NYでブロードウェイのアジア人にスポットライトを当てたプロジェクト「Celebrate Asian Joy」を設立したブロードウェイ俳優・高橋リーザさんインタビュー

「Celebrate Asian Joy」Official Music Video “I CHOOSE JOY" タイムズスクエアでのワンシーン
インタビュー
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アメリカ、ニューヨークでは新型コロナウイルスのパンデミックを受けて閉鎖していたブロードウェイが約1年半ぶりに再開。トニー賞の授賞式も約2年ぶりに開催される等、かつての賑わいを取り戻しつつあるという嬉しい報道が聞かれるようになってきました。

 

そんなニューヨークに住む、日本人ミュージカル俳優、高橋リーザさんは、ブロードウェイミュージカル「Mean Girls」に出演中に劇場閉鎖の日を迎えました。コロナ禍で舞台出演が叶わない日々が続く中でも立ち止まることなく、舞台以外に自分にできる社会貢献はないかと模索し、活動の幅を広げ、「Celebrate Asian Joy」という団体を設立。このほど、全米でわずか4%と言われるアジア人ミュージカル俳優等が出演するミュージックビデオを公開し、ブロードウェイ再開とともに話題になっています。

 

ニューヨークで活躍する高橋リーザさんに、これまでの経歴や設立した団体について伺いました。

 

高橋リーザさん

 

Q)ミュージカルに興味を持ったきっかけを教えてください。

小さい頃はとにかく明るくて、歌うこと、踊ることが大好きな子でした。それを見ていた母が、歌とダンス、そして演技も一緒に習えるとミュージカルスタジオを見つけてきてくれて、4歳くらいからそのスタジオに通い始めたことがきっかけです。

 

Q)ブロードウェイ女優になるという夢を抱いたのはいつ頃ですか?そして、どのようにして夢を実現させたのでしょうか。

いつからかはっきりとは覚えていないのですが、帰国時に小学校時代の恩師と会う機会があり、その際、小学校2年生の時の学級アルバムを持参してくれました。そのアルバムには、将来の夢について「ニューヨークに行ってブロードウェイに立つ」と書かれていたのできっとこの頃だと思います。それからしばらくして、英語の必要性を感じ、小学校6年生から英語の勉強を始めました。そして、中学卒業後はカナダのパフォーミングアーツを学べる高校に留学。その後、アメリカの大学のミュージカルコースで学び、様々な舞台を経験しました。そして、卒業後は地方公演等に出演する等経験を積み、卒業から3年後にブロードウェイミュージカル「Mean Girls」のオリジナルキャストに選ばれ、2018年に念願であったブロードウェイデビューを果たしました。

 

Q)順調にキャリアを重ね、充実した日々を送っていらっしゃる中での劇場閉鎖だったと思いますが、どのような気持ちで過ごされていたのでしょうか。

当初は、2020年4月までが閉鎖予定とされていましたが、それが6月、9月、1月、2021年の夏までと少しずつ、延長されていきました。最初は、少し休みがもらえたからゆっくり休養しようくらいの感じでしたが、9月までの再延長が決まるとこれは長丁場になるかもしれないと思うようになりました。そして、それまで舞台中心の生活をしていたので、私から舞台をとったら何が残るだろう、何ができるだろうと考えるようになりました。その中で、自分がこれまで培ってきたことが日本でブロードウェイを目指している人や日本でミュージカルをやっている人に役立ててもらえるのではないかと考え、「Broadway to Japan」というオンラインレッスンプログラムを立ち上げ、様々なミュージカルワークショップやレッスンを始めました。

また、新型コロナウイルス感染拡大の中全米で広がっていったアジアンヘイトの報道を受け、アジア人の誇りや尊厳を鼓舞するべく「Celebrate Asian Joy」という団体を設立し活動を開始しました。

 

Q)「Celebrate Asian Joy」を設立するに至った経緯をもう少し詳しく教えてください。

日本という島国で日本人として生まれ、日本で生活している時は肌の色のことで不自由はなく、他の人と違うということを感じることもほとんどない日々を送っていました。でも、海外に住み始めると日本にいると感じない、いろいろなことを感じるようになります。差別というほど攻撃的なことをしてくる人は私の経験上はいないのですが、最近、アメリカではマイクロアグレッションという言葉がよく使われます。「小さな差別」のようなことをいうのですが、日本人の私に向かって、例えば「ベトナム人?」などと勝手にアジアの他の人種に決めつけて聞くことなどもその一例です。本来なら、「何人ですか?」って先に尋ねるべきなのですが、違う人種に決めつけられることで自分を少し否定されたような気持ちになるということが頻繁にあります。そう言われることでものすごく傷つくというわけではないのですが、海外に来てそういう小さな差別もあるのだということに気づき、学んできました。そして、カナダの高校、アメリカの大学、ニューヨークへの移住を経験し、自分のアイデンティティって何だろうと考えるようになりました。すぐに結論はでなかったのですが、ブロードウェイの舞台に立つようになり、出待ちの方から「アジアを代表して出演してくれてありがとう」など、感謝の気持ちを伝えていただいたり、SNSでもアジア人やアジア系のアメリカ人から同様のメッセージをいただいたりする機会が増えてきました。それで、アジア人として世界の舞台に立つ意義を感じるようになり、「Mean Girls」出演中に何かアジア人にフォーカスしたプロジェクトはできないだろうかと思うようになりました。そして、コロナ前の2019年にフォトシュート(写真撮影)をプロデュースしました。アメリカで5月はAAPI(アジア・太平洋諸島系米国人)ヘリテージマンスとして、アメリカの歴史の中でAAPIが果たした功績等を祝いますが、それに合わせて、ブロードウェイダンサー5人を集めての撮影でした。その後も継続して毎年やっていきたいと思っていましたが、昨年はコロナで活動できませんでした。一方で、今年に入って新型コロナウィルスの感染拡大によるアジア人ヘイトが増えてきました。アメリカのアジア人コミュニティでは、新型コロナウィルスの流行が始まった時から、それに対する危機感を持っていましたが、今年に入ってからメディアでの報道も増えてきたこともあり、この機会に何か声をあげなければと思い、立ち上がりました。

一方で、メディアではネガティブな面にフォーカスした報道が多く、私たちの人種は「危ない人種」とか「的になる」とか、自分のアイデンティとは違うレッテルを貼られているようにも感じました。そんなレッテルを一新したいという思いから、団体の名称には「Celebrate」や「Joy」といったポジティブな言葉を使用した「Celebrate Asian Joy」という名称にしました。

 

2021年5月のAAPIヘリテージマンスに合わせて発表したフォトシュート
撮影:レベッカ・J・ミッシェルソン 提供:Celebrate Asian Joy

 

Q)Celebrate Asian Joyでは、アジア人ブロードウェイ俳優が出演されたミュージックビデ オ「I CHOOSE JOYを制作し、9月に公開されていますが、制作秘話等があれば教えてください。

 

今回、日本人映像作家の齋藤汐里さんと二人三脚で演出までの全てを手掛けました。二人ともアーティストではありますが、プロデュース業という面では初めて経験することがたくさんありました。事務的なことで言えば、例えばタイムズスクエアで撮影するとなった場合、どうやって手続きをしたらいいのだろうか、照明を使う時にはどこから電源をとればいいのだろうか、そういったことから始まりました。役者は台本をもらって、当日舞台で演じるのが仕事ですが、その裏で、多くのスタッフの方が支えてくださっていることは分かっているつもりではいましたが、今回ミュージックビデオのプロデュース、そして演出までの全てを手掛けたことでその大変さを実感し、大きな学びになりました。演出面では、齋藤は映像の演出、私はパフォーマンスの演出を担当しました。歌詞や曲作りにも携わったのですが、ビデオを通してどんな物語を伝えたいのか、自分の漠然としたイメージを言語化するのが大変でした。また「Joy」という言葉は捉え方によっては軽くなってしまい、ただ「Happy」という感じだけで終わってしまう可能性を含んだ言葉でもあります。「アジア人ヘイトがあるけど、ただ単に楽観的にハッピーなんだよ」という伝え方になってしまうとちょっと違います。そうではなくて、そんな中にあっても「Joy」を力強く選択していることをフォーカスしたいという思いがあったので、そのためには例えば作曲家さんにどのように伝えれば、イメージにあった曲が出来上がるのかなど、クリエイティブな面でも大きな学びがありました。大変なことは多かったですが、新しい気づきや学びも多くとても成長できる経験でもありました。

 

Q)日本にいる私たちがこのような差別廃止のためにできることありますか?

それを「知る」ことが最初の一歩だと思います。

日本でも、こういう現状についてはニュースで少し報道されていると思うのですが、アメリカの現状を生の声で聞くことはほとんどないと思います。アメリカでこのような活動をしている日本人は私だけではないと思うし、そういう人たちを知ること、話に耳を傾け、こういうことがあるんだと気づくだけでも大きな一歩だと思います。その後、それを拡散するのか、何か行動するのか、それはそれぞれです。日本にいるとアジア人ヘイトについては関係ないと思ってしまうこともあると思うのですが、日本でも他の差別はあります。アメリカだけでなく、世界の現状を知ることは、それを教訓にして自分の行動を見直すことにもつながり、それが差別をなくすことにつながっていくので、まずは知ることが一番大事だと思います。

 

Q)これまでのリーザさんのお話を聞いていると常にポジティブに活動されているように感じますが、ポジティブでいられる秘訣があれば教えてください。

どちらかというとポジディブな性格ですが、常にそうであるわけではありません。アップダウンがある中で、常にポジティブでいなきゃと思うとそれがプレッシャーになるので、落ち込むときはちゃんと落ち込んで、心の波に乗るようにしています。そうすることで、落ち込んだ気持ちを一度リセットして、本当の自分を見失わないようにしています。

 

Q)最後に私たちユースにメッセージがあればお願いします。

好きなことを精一杯楽しんでやって欲しいと思っています。コロナ禍で制約もあるかもしれませんが、好きなことにフォーカスして今を楽しんで欲しいです。私はそれが将来につながると思っています。なかには、好きなことが何か分からないという人もいるかもしれませんが、それを探さないといけないと思うとプレッシャーになります。食べることが楽しい、友達と話すことが楽しいと感じるのであれば、それを楽しむのでも構わないと思います。そしてそれが次につながるのであれば、それまでの旅を楽しんで欲しいです。そして、あまりプレッシャーを感じず、メンタルを大事にして今を生きてほしいと思います。

 

Celebrate Asian Joy :        https://www.celebrateasianjoy.com

Music Video「I CHOOSE JOY」:     https://youtu.be/_zV64OpBeF4


 

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