【童話】Put Yourself in My Shoes

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ぼくはクラスで一番のやんちゃもの。元気いっぱいで、みんなを笑わせるのが得意。これはぼくのいいところ。
ぼくはクラスで一番の寂しがりや。みんなが笑ってくれないと不安だから、調子にのりすぎることがある。これはぼくの悪いところ。

このあいだ、タロウくんのノートに落書きをした。タロウくんは泣きそうだった。後悔したけれど、知らんぷりしてしまった。ミサキさんの消しゴムを隠したこともある。ミサキさんは困っていたし、ぼくもいやな気持ちになった。謝れなくて、こっそり返した。
今日の英語の時間、先生がお話ししているのに、ぼくは横を向いておしゃべりをしていた。そうしたら、先生は悲しそうにこう言ったんだ。
“Put yourself in my shoes.”

家に帰って、お父さんにきいてみると、
「日本語にしたら、『自分をわたしのくつに入れなさい』になるなあ。『相手の立場に立って考えなさい』という意味だよ」
お父さんはニコニコしていた。
「英語の勉強かい?」
「うん、そんなところ」
ぼくはあいまいに返事をした。先生がなにを言いたかったのか、やっぱりわからない。夜になっても、頭のすみにあの言葉がひっかかって気分が晴れなかった。タロウくんの泣きだしそう顔。ミサキさんの困った顔。先生の悲しそうな顔と声。目をつむってもいろんなものが頭に浮かんで、よくねむれなかった。

翌朝。ぼくは枕元を見て驚いた。真っ白なシューズが置いてある。お母さんが朝ごはんになるよと呼んでいたから、急いで服を着替えて、部屋を出ようとした。シューズが気になって、そっと手にとる。なんの変哲もない白いシューズ。だけれどそれがぼくに向かってウインクしたような気がした。〈わたしをポケットに入れて〉
どきんとしたけれど、むりやりポケットにつっこんでみた。ふしぎなことに、それはすんなりとおさまった。

「いってきまーす」
ぼくはいつもと同じように、元気いっぱいに家を出る。大の仲良しのヒカルくんと学校に向かうんだ。
草の生い茂る歩道に出たところで、いつものように、
「ようし、かけっこだ!」
かけっこのポーズをしたとたん、ポケットの奥がムズムズした。首を傾げていると、急に気が付いたんだ。
「あ、アリの行列だ!」
たくさんのアリがぼくたちの前を歩いている。それを見つめながら、手は無意識にシューズを取り出していた。

あれれ?

出てきたのはごはんつぶよりも、ごまよりも小さな黒いシューズ。地面において足を入れてみると、すっぽり入った。
〈今日はいいお天気ね〉
アリのおしゃべりが聞こえてくる。
〈そうだね。甘いおかしも見つけたし、いい日になりそうだ〉
〈早くみんなに食べさせなくちゃ〉
むねがドキドキして、ぼくはポーズをやめた。
「どうしたの?」
「アリがいるよ。踏まないように歩こう」
そうだね、とヒカルくんはにっこりした。ぼくもホッとして、にっこり笑った。

学校に着いた。さあ、早く教室に行こう。
あれ? ポケットが膨らんでいるよ。
出てきたのはピンクの小さなシューズ。足を入れると、今度は悲しそうな声がする。
〈教室がわからなくて困っているの〉
だれかな? 見回すと、あ、同じシューズをはいた女の子がいる。一年生かな。げた箱の前で行ったり来たりしているよ。
「教室がわからないの? 何組かな?」
案内してあげると、その子はうれしそうにお礼を言った。
気持ちがいい。他の人のシューズに足を入れると、いろんなことがわかる。知らなかったよ。ふざけなくても、みんなを笑顔にすることができるんだ。

授業中、休憩時間。教室で、グラウンドで。シューズはいろんな色、いろんな大きさになった。ぼくは元気に活躍して、いつもよりたくさん笑った。次の日も、その次の日も。だんだんポケットを確かめなくてもよくなった。
「ハロー!」
英語の時間、思いきって先生に話しかけた。先生もにっこりして返してくれた。シューズはきっと、先生のハイヒールの形になっているはずだ。

帰り道、傘を振り回している男の子がいた。傘がぶつかって木がかわいそう。男の子は楽しそうに見えるけど、ぼくにはわかる。むりにはしゃいでいて、本当はドキドキしている。
「あ」
思わず立ち止まる。数週間前のぼくだ。ポケットに手を入れてシューズを出す。はくためじゃない。ぼくにはもう、必要ないから。
はじめて見たときと同じ、どこにでもありそうな白いシューズ。こっそり男の子に近づき、そのポケットにシューズをおしこんだ。 そして、駆け出す。
あの子はどう変わるかな。あの子が心の底から笑顔になっている姿を思いうかべて、わくわくした。

 


 

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