およそ1年前となる2020年1月に、研究室訪問のため、インド・コルカタを訪れた。そこで心に残ったことについて書こうと思う。
それは、どんな国でも、どんな状況でも、「人々の日常がそこにある」ということだった。
海外旅行の観光スポットに行き、観光客向けのホテルに泊まり、日本人の仲間と過ごす。それも面白い。
でも、気づいたら私はもっと別のことに楽しみを見出すようになっていた。海外旅行では経験できないような人々の暮らしにどっぷり浸かるのが好きになっていった。
今回のインド訪問では、研究の他、スタッフの方に色々なところに連れて行ってもらった。
トタンの家。大量の自動車とオートバイ。
線路の上に干してある洗濯物。唐突に顔を覗かせる牛。
地面の上に常温でむき出しのまま置いてある売り物の野菜。
そこには確かにコルカタの人々の「日常の暮らし」があった。
滞在中、短い時間だったが、マザーハウスでのボランティアに参加した。
マザーハウスとは、カトリック教会の修道士マザー・テレサが、1952年に路上やスラムで亡くなりかけている人たちを救うために開設した施設である。
私は、Prem Dam と呼ばれる高齢男女の入居する施設でお手伝いをすることになった(カバー画像はその概観)。
水汲みに始まり、おばあちゃんたちにマニキュアや保湿クリームを塗ったり、お茶の時間にはチャイを配って食器を洗ったり、移動の手伝いをしたりした。
おばあちゃんたちはとても可愛かった。
私が目の前を通るだけで笑って、椅子から転げ落ちちゃうようなおばあちゃんや、言葉は通じないけれど一生懸命話しかけてくれたり、ニコニコしながら顔を触ってくれたおばあちゃんがいた。
この施設に着くまでにスラム街を通った。線路の上で生活をしているようだった。「ハロー!ハロー!チョコレート!チョコレート!」と子どもたちから食べ物をねだられた。
その後、ガンジス川を見に行った。
人々の宗教と暮らしを支える大きな存在を肌で感じた。
別の日には、また別のスラムを訪れた。
特有の匂いを感じた一方、人々は楽しそうに娯楽を楽しんでいた。
そこにあったのは「日常の暮らし」だった。
実のことをいうとコルカタに到着してからの数日間は、日本にいたときにイメージしていたインドを、見る景色の中から探してしまっていた。
そんな時「インドには感染症、スラム街、病院以外にもたくさんの素晴らしい場所があります。次回は、私たちの incredible India を見にきてください。」と研究室の先生に言われてハッとした。
インドはとても広い。私はまだそのほんの一部を覗き見したにすぎない。
私は「日常の暮らし」を見るのが大好きだ。これはおそらく一生変わらない。
これからもそのワクワク感とそこで暮らす人々への敬意を大切にしながら、
たくさんのことを自分で見聞きし、自分の心で感じたい。
またいつか、incredible India を訪れることを楽しみに、今この記事を書いている。
神奈川県出身。東京大学医学部医学科在籍。世界中の子どもたちが生まれてきて良かったと思える世界の実現に向けて勉強中。