スウェーデンを語る会【後編】

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こんにちは、VoYJ編集部です!
今回は「スウェーデンを語る会」と題して、北欧スウェーデンにおいて留学や研究旅行を経験した影山萩野佐々の3人が、その経験を言語や生活、学業など様々な視点から語ります!

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【中編】はこちらから!

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佐々
最後に、行く前と行った後のスウェーデンに対するイメージの変化について話しましょうか。

影山
いいね。ちょっと考えてみます。

佐々
僕は、日本人なら誰しもそうかもしれませんが、スウェーデンに限らず北欧諸国はいわば「楽園」みたいなイメージを抱いていました。それは、北欧諸国が特に福祉が充実していたり、ジェンダー平等があらゆる側面で進んでいたり、そういうことが頻繁にメディアで取り上げられてきたからではないかと思います。実際に現地に行ってみて、そのイメージが正しいな、と思う場面は確かにありました。例えば、僕が派遣先の大学で履修していた授業を担当してくださった先生はほとんどが女性でしたし、大学の男女学生構成をみてもむしろ女性の方が多いんですよね。政治界に限らず、アカデミアの世界においてもジェンダー平等が進んでいることを感じました。一方で、近年はスウェーデンにおいても治安の悪化が問題視されているという話をよく耳にしました。滞在中には「ストックホルムで銃撃事件がありました。警戒してください。」みたいなメールが外務省から届いたんです。より身近な話で言うと、僕の寮の目の前にスーパーマーケットがあったのですが、その入り口の前で雨の日も雪の日も座り込んでお金を乞うている方がいて、その姿がすごく印象に残っています。勝手に「福祉政策が充実しているスウェーデンでは誰もが幸せ」というイメージを抱いていたので、現地に実際に行ってみて、スウェーデンでさえもまだ社会から取りこぼされた人が多く存在しているということを改めて意識するようになりました。ストックホルムってこの辺どんな感じなんでしょう?

萩野
ストックホルムでも、お金を乞うホームレスの方の姿をたくさん見ました。地下鉄の駅のホームとか。すごく声をかけてくるんだけど、お金を持ってないよって示すとご機嫌ななめになって唾を吐いてくるような人もいたからそれは少し怖かったかも。

影山
そうなんだ。それはちょっと怖いね。。でも、ヨーロッパの他の都市と比較すればホームレスの方とかはやっぱり少ない方なのかもしれないよね。チェコとか行った時も、街はすごく綺麗だったけど、短期間の滞在なのに経済格差を強く感じました。

萩野
カナダとかアメリカに高校生のころ行ったときも、ホームレスの方は結構見かけたかも。

佐々
そうなんだ。萩野さんは、滞在前と後でスウェーデンに対するイメージの変化とかはありました?例えば、萩野さんが研究している文学作品の舞台について、作品内での描写と実際の街の姿の違いとか。

萩野
作品を日本語で読んだのが春休みで、そこから特に何もせずにスウェーデンに行ってみて、帰ってきてから英語で同じ作品を読んでいるところです。作品の中で舞台となるヨーテボリの街の描写が出てくると、「あ〜、あそこの道のことね」とか、そういう気づきを今まさに味わっています。作品の時代設定は1930年代後半から1940年代にかけてなんだけど、そこから現在になっても変わっていないところもたくさんあるってわかりました。でも主人公がウィーンから来ているから、たぶん楽友協会のコンサートホールなんかと比べてだと思うんだけど、「コンサートホールの建物が新しい!」って感想を言うところもあるのね。それは逆に、実際に今目にしてみると「歴史ある建物だなぁ」って私は感じた。スウェーデンの街への全体的なイメージでいうと、プラハとかウィーンとかと比較すると、旧市街ってよりはモダンな建物って印象はあるけど。あとは、本当に住みやすそうだなっていうイメージを抱きました。

ヨーテボリ中央駅から街の中心地へ。路面電車も走っています

佐々
僕の友人の知り合いの家族がヨーテボリ郊外に住んでいて、そのお家にお邪魔させていただいたんですけど、内観も外観も日本の一般的な団地とあんまり変わらない感じがしました。サイズもそれほど大きいわけではなかったです。

影山
え、そうなんだ。僕のスウェーデン人の友人の家は一人暮らしなのにかなり広くてびっくりした。天井も高くて。同じ家賃だとしても、東京の一人暮らしで住む家よりは遥かに広いと思う。

佐々
そうなんですね。僕が訪れたのは、子育て世帯用住宅だからかもしれませんね。日本のアパートと似てましたね。

萩野
私がヨーテボリで宿泊していたのも、集合住宅みたいなところだったな。Airbnbで間借りしたからホームステイみたいな感じだったんだけど、しっかり自分の部屋もあって、別の部屋にはもう一人泊まってる人もいたし、思っていたよりも広々していたよ。

佐々
いいですね。スウェーデンの住宅事情も掘り下げると面白そう。家賃とか生活費の話で言えば、スウェーデン人学生って学費が無料の上に、政府から毎月給付みたいなのを受け取ったりしているらしいですね。

影山
うん、そうそう。その制度は日本でもたまに取り上げられるよね。でも、そういう給付も実際は6000クローナ(8万円弱)くらいだから、それだけで暮らすには十分じゃないみたい。生活費として足りない分は、返済が必要な奨学金で補っている友達がほとんどかな。「スウェーデンでは学費が無料だし、さらに給付もたくさんもらっているから、奨学金とかもいらない」みたいなイメージを抱かれがちだけど、意外と現実はそうではないところもあるみたいだね。それに、スウェーデンの人は、借金に対する敷居が低い印象も受けました。利率もそんなに高くないからかな。あとは、固定資産税とか相続税がない/低いから、一旦借金をしてでも家を買って持ち続けた方が良いというのもあるらしいです。

佐々
全然知らなかったです。面白いですね、そういう社会文化の違いみたいな話。

影山
あと、スウェーデンに来てみて抱いたイメージと言えば、さっきの“Lagom”の話とも通ずるけど「ストックホルムの街ってちょうどいいな」って思う。サイズ的な意味でも。

萩野
ストックホルムは歩こうと思えば全然歩けちゃいますよね。

影山
そうそう。中心部はかなり都会だなって感じるところもあるけど、少し歩けば閑静な住宅街になったり。自然もあるし、文化施設が集まったりもしている。あとは、スウェーデンの人って関係性がフランクだしフラットだなって感じるな。聞いてはいたんだけど、実際に体験してみると「あ、まじなんだ!」ってなるようなこともあった。先生との関係もすごくフランクだし。

萩野
街にいる人が気さくに話しかけてきたりもしますよね。

スウェーデン国内旅行先で滞在したコテージ

佐々
#Swedengateという言葉を聞いたことありますか?スウェーデンの家庭では子どもの友達が家に遊びに来ていて、夕食の時間になった時に、その友達には部屋で待っていてもらうみたいな話が、#Swedengateっていう言葉と一緒にSNS上で広まったらしいです。プライベートなスペースはしっかり分ける、みたいな感じなんでしょうか。

影山
そうなんだ!#Swedengateの話は聞いたことがないけど、似たような話を聞いたことがある気がする。フレンドリーではあるけど、割り切るところは割り切る、みたいな感じなのかな。

佐々
うんうん。国民性の違い、みたいなところも色々深めてみると本当に興味深いですよね。

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ここまでお読みいただきありがとうございました。
日本から遠く離れたスウェーデンが、読者のみなさんにとってより身近な場所に感じていただけたら幸いです!


 

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