしています。

乗り越えてきたことを考えると、自分が今の状況にあることがどれほどありがたいことか気づかされます。

 

I am determined to do the best I possibly can when we get to Tokyo, that keeps me motivated.

If I feel a little unmotivated, I think about all the hard work I have done already and that encourages me to stay focused.

 

I am making the most of having some downtime and spending time with my family.

I think about what I’ve overcome and that reminds me of how lucky I am to be in the position I’m in. 

 

ユスラさんからのメッセージ

 

コロナの影響を受けているユースアスリートにメッセージをお願いします。

     Nowadays, a lot of youth athletes have many difficulties to play sports due to COVID-19. Can you give some messages to encourage such athletes?

  

自分が何を達成したいのか、何を目標にしているのかに集中し続ける必要があります。ロックダウンは様々なアスリートに様々な形で困難を与えていますが、自分の目標を心に留めて、家にいてもできる範囲で運動を続けてみてください。体を動かし続けることは、フィジカル面だけでなく、メンタル面でも大切なことです。

 

You have to remain focussed on what you want to achieve and what your goal is. Lockdown has been difficult for different athletes in different ways but try and keep your goal in mind and continue to exercise however you can, even just at home. It is important for your physical but also your mental health to keep your body working.

 

 最後に日本のユースにメッセージをお願いします。

        Finally, can you give us a message for the whole youth in Japan?

 

たとえ何か悪いことが起きても、そのことによってあなたという人間までもが決まってしまうことはありません。起こったことを受け止め、そこから学べば、あなたはすばらしいことを成し遂げることができるでしょう。

 

When something bad happens to you, you don’t have to let it define you, take what has happened and learn from it and you will be able to achieve great things.

ザアタリ難民キャンプにて、シリア難民ラマの家を訪れて。(2019年9月、ヨルダン)

 

いかがでしたか?

私は、ユスラさんの「悪いことが起こったとしても、それがあなたを決める訳ではない」というメッセージが心に残りました。たまたま難民になってしまったユスラさんの、難民に対する認識を変えようと活動されている姿に胸を打たれます。いただいた言葉ひとつひとつを大切に、これからを過ごしていきたいと思います。

 

快くインタビューを引き受けてくださったユスラさん、このインタビュー企画を実現させてくださったUNHCRの皆様、本当にありがとうございました!!

 

We would like to offer our special thanks to Ms. Yusra Mardini. 

We received generous support from UNHCR for this interview.

 

 


<参考>

https://www.yusra-mardini.com

 


 

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