VoYJ特別対談:UNICEF東京事務所ロベルト・ベネス代表

©UNICEF Tokyo/2023
インタビュー
+3

2023年9月27日、VoYJを代表して、メンバーの萩野、金澤、加藤、山本がUNICEF東京事務所を訪れ、ロベルト・ベネス代表との対談を行いました。メンバーからの率直な質問にも答えていただき、今後の活動へと新たな一歩を踏み出すことができました。

読者の皆さんの関心事とも重なる部分がきっとあるはずです!

VoYJの今までとこれから

ベネス:今日は、UNICEF東京事務所へようこそ。皆さんの活動について、こうして直接伺えることをとても嬉しく思います。

萩野:VoYJは2018年に立ち上げられたウェブプラットフォームで、日常生活の中で若者たちが感じていることや、自分の行っている活動をはじめ、幅広いユースの声を集めて、共有しています。他のSNSでは言いにくいことも安心して発信できる場作りや、声が大きくない人の声、声にならない声も大切にすることを理念に活動しています。

VoYJでは、日本全国から多様なユースが寄せてくれた記事を掲載することが主な活動で、昨年は音楽・映像に関する特集も組みました。VoYJには文章で思いを伝える形式のボイスだけでなく、音楽や絵などの形態で発信されるボイスもあります。

ベネス:オンライン・プラットフォームの運営に加えて、様々なイベントにも参加しているのですよね。

萩野:例えば、2020年の国連障害者権利条約締約国会議では、エクアドルの外務大臣を迎えて開催されたUNITAR等の多様性の包摂をめぐる若者の役割に関するサイドイベントに参加した他、SDG Global Festival of Actionで、バングラデシュやレバノンなど世界中で活躍するユースと交流しました。コロナ前には対面のイベントも行っており、VoYJに記事を投稿してくれた方々と直接会ってお話しする機会を持ったこともありました。

ベネス:素晴らしいですね。みなさんは若者を主体とするVoYJのような他のコミュニティにも参加しているのですか。

萩野:VoYJ事務局は、日頃からUNICEF支援に取り組む東京大学の学生たちによって創設されました。例えば私が参加している東京大学UNiTeでは誰もが協力し合える社会を目指すEMPOWER Project(https://empowerproject.jp/)も行っており、国連事務局やUNFPA等とも協力して活動をしています。

VoYJとUNICEFの協力をめぐるアイデア

ベネス:VoYJとして、今後UNICEFと一緒に取り組みたいことや、みなさんの問題意識について、是非聞かせていただけますか。

金澤:私は、難民問題に取り組みたいと考えています。難民や子どもたちの権利についてのディスカッションや記事がもっと増えればいいなと思うので、ぜひUNICEFの皆さんのお力を貸してほしいです。

山本:私は、VoYJのことを更に多くの人に知ってもらうことで、いろいろな若者と共にVoYJをより盛り上げていきたいです。

加藤:私は、障がい者問題に関心があります。2016年の相模原障害者施設殺傷事件では大きなショックを受け、差別について考えさせられました。また、障がいを持つ方が受けられる保健サービスが制限されていることにも問題意識を持っており、今ではそのような問題の解決に向けた取組みにも参加しています。VoYJを通して、様々なバックグランドを持つ若者とディスカッションやアクションを進めていきたいです。

ベネス:皆さん、素敵なアイデアをありがとうございます!VoYJをもっとたくさんの人に知ってもらうということに関しては、私たちUNICEFのつながりで皆さんと世界中の若者を結びつけ、他の若者たちの積極的な参加を募って、彼らがそれぞれのコミュニティで違いを生み出すことができるようにする手助けができると思います。また、政府や企業との結びつきも強められるかもしれません。たとえば、UNICEFでは「Generation Unlimited」を通じて、世界中の若者の学校教育から雇用への移行をサポートしています。ほかにも、Zoomなどで海外事務所と連絡をとって、様々なアイデアを交換することなども面白そうですね。

障がいや健康の問題は、UNICEFもこれまで重点的に取り組んできていますし、特定のテーマについて調べたり、取り組んだりしたいときなどに力になれると思います。若者をめぐる課題は、UNICEFにとって重要な優先事項です。若者たちは世界に真の変化をもたらす大きな可能性を秘めた存在ですから。

Q&A

金澤:現在、特に関心を寄せている若者に関する問題はなんですか?

ベネス:そうですね。私は、若者たちの声を意思決定に反映させることが大切だと信じています。特に、自治体などの地域レベルで、どのようにすれば若者の声をきちんと聞いていけるかは重要な課題です。また、若者のピアサポートにも関心がありますね。特にメンタルヘルスに関する困難や障がいを抱える若者が互いに支え合えるようにしていったり、歳を重ねた後を見据えて生きる力を養ったりすることはとても重要なことだと思います。

金澤:近年、ユースアドボカシーや意思決定に関してUNICEFが重点的に取り組んでいる活動には、どのようなものがありますか。

ベネス:例えば、CHILDREN’S PARLIAMENTSという活動があります。若者が各国の代表という設定で一堂に会して、議論したり、問題解決のための意思決定を行ってみたりするというものです。ある国を代表して議論に参加するので、単に自分のことだけを考えたり、自分の立場からだけ考えたりしていてはいけません。このような実践経験をすることで、若者がアドボカシーのスキルを高めることは大切なことだと思います。

他の例としては、「子どもにやさしいまち」が挙げられます。このイニシアチブでは、まちづくりに関して、若者の代表が、意思決定者と対話を行います。若者が何を必要としているかを一番よく知っているのは若者自身ですよね。若者の意向を市の活動に反映していくためには、このような対話は非常に重要です。

また、先ほど述べた「Generation Unlimited」も、若者たちのアドボカシーを実現するための大切なグローバルプラットフォームといえます。

山本:将来国際的な問題を解決したり世界を変えたりするために、20代前半で何を経験するのがよいと思われますか。

ベネス:まずは、自分のコミュニティの中で行動を起こしてみてほしいですね。その中で、できるだけ様々なスキルを身につけてください。大学の内外で多くのことを学び、世界にインパクトを与えるための力を身に付けることもできますよね。大学を出たら、是非、誰かのためになることを仕事にしてほしいですね。また、人生は一度きりであることを忘れないでください。常にゴールを見据えて、例えば30年後自分がどうなっていたいかを考え、そのために今何をするのかを逆算することが大事です。それと同時に、一日一日が機会に溢れていますから、計画を立て過ぎないことも大切です。人生を楽しむことも忘れないでください。

山本:「スキル」についてもう少し詳しく聞かせてください。スキルは、様々な人と出会う中で自然と身に付いていくものなのでしょうか。

ベネス:スキルには認知能力と人間力とも呼ばれる非認知能力の2種類があると思います。前者は英語や情報など、学校で教わることができる知識に基づくスキルですが、後者は学校だけでは教わることができません。例えば、人と交流して初めて学ぶことができる共感力や、ストレスや失敗に対応する力、リーダーシップなど、非認知能力をどんどん高めてほしいですね。

萩野:責任のあるお忙しいお仕事だと思いますが、仕事とプライベートの切り替えに関して、心がけていらっしゃることはありますか。

ベネス:家族との時間は家族のことに集中して、プライベートの時間を大事にするようにしています。たとえば、仕事から離れて自宅で過ごす際は、メールや携帯電話は見ないようにしていますね。散歩をしたり、ご近所の方々との会話を楽しんだり、しっかり睡眠をとることも心がけています。そうやって、心と体をちゃんと休めることを意識していますね。

加藤:私は、精神保健に関する学校教育に関心があるのですが、心の問題に関するトピックを学校で教えることについては、どのように思われますか。

ベネス:心の問題を学校で取り上げることはとても大事なことです。特に、ピアサポートを広め、互いに助け合える環境を作っていくことはとても重要です。また、自分にとっての「成功」とはどのような状態のことなのかを、自分で思い描けるようになることもとても大切です。あなた自身の成功を決めるのは、両親でも先生でも、社会の他の誰でもなく、あなた自身なのですから。成功は、あなたの夢、熱意、あなたの周りの世界に映し出されるあなた自身なのです。あなたが大切に育てていき、自分自身で実現させていくものです。

***
ベネス代表は、ひとりひとりの声に耳を傾け、真剣に、かつ時にユーモアを交えながら、インスピレーションに溢れたお話をしてくださいました。

貴重な機会をくださったUNICEF東京事務所の皆さま、ありがとうございました!


+3