共生共存できる社会をファッションで作る

ボイス

私は13歳の夏に、ジャスティン・ビーバーのファッションに強く憧れ、当時持っていた服を組み合わせて、彼のスタイルを真似していました。

小さい頃から、何かを自分で作るのが好きだった私は、彼の独創的なファッションを真似しているうちに、「自分でオリジナルの服を作ってみたい」と思うようになりました。14歳の誕生日プレゼントに業務用のミシンを買ってもらい、まずは持っていた服のリメイクから初めました。そこから私は、服作りにどんどんのめり込んでいきました。今では、独学ながら服のデザインを描き、パターンと言われる服のパーツを作り、布も自ら選び、完全オリジナルの服を70着ほど完成させました。

自分の感じた「ファッションの楽しさ」を学校でもみんなと共有したいと思い、中学3年生になる春休みに、学校で洋服を作る部活動を立ち上げようと考えました。部活の最終目標を「校内でファッションショーをする」と掲げ、部活動立ち上げの企画書を作り、学校に提案しました。

最終的に、部活動として認めてもらうことはできなかったのですが、文化祭の間だけ、有志団体「ミシン部」として活動することが認められました。

文化祭では「世界で一つのポケットTシャツを作ろう」をテーマに出展しました。

まずは私が事前に、Tシャツにつけるポケットを、完全オリジナルで250種類作りました。そして来てくれたお客さんに、ポケットをいくつ着けたいか、どこにつけたいかを聞き、その場でミシンを使い縫い付け、世界で一つのTシャツを作りました。2日間で、用意したTシャツ100枚が完売する大盛況でした。

私の母は、世田谷でクリニックを運営しています。文化祭での企画が大変好評だったので、このアイディアを使い、母の病院に通う子供たちのために何かできないかと母に相談しました。その結果、ファッションと医療をつなげ「発達障害の子どもたちに行うリハビリプログラムの、ソーシャルスキルトレーニングになるのでは」という話になりました。そこで、文化祭の企画にアレンジを加え、医療として世田谷のクリニックで実施することになりました。

発達障害の子ども達は人とコミュニケーションをとったり、自分の感情をコントロールすることが苦手なため、日常生活や集団生活でトラブルに見舞われることもあります。また、障害を理由に周囲から制限をうけることもあり、達成体験を得がたく、自尊心が低い傾向があるといわれています。そこで、医療的行為としてファッションを使い、皆とコミュニケーションをとりながら、参加者それぞれが自分のオリジナルの服を作るという体験を通じて、社会性を習得してもらおうと考えました。加えて、自らの力で服という作品を完成させ、それを発表し共有するという達成体験を通じて、自尊心を高めてもらうことも目的としました。

プログラムには、自閉症や注意欠陥多動症の子どもたち10人と、その保護者に参加してもらいました。

 

参加者にはポケットを自由にデザインしてもらい、それをTシャツに好きなように縫いつけてもらいました。時には助け合いながらポケットを作ってもらい、最終的には私がミシンの使い方の手ほどきを行いました。小さい子には、私の膝の上で一緒にミシンを動かしてもらい、ポケットを一緒に取り付けました。オリジナルのポケットTシャツを完成させた後に、完成発表会も行いました。そこでは「なぜそのようなデザインにしたのか」、「自分がどこにこだわったのか」などを参加者同士で共有してもらいました。子ども達は、他の参加者から意見を求められ、また他の参加者の意見にも耳を傾けていました。

今回のプログラムでは、参加者同士のコミュニケーションとオリジナルTシャツを完成させるという達成体験を経て、子供たちの自己肯定感が高まり、以前よりも彼らが、自分に自信を持てるようになったと感じました。

このプログラムを完成させるまでに約半年間の準備期間がありました。時にはこのプログラムが本当に子ども達のためになるのかと、半信半疑になることもありました。しかし、プログラムに参加してくれた子ども達の「楽しかった」という言葉を聞き、Tシャツを嬉しそうに持って帰っていく笑顔を見て、自分の好きなファッションを通じて、人の役に立ったことを実感することが出来ました。とても嬉しかったです。

私も高校1年生でイギリス留学をした際に、肌や目の色、言語の違いでクラスメイトから差別を受け、今まで味わったことのない絶望と孤立を経験しました。私は外国という環境の中で、周囲の人と外見や言語が少し違うという理由だけで、マイノリティという存在になったのです。

発達障害と言われる子ども達も、周囲の人と少しだけ違った特徴を持つというだけで、クラスの中でマイノリティとして差別を受けたり、誤解をされることがあります。

 

今回参加してくれた子ども達が、生き生きと素晴らしいTシャツを作る様子、そして誇らしげに自分の作ったTシャツを発表する様子は、私に2つのことを教えてくれました。1つは「マイノリティは大きな可能性とパワーを持っている」ということ。もう1つは「ファッションは人を良い方向に変えるパワーがある」ということです。

私の夢は、「壁」を感じさせない服を作るファッションデザイナーになることです。服作りを通じて、マイノリティもマジョリティと同じように生きることができ、マジョリティがマイノリティを虐げない「共生共存」の社会を作りたいと思っています。共生共存を妨げているのは、マジョリティの中にある「普通と違うということへの恐怖」や「普通と違う人に対する偏見」だと思います。ファッションは、マイノリティに力を与えるだけでなく、マジョリティの意識を変える力もあるのではないかと、私は考えています。

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