「みんな違ってみんないい」

VoY全国駅伝

私が以前オーストラリアに留学し、現地の授業に実際に参加して感じたことがあります。それは生徒の積極性が違うということです。日本の授業では生徒が自ら進んで発言することは少ない傾向にある一方、オーストラリアの授業では生徒が自ら手を挙げ、進んで発言していました。これに私は危機感を覚えました。 

今、世界はグローバル化のまっただ中で、ビジネスや社会問題に対する話し合いの規模は今や日本だけでなく世界が相手です。つまり私たちは世界中の人とコミュニケーションをとらなければなりません。そこには言語的や文化的な壁もあるかもしれませんが、やはり一番の大きな壁になりうるのは、発言の積極性の違いだろうと私は考えています。日本人はシャイで人前で話すのが苦手であったり、Noとなかなか言えなかったりといった国民性、つまり集団主義思考があることは一般的に知られていると思います。では、なぜそのような背景が生じたのでしょうか。そして、そんな私たち日本人はグローバル化の進む世界で今後どのようにしていくべきなのでしょうか。 

 

日本人に集団主義思考が生じた背景として考えられる要因として、地理的なもの、歴史的なものがあげられます。 

まずは地理的要因について述べていきます。日本は島国であり、山脈や河川、海などがただでさえ小さい日本の面積をさらに小さい面積の地区に分けています。交通が発達していない古代に、これらの地区は周りの世界とほとんど断絶したので、日本人はここで繁殖し生存し続けて比較的密集した村を形成したのです。この独特な地理環境は、日本の地域制共同体の形成の前提条件です。それに加え、日本は自然災害が多く、台風、地震、津波、火山の噴火などは人類の生命と財産を脅かしてきました。こういった自然災害による人類の生命と財産への脅威に対処するため、人々は互いに協力し、それらをしのぎ、発展してきました。これによりみんなで協力するという集団意識が植え付けられたと考えられます。

次に歴史的な要因について述べていきます。「村八分」という伝統も原因のひとつだと考えられます。そもそも村八分とは村落の中で掟や秩序を破ったものに対して課される制裁行為であり、一定の地域に居住する住民が結束して交際を断つことです。具体的には葬式の世話と火事の消化活動という、放置すると他人に迷惑のかかるこの二つ以外の一切の交流を断つということです。これは村八分に遭うと、個人と家庭が引き続き生存しにくいことを意味しています。このような伝統は日本人を集団に依存させ、孤立を恐れさせるため、日本における集団主義思想の発展する大きな要因となったと考えられます。 

 

 

日本の特徴的な地形が元となった村の性質、そして村八分などの伝統的なしきたりなどが、日本が集団主義である大きな要因であると述べましたが、これらに共通して言えることはどれも人付き合いを大切にしているということです。 

 

初め私は、このグローバル化していく世の中には集団主義はそぐわないと思っていました。なぜなら集団主義では周りの人に同調しやすく、自分の意見をしっかり主張するどころか、個人主義である欧米の人に議論のイニシアティブを握られてしまうのではないかと思っていたからです。 

事実、自分自身が外国の人と一緒に議論する機会がありましたが、自分の主張をしっかりと主張する欧米の人に圧倒され、自分の意見をきちんと伝えることができませんでした。しかし集団主義について考えるうちに、決してそれが悪いわけではないと思うようになりました。なぜなら集団主義には集団主義のメリットが、個人主義には個人主義のメリットがあり、どちらのメリットも捨てがたいからです。 

集団主義のメリット、それは何といっても協調です。お互いを大切にし、尊敬し助け合っています。それが非常によく体現されたのが東日本大震災です。この震災でとても多くの人が亡くなり、また多くの人が家を失い家族を失いました。しかしその一方で、どうにか被災者の役に立ちたいと約90万人の人がボランティア活動に従事しました。これこそまさに集団主義を尊重する象徴的な出来事であると考えられます。そしてこの互いに助け合う姿は、外国の方の大きな感動を呼びました。というのも外国では災害が起きると盗難事件がよく起こるのだそうです。しかし日本ではほとんど起こりませんでした。これを裏付けるものとして海外メディアの反応があります。台湾の新聞、「中国時報」では、アメリカ・ニューヨーク大停電やハリケーン・カトリーナが襲った時のような商店略も起きず、すべてに秩序が保たれていると報じました。¹ また、アメリカCNNのコメンテーター、ジャック・カファティは、彼自身の番組で「なぜ震災下の日本で、略奪が起きないのか」をテーマに、視聴者に問いかけたそうです。² このように東日本大震災に対する日本人の集団を尊重し助け合う精神は、海外からも称賛されています。この協調が集団主義最大のメリットです。 

一方個人主義のメリットとしては、自分の主張をしっかりとでき、個性や自分らしさを尊重できるということがあります。これからの時代、グローバル化とともに世の中ではAIの導入が進み、今ある仕事の約半数がなくなるともいわれています。そんな中AIは、主に創造力、ゼロから1を生み出すこと、作り出すことが苦手とされています。そこでこれからの時代重要になってくるのは、クリエイティビティです。集団主義では個性や自分らしさを発揮するのが難しい一方、個人主義ではそのようなことが推奨されているため発揮しやすいと考えられます。ほかの人と異なっていることで優れているとみなされるためです。そういった意味でこのユニークさが個人主義最大のメリットです。 

 

 

これらを踏まえると、この先グローバル化が進む世界にとって一番大切なのは集団主義でも個人主義でもなく、それぞれの良さを認め尊重するということであるように思います。集団主義には集団主義の、個人主義には個人主義のメリットやデメリットがあるため、それら二つの考え方が共存することでお互いのデメリットを相補的に埋め合わせることができ、よりよい社会を作っていくことができると思います。ですが、自分の意見を主張するということは自己表現であり、とても大切です。これは個人主義、集団主義にかかわらずとても欠かせない貴重なスキルのため、しっかりと訓練をすることが大切であると思います。僕は初め、てっきり集団主義である日本人は、個人主義でなければならないとばかり思っていました。しかしそれは個人的な先入観で、物事を先入観で考えてはいけないことを実感しました。これから先、こういった先入観にとらわれて行動してしまわないように自覚を持ち、しっかりと考えて行動しなければならないと思います。 

 

 

1)https://web.archive.org/web/20110410000854/http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110322/dst11032203050008-n2.htm

2)https://japan.techinsight.jp/2011/03/221000braune_earthquake_resilience_nuclear_economy.html 

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