【この日なんの日:3月編】世界野生生物の日

この日なんの日
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3月3日はなんの日ですか?と100人の日本人に聞いたら、たぶん100人全員が「桃の節句」とか、「ひな祭り!」とか答えると思います。たぶん自分もそう答えます。でも今回は、違う記念日のお話です。

 

突然ですが、50年前の日本を想像してみてください。どんな風景ですか?

経済成長の真っ只中にある日本。都市ではビルが立ち並び始め、自動車が普及し、人々の生活は豊かに、便利になっています。人口は1億人を突破したばかり。科学技術の恩恵は計り知れません。大阪万博も開かれました。

その一方で、公害問題が深刻化します。水俣病やイタイイタイ病など、四大公害病が最も顕著なのがこの時です。環境破壊や大気汚染が大きな問題となっていました。

さらに、世界に目を向けると、動物の生息数が減少していることに注目が集まっていました。その原因の1つが、科学の進歩により可能となった国際取引であることも取り上げられました。トラの毛皮や象牙などが、国際取引によって高値で取引されていました。

そんな状況を憂いて、1973年3月3日に制定されたのがワシントン条約です。だから、3月3日は「世界野生生物の日」と定められています。この日には、政府・企業・NGOなど、様々なセクターが野生生物保護に関するキャンペーンを行なっています。

 

そこで今日は、皆さんに少し、野生生物のことをお話したいと思います。

野生生物に関する現在の状況は、厳しいものがあります。データは調べればすぐに出てきます。現在わかっているだけでも絶滅危惧種は2万6000種ほど(IUCN:レッドリストより)。毎年多くの種が絶滅していて、その数は4万種とも言われています。開発により住処を追われる動物は計り知れず、ブラジルの熱帯雨林は年々その面積を減らし続けています。状況は50年前よりももっと深刻です。

けれど、おそらく今の方が野生動物保護への世論の関心は薄いのではないでしょうか。少なくとも、絶滅のスピードは弱まるどころか加速しているし、気候変動などの問題を食い止められるだけの関心は集まっていません。

なぜなのでしょうか。

1つ思うのは、自然を身近に感じる機会が減ったのではないかな、ということです。この前、テレビで1960年代の東京の映像を見てびっくりしました。緑がたくさんあるし、森は近くにあるし、高い建物も多くはありません。当時の人たちは、自然と触れ合う機会が今よりも多く、自然に囲まれながらの暮らしを送っていました。1960年代を暮らす人たちにとって、自然は今よりも身近で、生活に欠かせないものという認識が強かったのではないかと思います。だからこそ、自然保護、絶滅危惧種の保護に対して、すんなりと受け入れられる人は多かったのではないかなと推測しています。

現代はどうでしょうか。都市に住む私たちにとって、自然を身近に感じる機会はほとんどありません。気候変動や絶滅動物のニュースが流れても、遠い世界のことと聞き流す人も多いのではないでしょうか。自分の日々の行動と環境問題を結びつける人は、いわゆる環境意識の高い人だけです。

みんなきっと、環境問題の解決は必要だと認識しているはずです。それでも、環境問題よりももっと重要なことがある。そう思ってしまうのではないでしょうか。経済発展や、貧困問題の解決、平和維持活動などといった分野を一番に考えて、大切にしたい分野のためには環境をある種犠牲にしても仕方ないと思っている。そんな人が大多数なのかなと感じています。

別にそれを批判するつもりはありません。全員が全員、環境を一番に考えることは不可能です。でも、人類を含む地球上のすべての生物がこれから先もずっと繁栄するためには、環境問題の解決を避けては通れません。

もっと広い視野で物事を見てみませんか。自分が一番大切にしたいことだけじゃなくて、人や動物が幸せに暮らしていくためにどうするべきなのかを考えてみませんか。環境問題は地球規模の問題であり、地球上に住む人全員が関わる問題です。みんなが少しずつ、環境のことを考えることができれば、地球の未来は幸せにあふれていると信じています。

 

もう1つ。「生物多様性保全がしたい」というと、「生物多様性を守る理由って動物が好きだから以外に、どんなものがあるの」と聞かれることがあります。

これも難しい問いです。1つの答えは、人にとって役立つし、暮らしていく上で必要だから守らなければならないということ。もう1つは、直接的に役にたつかはわからないけど、私たちの心を豊かにしてくれるから、守りたいということ。

1つ目は詳細な説明は必要ないと思います。食料品とか、生活基盤とか、エネルギーとか想像したらわかりやすいです。自然はつながっているので、どこかにほころびができると全体に行き渡ってしまいます。

2つ目ですが、個人的にはこれが一番好きな考え方です。自分の好きな動物、もしくは好きな景色を思い浮かべてみてください。動物だと、パンダ、ゾウ、トラ、オオカミなどなど。景色だと、富士山、沖縄のサンゴ礁・マングローブ林、北海道の雪景色などなど。もしそれが見られなくなったらって考えてみてください。もしくは、今の綺麗な状態で見られなくなったらって考えてみてください。すごく嫌だと思います。好きなものが見られなくなるのは、理屈抜きで嫌なものです。けれど見られなくなるということが、現実味を帯びているのが今の状況なのです。

このように、自然には文化的側面があります。そしてこの文化的側面は、想像しているよりもはるかに重要です。動物が好きとか、綺麗な景色を見たいと思う人は多いです。けれど環境問題の深刻化により、それらが損なわれる危険性がある。こんな風に自然を考えれば、環境問題のことも身近に感じられるのではないでしょうか。

 

3月3日の「世界野生生物の日」をきっかけにして、少しでいいので環境問題や生物多様性保全について考えてみませんか。

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VOYJ編集部員。東京大学一年生。国立筑波大学付属高校出身。
小中高とずっと野球をしていた。野球は今も大好き。また、動物がすごく好きで、中でもパンダは特別。2歳半の時に一目惚れしてから絶賛片想い中。動物園に行くのが日々の癒し。国際的な舞台で動物を守る仕事がしたいと考えている。