思いを伝えるマスクのデザイン提案

ボイス

私は服を作るのが好きです。14歳の誕生日プレゼントに業務用のミシンを買ってもらい、持っていた服のリメイクから初めました。それから私は、服作りにどんどんのめり込んでいきました。今では、独学ながら服のデザインを描き、パターンと言われる服のパーツを作り、布も自ら選び、完全オリジナルの服を70着ほど完成させました。

 

高校1年の夏にしたイギリス留学が自分の考え方に変化を与えました。

最初はコミュニケーションが取れなかったことで自分がマイノリティーになり、差別的な発言をされたりもしましたが、週末や祝日に自分の作った服でロンドンの街に出ると、「かっこいいね」「写真取らせて」「インスタグラム交換して」と注目をあび、みんなが僕を認めてくれました。そこで私はファッションのパワーを感じました。徐々に会話もできるようになって友達も増えていき、留学生活が少しずつ楽しくなってきた2020年の2月。コロナウイルスの世界的な流行が始まり、生活は一変していきます。学校も寄宿舎も閉鎖され、私は仲の良かったイギリス人の友達の家に泊まらせてもらい、留学終了まで乗り切るつもりでした。しかし感染者が増え、航空便が減少し、友達の家に泊まり続けるのも難しくなったため、4月の頭に帰国せざるをえなくなりました。

日本に帰ってくるとオリジナルマスクを作るということが流行していたので、僕もファッショナブルなオリジナルマスクを作ってみました。

留学で経験した「差別」から、相手を思うこと「共存共生」の大切さに気づき、その気づきを活かそうと思い、僕は「マスク × 共存」をテーマに製作をはじめました。

小児科医である僕の母から、耳の聞こえない子どもたちがマスクをすることで口元が見えなくなり、全くコミュニケーションが取れなくなってしまったという話を聞きました。そこで、口元が透明のマスクを開発したいと考えるようになりました。透明と言ってもただ透明なのではなく、実用的かつ見た目がカッコよくファッショナブルにつけられるマスクです。最初に市販されている透明ビニール生地を使ったプロトタイプを3つほど作り、より実用的かつ完成形に持っていくために、葛飾ろう学校に取材に行きました。そこではたくさんの学びや発見がありました。

ろうの方達のなかでも口話という相手の唇を読んで発言の内容を理解する手法をもちいる方達はただ相手の唇の動きを見ているだけではなく、表情も同じくらい観察しているのです。表情を読むことの大切さは、コミュニケーションが苦手な発達障害といわれる個性を持つ人々にも共通している、と母から教わりました。表情を隠してしまうマスクは、人類に必要不可欠な非言語コミュニケーションを阻害してしまうのです。

また同じタイミングで、国立に国内初オープンした、大手コーヒー会社が経営する、ろうの方々が働くコーヒショップにも客として行かせていただき、大きな感銘を受けました。店員さんとコミュニケーションをとる時、我々は「言語」というコミュニケーションの手段を使わずに、

「ありがとう」

という気持ちを伝えるために、会釈をしたり大袈裟に手を動かしたりします。しかしマスクのせいであまり気持ちが伝わっていないのではないか、ということを実感しました。改めて僕の透明マスクの必要性を感じました。

コミュニケーションの基礎は感謝だと思います。それをうまく伝えられなければ差別のない共存はできません。ろうの方々だけでなく多くの人々が透明マスクをファッションとして身につけて生活すれば、今よりも過ごしやすくなる世界がきっとあるはずです。


 

+6