「自分らしさ」と聞いて、皆さんはどんなことを思い浮かべるだろう。自分のありのままでいられること、自分のやりたいことが好きなだけやれること、自分を大事にして生きていくことができること。私は、すべての人が「自分らしく」生きられる社会はどんなに素敵だろう、と思うことがある。でも、その「自分らしさ」がジェンダーに基づく差別や社会構造によって守られなくなることがある。現在の日本社会では、ジェンダーギャップが依然として存在しており、それによる不平等さも確かにあるのだ。今回のボイスでは、この不平等さについて自身の経験をもとに考察するとともに、どのようにしたらみんなが「自分らしく」生きられる社会を実現できるのか、考えていきたい。
まず、私の大学では、構成員の75%以上が男性だ。私は、初めてこの数値を聞いた時は実感が湧かなかったが、実際にこの事実を目の当たりにした時にはとても驚いた。大学の食堂で過ごしている時に周囲を見渡すとほとんどの人が男性だったこと、量子コンピューターに関する選択授業を受けた時に女性が数えるほどしかいなかったこと。もしかしたら私は男子校にいるのかもしれないという気持ちにさえなった。これは、私にとって、衝撃的な経験でもあったし、ジェンダーギャップについて改めて考えるきっかけを与えてくれる出来事となった。
また、大学卒業後の将来について考える中で、私が「女性」であることによる影響を考えることが増えるとともに、大学に進学してから、いわゆる「男性社会」を目の当たりにしたことで、将来この「男性社会」で私はやっていけるのか、という不安が大きくなった。私には、社会をよりよくしていきたいという大きな夢があり、そのためにはその「男性社会」でキャリアを積む必要が出ることもあるのではないか、と考えている。しかし、管理職レベルに男性ばかりがいる環境で、私が本当にやりたいことをし続けることができるのか、と不安になった。「男性社会」に取り込まれていくような感覚になってしまい、とても怖くなった。また、もし結婚や出産という選択をしたら、男性と同じように働き続けられるのか、とも思った。ジェンダー問題が自分の中に大きく立ちはだかった瞬間だった。
今、日本において、地方の女子が難関大学を目指すことを諦めてしまうことが課題として明らかになっている1)。私は広島県出身で、周囲の人に東大を目指すことを止められなかったことは良かったが、受験勉強に向けた情報を集めるのが大変で、地方だからこその困難も実感した。
私は、女性だからといって学ぶことや、やりたいことに挑戦することを諦めなくて良い社会を作りたい。性別にかかわらず、誰もがやりたいことを実現できる社会環境を構築したい。それによって、すべての人が自分らしくいきいきと生きられる社会にしたい。性別ではなく、その人自身を見ること。その人自身のやりたいことが重視されること。それは当たり前のことではあるが、まだ実現できていない社会が多い。
どんな国にも、性別ごとのステレオタイプには歴史的な背景があると思う。多くの場合、それは女性が抑圧されてきた経験や、男性を立てることが女性に求められてきたことなどに起因しているのではないか。そして、時代は変わり、女性の権利を保障する法律や制度、国際的な枠組みが作られた。そんな現代においても、ジェンダー平等が十分に実現できているとは言い難いのではないか。
このような社会において、ジェンダーに関する問題の解決に向けて、一人一人ができることを考え、行動に移すことが重要なことだと考える。ジェンダー平等は女性だけの問題ではなく、男性にとっての問題でもあり、すべてのジェンダーの方にとっての問題なのだ。この問題は、すべての人が向き合う必要のあることで、問題の解決に向けてさらに議論を進めたり、少しでもできることを実践したりすることが大切だと考えている。
また、日本のジェンダー課題を見つめる上で、他国のジェンダーに関する社会状況に目を向けることも重要かもしれない。日本に存在するジェンダーギャップによって、どのような困難さや、苦しみが生まれているのか。私たちは、どのような社会を目指していきたいのか。そのようなことを一人一人が考え、行動に起こすことが、ジェンダー問題の改善につながっていくだろう。そして、それが、すべての人が「自分らしく」生きられる社会につながるだろう。
1) #YourChoiceProject「なぜ、地方の女子学生は東京大学を目指さないのか【2023年度調査結果】」https://yourchoiceproject.com/column/pressrelease2023#index_dBNV3Fvs

広島出身の大学2年生。トマトとさだまさしさんの曲が好き。看護や公衆衛生、平和学について関心がある。知的障害の人の医療福祉の課題について研究したいと思っている。