僕の言葉がまた生まれる

キセツノトピック
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皆さんには、自分の人生の応援ソングはありますか?今の私が一番好きな応援ソングは、UNISON SQUARE GARDENの『Simple Simple Anecdote』です。YouTubeで公開されている曲ではないため勧めづらいのですが、ぜひ聴いてみてほしいのです。

 

UNISON SQUARE GARDEN(通称:ユニゾン)​​といえば、『シュガーソングとビターステップ』『オリオンをなぞる』などを思い浮かべる方が多いかと思います。かく言う私も、高校2年生の冬に『オリオンをなぞる』のライブ映像を見て、「なんていい曲なんだ!」と驚いたことが、ユニゾンに出会ったきっかけです。

 

私はラジオが好きなので、「ラジオやってないかな」と思って調べたところ、『機材車ラジオ』という、ユニゾンのメンバー3人が出演しているラジオを見つけました。高校時代からの付き合いであるメンバー同士のテンポの良い会話や人間性にも惹かれ、すっかりファンになってしまったのです。

 

最初に紹介した曲は、ハマったその年に発売されたアルバムのうちの一曲です。でも、良さに気がついたのは、ちょうど発売の一年後、大学1年生の秋でした。当事者ではないものの揉め事に巻き込まれ、自分なりに頑張っているのになかなか理解されず、涙することもある日々でした。そんなとき、いつも聞いていたはずのアルバムの一曲が、新鮮なものとして耳に飛び込んできました。

 

 君の優しさが死んだ時 お月様は雲に隠れるだろう

 薄明かりを頼りにして また会える隙間を探す

 

揉め事を解決に導こうと力んでいる最中、「もう人のためには頑張れないかもしれない」と感じる瞬間もありました。それでも、お月様が、誰かが、見ていてくれるのではないか。そう思うと頑張れる気がしたのです。

 

しかし、争いはなかなか終わらず、他の人に解決を委ねて良いのか、このまま限界まで頑張るべきか、ずっと迷っていました。ユニゾンのライブがあった日も、『Simple Simple Anecdote』を流しながら電車に乗り、悩みながら会場であるカルッツかわさきに向かいました。

 

一曲目が始まったときの衝撃は忘れられません。「初めてのユニゾンのライブ、気持ちを切り替えて楽しもう」そう思っていた私の耳に飛び込んできたのは、直前まで聞き込んでいたフレーズでした。

 

 全部嫌になったなんて簡単に言うなよ

 全部が何かってことに気づいてないだけ

 信号は変わる 星は生まれるから

 今日はなんとかなるぜモードでいいや

 

私が初めて生で聞いたユニゾンの曲は、『Simple Simple Anecdote』になりました。信じられないような偶然に、涙が止まりませんでした。

 

音源よりもずっと優しい声で歌われるこの曲を聞いてみて、解釈が少しだけ変わりました。この曲の一番好きなところは、「お月様が雲に隠れる」ことを許してくれるところです。一度隠れてしまっても、「また会える隙間を探」してくれるところです。

「たとえ優しさが死んでしまっても、きっとまた、優しくなれるときが来るはず。だから、頑張りすぎなくていいんだよ。」

そんなメッセージを勝手に感じて、「揉め事を解決しなければ」と力が入っていた私は、随分と楽な気持ちになりました。無理に話し合いの場を設けようとすることを辞め、他の人にも協力を仰ぐようになりました。自分にはもう限界が来ていたことに気づいたのです。

 

ユニゾンのメンバーがラジオで話していて、受験期の私が随分と救われた言葉があります。それは、「常温」です。無理に夢を持ったり、進路を決めたりするのではなく、自分に正直に、常に常温で生きる。その考え方は、明確な夢を持って進路を決めたわけではないけれど、自分なりに精一杯努力をしていた私を肯定してくれるようでした。

 

またそれは、売り上げやメディア露出に拘らないけれど、自分たちなりの音楽を追求し続けることでファンが増え続けているUNISON SQUARE GARDENらしい言葉だとも感じました。​​その考え方は、この曲にも詰まっているように思います。

 

いわゆる応援ソングのような盛り上がる曲ではありませんが、私にとって『Simple Simple Anecdote』は、どんな曲よりも背中を押してくれる曲です。この文章を読んでくださっているあなたにも、そんな一曲がきっとあるのではないでしょうか?


 

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