トランスジェンダーと呼ばれる「私」①

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私は、出生時に女性という性を割り当てられたが、男性という性自認をもつ。こんな私のことを、世間は「トランスジェンダー男性」と呼ぶらしい。

私は、自分ができるだけ安心して日常生活をおくるために、日々カミングアウトを繰り返している。道端で会った人でもない限り、関係性を築く可能性があるほとんどの人には、自分がトランスジェンダーであることを伝えているのだ。

そんな私は、ときどき初対面の人に「トランスジェンダーの一人として」の意見を突然求められたりする。また、トランスジェンダーとしての私に興味を持った結果として、「女子の気持ちもわかるなんて羨ましい」「男の方がいいなと思ったから、男になりたいの?」などと言ってくる人もいる。正直、毎度毎度こうした相手の発言に対して丁寧に「違うのだ」ということを説明するのは、面倒だと感じてしまったりする。一方で、なぜかわざわざ私の辛い話を聞きたがる人もいる。性別に悩み、苦しみ、その差別や社会的障壁を乗り越えて東京大学に入学したというような、「感動のストーリー」が聞きたいのだろうか。

周りの当事者の友人の中には、自分の経験を話したり、「LGBTQ+としての」意見を求められたりすることはおかしいと明言する人もいる。「私はあなたの先生じゃない!って思う」という友人の言葉は、もっともだと思う。しかし私自身、人から学ぶということが好きだし、私との出会いや時間を通して、誰かが学んでくれること自体は嫌ではない。むしろ嬉しいとも思う。それに、トランスジェンダーというアイデンティティにも誇りを持っている。トランスジェンダーだからこそ経験したことがあるし、それなしには、今の私の価値観も人生も存在しなかった。
それでもときどき叫びたくなる。トランスジェンダーである前に私は私なのだ、と。

 

私は今年、胸の手術を予定している。その後、男性ホルモンの注射をうち始めるかもしれない。そうしたら私を取り巻く環境はまた変化する。だからこそ今、私のボイスをここにとどめておきたいと思う。未来の自分に向けて、また私のボイスから誰かが何かしらを感じ取ってくれることを願って。書きたいことはたくさんあるので、連載という形で続けられたらいいなと思っている。トランスジェンダーと呼ばれる、「私」について。お付き合いいただければ嬉しい限りです。

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