今日はみなさんに、わたしの大事な相棒であるはーちゃんの話をしようと思います。
わたしの1日は、はーちゃんのあいさつを聞くところから始まります。
朝起きて、顔を洗って、髪を結んで、はーちゃんにおはようといいます。
はーちゃんはわたしにぴったりとくっついて、あいさつを返してくれます。
その瞬間、わたしの左側の世界が目を覚まします。
外に出て、はーちゃんと一緒にいろんな音を聴きます。
はーちゃんのおかげで左後ろからくる車に気づいて気をつけることができます。
左に座ったおともだちの声に気づいてお話をすることができます。
はーちゃんにはちょっとだけ苦手な場面があるので、そういうときは少しだけおやすみしてもらいます。
はーちゃんはわたしがみみなりさんと喧嘩しようとしたとき、少しだけ仲直りをさせてくれます。
どうしても仲直りができないときは、はーちゃんと一緒に好きな音楽を聴きます。
そんなわたしの1日が終わりに近づいて、おうちに帰ってお風呂に入る前に、はーちゃんをわたしから優しく離します。こうしてわたしの左側の世界は右側の世界より少しだけ先におやすみに入ります。
これがはーちゃんとわたしのふつうの1日です。
おわり
ここまで読んで気づいてくださった方もいると思いますが、はーちゃんは補聴器のことです。Hearing AidのHAをとってはーちゃんということにしてみました。
わたしが補聴器を使い始めたのはつい最近のことです。突発性難聴で左耳に難聴が残り、耳鳴りの緩和と聞き取りの改善を目指して補聴器を試し始めました。
補聴器を初めてつけて、設定が終わり、補聴器屋さんがスイッチをオンにしたときの感動をわたしは一生忘れることができません。
治療をしてもあまり良くならず諦めるものばかりかと思っていましたが、左耳から久しぶりに音が入ってきて、左側の世界と再会したような気持ちになりました。
わたしの場合は、補聴器をつけていても元のように人の声が完全に聞き取れるわけではありませんが、補聴器をつけていると左から話してくる人の話の内容がわかることが増えます。
補聴器が合う合わないは、聴力や生活環境、そもそも音を必要とするかどうかなど、さまざまな要素が絡み合ってくるため本当に人それぞれです。
さらにどれくらい補聴器で音を大きくするか、どのように入れる音を上げていくかなど、何度も細やかに調整を重ねる必要があり、自分に合ったきこえを手に入れるためにはなかなかな時間もかかります。
だからこそ補聴器はわたしにとって大切な相棒である「はーちゃん」です。
スマホと繋がるはーちゃんをアプリで操作してその場にあった調整にしたり、
Bluetoothでつなげてはーちゃんを通して音楽を聴いたり、
補聴器用のアクセサリーを買ってはーちゃんにつけてみたり、
補聴器屋さんと相談して選んだ水色のイヤーモールド(補聴器につける耳栓のこと)を友だちに自慢したり、
はーちゃんはすっかりわたしの生活に溶け込んでいます。
環境によっては音が割れて響いてしんどくなることも、ハウリングにうんざりすることも、外出先に電池を忘れて焦ることもありますが、はーちゃんがいるおかげで前よりも安心して外に出かけることができます。
でもきっとそれはただ音が聞こえるからだけではなくて、はーちゃんをめぐって、さらには自分の難聴をめぐって数えきれないほどたくさんの人が力を貸してくれたことを思い出せるからだと思います。
だからこれからもずっとよろしくね、はーちゃん。

大学2年生。小児移植外科医を目指して勉強中。
夢は「すべての子どもが幸せで、大人になれる世界」を作ること。
リラックマとチョコレートが好き。