【後編】インタビューシリーズNo.3 UNICEF東京事務所 木村泰政代表

インタビュー
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ボイス・オブ・ユースJAPAN(以下VoYJ)の運営を支えてくださっているUNICEF東京事務所の木村泰政代表へのインタビューを全2回に分けてお送りいたします。前編に続いて、今回の後編では学生とのディスカッションも交えつつ、木村代表からのメッセージをお届けします。

 

【インタビューアーの紹介】

ずっきー:大学4年。興味が色んな方向に散り、様々なことに首を突っ込んで、たくさんの人に会いました。そんな点と点がやがてつながり、思いもよらないワクワクすることが起きることを楽しみに、今も点を増やそうと頑張っています。

もつ:理系学生1年生。石川県出身。まだ専門分野は決まっていませんが、将来は開発などに関わりたいと思っています。

たっちー:旅行と運動が好きな大学一年生。大学在学中にできるだけ多くの国に行ってみたいです。東京生まれ東京育ちで、自然に囲まれた生活に憧れています。

サクラコ:広島県出身。小説を読んだり書いたりすることが好きですが、趣味は料理、野菜栽培やラジオ体操など多岐にわたります。平和、日本文化、教育、食文化などに関心があります。

 

【専門分野の強みについて】

―国際機関において理系出身のエンジニアが持つ可能性について教えてください。

理系エンジニアはこれからとても大切になると思います。UNICEFには現在イノベーションチームがあり、そこでは、新しい技術を使って今のやり方をいかに効率的にできるかということにチャレンジしています。例えば、アフリカの国でエイズにかかっている母親が妊娠しました。赤ちゃんが生まれたとき、その赤ちゃんがHIVに感染しているのかを知りたいですよね。しかし、へき地で暮らすお母さんは、血液検査をして検査結果を受け取るまで1カ月以上待たなくてはいけないのです。そこで、赤ちゃんが産まれたらすぐに血液をドローンに入れて飛ばせれば、すぐに検査をしてHIVに感染しているかがわかり、赤ちゃんに対する治療が始められますよね。つまり、ドローンを使うことで素早く赤ちゃんに治療ケアをしてあげられるようになります。

また、データベースを作ってみるということも考えられます。今では開発途上国のとても貧しい生活をする人たちも携帯電話を持っています。UNICEFはコミュニティで働く保健員と協力して活動しています。実際に、なぜ多くの子どもたちがマラリアで亡くなってしまうのかを調べたところ、ウガンダではマラリアの薬の在庫が不足していました。そもそも、薬がないという情報が伝わってなかったのです。そこで、薬の在庫状況をきちんと把握するために、保健員が携帯電話を使って保健省とデータベースで繋がり、常に在庫状況を伝えあうことにしました。そうすると、常に薬の在庫がある状態になりました。データベースで情報を共有するだけで、多くの子どもたちの命を守ることができるようになったのです。

さらに、AI(人工知能)を使ってエボラ出血熱やジカ熱がどのように広がっていくのかを予測することもできます。例えば、ジカ熱の場合はGoogleなどとパートナーシップを組み、ジカ熱が広がっていく分布図・予想図を作るプロジェクトを行いました。飛行機のフライト状況やその地域の交通網を全部調べていくのです。そのデータをレイアウトすると、大体の予想分布図ができあがります。これはすでに実用化されています。つまり、AIやビックデータを用いるのは、主に理系ですよね。こういう分野に長けた人、あるいは衛星写真を使って災害前後の状況をすぐに把握できる人や、JAXA(宇宙航空研究開発機構)とパートナーシップを取ってプロジェクトができる人が必要です。

あと、我々が現在考えているのは、全世界の学校の分布図を作るプロジェクトです。災害が起こったとき、どこの学校が危ないのか、どのルートで行ったらその学校にアクセスできるのかを把握するためです。また、全世界の子どもにWi-Fiのアクセスがあったらいいですよね。アマゾンのへき地にある学校にはWi-Fiはありません。そのような地域に通っている子どもたちはデジタルへのアクセスがありませんが、これからの世の中はデジタルにアクセスがあるかないかで、その人の学習能力や社会的地位が決まっていくと思うのです。デジタルへのアクセスを世界中で可能にするには、どのような民間企業とパートナーシップを組み、どう協力していけばいいのかということも現在検討しています。それを実現させるためにも、理系の職員というのはこれから絶対必要になります。

さらに、これはプログラムの話ですが、企業には絶対に裏方があります。事務や会計、人事、ITなどです。つまり、国連機関で働くというのはフィールドに行って働くことだけではなく、その活動を支える事務所で働いているスタッフもいます。ITを活用することはとても重要なので、表だけでなく裏方でも理系の需要はかなり高いです。

 

―では、文系が持つ可能性にはどのようなものがあるとお考えですか?

先ほどは、技術的な面から見て理系の有利な点を言いました。ですが、文系・理系という区別に、僕はあまりこだわらなくていいと思います。文系にもいろいろな分野がありますよね。そして、文系・理系どちらでも一番大切なのは、好奇心を持って行動を起こすことです。そして、感性豊かに、パッションを持つことです。やはり、国際機関で働いている人を見ると、とても情熱的な方ばかりです。外国、特に開発途上国などの生活が厳しい場所で暮らすことにも耐えていけるような情熱を持った人は、実はとても希少です。逆に文系の強みはなんだと思いますか?みなさんの意見も聞かせてください。

 

たっちー(文系):私の強みは、興味を持ったことにはとことんがんばれることだと思います。フランスの歴史や文化に興味があるのですが、それを将来どう役立てるかと聞かれるとわからないです。将来は国際機関で働きたいと思っているのですが、自分の興味があることは政治や法律などの分野とは少し違います。自分の興味分野と将来の夢の差をどうやって埋めればいいのかわからないです。

文学を勉強するためには読解力も必要で、本を読んで分析するという分析力や洞察力、感性が必要になってきますよね。これからの時代は感性なども大切だと思います。だから、文系・理系ということにそんなにこだわらず、自分の長所や興味のあるところをどんどん伸ばしていくことに集中して、いろいろな人と触れ合うことが重要だと思います。やはり文系の強みは、一般的に言えば語学に長けていることです。語学は、国連で働く上では必須ですからね。

サクラコ(文系):私は、現在地理的なことを勉強しています。今日は日本の地方の開発について講義を受けてからインタビューに来ました。あと、語学はフランス語を学んでいるのですが、すごく面白いです。将来は小説家になりたいと思っているので、最近は日本文化にも興味があります。興味の幅はちょっと広めです。国際機関で働きたいという思いはあるのですが、海外のことを知っていくにつれて日本の国内のこともどんどん気になってきています。

 

いいと思います。外国に出て外国のことを知ると、もっと日本のことを客観的に見るようになりますよね。そうすると、今まで気付かなかったことに自然と気づくようになります。小説家になりたいというクリエイティブな気持ちはとても素敵ですね。また、一番初めの職業をずっと続けなくてはいけないわけではないのです。人間のやりたいことは絶対に変わりますから、気負わずに、「あ、違うな」と思ったらいつでも職業ややりたいことは変えていいと思います。結局は、自分が情熱を注げるもの見つけて、それを伸ばしていくのが理想だと思います。

 

【ご自身の展望について】

―これからの仕事でのビジョンを教えてください。

一つは官民連携です。SDGsや国連改革でも、民間企業とのパートナーシップがすごく重要になってきています。しかし、官民連携の事例はまだ世界でもかなり少ないです。だから、官民連携を日本から発信できたらいいなと思います。「日本はこんなことをやっていますよ」というのを、世界に発信できたらいいなと思っています。官民連携の面でいい例を作っていくというのが、今のチャレンジです。

あとは、日本人職員がどんどん活躍していけるようにサポートしていきたいと思っています。新しく入ってくる日本人職員だけじゃなく、今いる日本人職員が組織の中で残っていけるようにサポートしていきたいです。UNICEFの日本人職員は、現在120人ですが、この数は国連組織の中では一番多いはずです。日本人職員がどんどん入ってきて、国際機関での日本人職員の存在感を上げられるようにサポートしたいです。特に、UNICEFは120人のうち約80%が女性です。だから、もっともっと男性にも入っていただきたいです。

 

【VoYJへのメッセージ】

―VoYJに期待していることやアドバイスがあれば教えてください。

まず、国内問題だけでなく、外国の子どもたちが直面している問題に関するメッセージを伝えてほしいです。あとは、若者たちが自由に発信できるプラットホームにして、ネットワークをもっと広げてほしいですね。今はまだ、東大から始まった東大だけのプラットホームですよね。もっと大学のネットワークを広げて、東大生が様々な大学の音頭を取るようにしてほしいです。そうすると、いろんな考えやアイデアが浮かんできて、もっともっとVoYが力強いものになっていくと思います。政府を動かしたり、政策決定者を動かしたりすることもできるかもしれません。SDGsもそうですが、主役はみなさんです。ですから、「未来はどうなるだろう」と考え、自分でオーナーシップをとってほしいです。色々な情報を集めて発信したりディスカッションしたりするホームになることを期待しています。しかし、一番の根底は楽しくやることなので、ぜひ楽しんでください。

 

一同:頑張ります。

 

ところで、みなさん、こちらから聞いてもいいですか? みなさんがVoYJでやりたいことを教えてください。

 

ずっきー:僕は尖った意見を大切にしたいなと思っています。だから、尖っているライターさんをたくさん見つけたいです。特殊なことをしているライターさんをたくさん見つけて、できるだけその人のそのままの意見を書いてもらって、「ああこういう人もいるのか」と感じてもらいたいです。また、普通のSNSだと2、3行しか書けませんよね。でも、VoYJなら、1,000字くらいの記事も書けるので、自分の意見を正しく理解してもらうことにつながると思います。自分も尖った意見が見つかったら書いてみたいです。

たっちー:私は国連で働くことに以前から興味があったのですが、今年の夏に国連のNY本部に行かせていただいたときにVoYJの活動があることを知り、やってみたいなと思いました。活動の中で、このように滅多にお会いできない方にインタビューをさせていただけるのも魅力に感じました。

サクラコ:私は広島県出身なので、東京だけでなくいろんな人に記事を見ていただきたいと思っています。

もつ:私も同じなのですが、私は石川県出身で、東京に出てきたときに東京には素晴らしい機会がたくさんあるなと思いました。UNICEFの事務所があるのももちろん東京ですし。ネットなら、地方にいる高校生や大学生にも平等に情報を発信できるのではないかと考えています。

サクラコ:地方のユースが頑張っている活動についても知ってもらいたいです。

 

素敵ですね。楽しみです。この活動を広げて行くために、もっともっとネットワークを広げていきましょう。

 

一同:今日は、ありがとうございました。

 

<編集後記>

まず、UNICEFの東京事務局代表の木村代表にインタビューするという貴重な機会をいただけたことに、感謝申し上げます。木村代表は明るく気さくな方だったので、緊張せずにインタビューに望むことができました。私も自分が夢中になれるものを見つけ、パッションを持ってがんばって行こうと思います。本当にありがとうございました。

 

https://www.unicef.org/tokyo/jp/15321_15881.html

↑木村代表の紹介

https://www.unicef.org/tokyo/jp/15407_27502.html

↑インターン生による木村代表へのインタビュー

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旅行と運動が好きな大学一年生。大学在学中にできるだけ多くの国に行ってみたい。東京生まれ東京育ちで、自然に囲まれた生活に憧れている。