UNICEFネパール事務所訪問 ユースディスカッション

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このたび、VoYJメンバーは、UNICEFネパール事務所を訪問し、国連でトレーニングをしているネパールのユースとのディスカッションやフィールド訪問をさせていただくという機会をいただきました。VoYJでは訪問の様子をシリーズでご紹介していきます。

UNICEFネパール事務所は、すべての子どもたちの権利を実現するため、過去50年間活動してきました。その過程で実施するプログラムの内容も変化を遂げてきました。初期の活動では、子どもたちの生存やインフラ整備を重視していたのですが、80年代には、女性のエンパワメントと自立にも力を入れるように。90年代には、プログラムが郡レベルで実施されるようになり、2000年代初頭には最も脆弱な子どもたちへの支援と武力紛争の影響を受けた子どもたちの社会復帰に力を入れてきました。2015年に起きた大地震以降は、緊急援助と復興支援にも取り組んできました。現在はすべての子どもたちへの包摂的かつ公平で質の高い教育の提供に力を入れる教育分野の他、保健、栄養、水と衛生、子どもの保護等の分野で他の政府機関や各国政府、NGOなどのパートナーとともに活動を行っています。

そんな背景を持つUNICEFネパール事務所を訪問し、同世代のネパールの若者たちとのディスカッションをする機会を得ましたので、ご報告したいと思います。

 

今回のディスカッションには、お仕事でお忙しい中、国連でトレーニングをしている5名の研修生にお集まりいただくことができました。みなさんは国連児童基金(UNICEF)、国連開発計画(UNDP)、国連資本開発基金(UNCDF)、国連常駐調整官事務所(UNRCO)の各部門に所属しており、同時に大学院修士課程に所属している学生もいました。とても優秀で素敵な性格の持ち主だったので、一人一人紹介したいと思います。

 

 

 

 

  1. Gyanu B Kさん

ネパールのトリブパン大学の英文学修士課程を終え、1月からUNICEFのコミュニケーション部でトレーニングをしています。彼女は、ネパール社会でダリットと呼ばれる歴史的に「不可触民」として抑圧されてきたグループに属しています。ダリットに所属する女性として育つ過程で、多くの女性が適切な教育を受けることができず、機会を奪われていることを目の当たりにしてきました。ここ数年、彼女は若者の権利を守り促進する団体Youth Advocacy Nepal (YAN)に所属し、同じユースと活動する機会を得たり、学校で英語や社会科の教鞭を取ったりしてきました。それらの経験を生かし、現在国連児童基金(UNICEF)の活動に尽力しています。

 

 

  1. Oshin Raiさん

心理学の修士課程に在籍しながら、現在は国連開発計画(UNDP)のGovernance and Inclusive Economic Growth Unit(ガバナンス・包括的経済成長ユニット)でトレーニングをしています。彼女は、ジャナジャティと呼ばれる先住民グループの中間層に生まれたそうです。彼女は、14歳の頃から村で高齢者を対象としたボランティア活動を始めたり、2008年の総選挙の際には選挙ボランティアとしても活動しました。また学校で補助教員を経験し、女性コミュニティヘルスワーカーとして政府から供給される薬を配布する活動にも従事しました。それらの経験を通して現在国連開発計画(UNDP)の活動に参画しています。

 

 

  1. Basant Kumar Chaudharyさん

ネパールの首都・カトマンズから600kmほど離れたカイラリ郡出身で、主要な職業が伝統農業であるタル族(上記、Oshinさんと同じジャナジャティと呼ばれる先住民グループの1つ)に属しています。彼は金融の専門で経営学の修士号を取得し、会計士として働いた経験を生かし、国連資本開発基金(UNCDF)でトレーニングを行なっています。

 

 

  1. Amit Kumar Bariさん

彼はタライ平野西部のカピルバツ出身です。子どもの権利を守り促進するグループで活動したり、高校生の時には地元の仏教寺院をプロモーションする地元のグループで活動したりしました。その他、Family Planning Association of Nepal (FPAN) でユースが性と生殖に関する健康やHIV/エイズに関する正しい知識を得るための活動もしてきました。その後、インドに渡り、家庭教師や一般事務の勤務経験を積みました。現在経営学の修士課程に在籍しながら、国連開発計画(UNDP)のファイナンスと調達部署にてトレーニングを積んでいます。

 

 

  1. Roshani Gahatrajさん

彼女はCreative Peace Volunteers Clubで活動したり、監査法人で研修員として勤務したりしてきました。それらの活動を通して、彼女は新しいコミュニティに出会い、多様な文化背景を持つ人と働く経験を積みました。それらの経験を生かして、現在は経営学の修士課程に在籍しながら国連常駐調整官事務所(UNRCO)でトレーニングを行っています。

 

 

私たちが事務所に到着すると、青いスカーフをかけて歓迎していただきました。

 

簡単な自己紹介の後、私たちの興味関心がネパールの教育制度や教育格差についてであったため、日本との比較なども含めて様々な問題点を話し合いました。

 

まず、公立学校と私立学校の学費や教育の質の違いなどについてネパールの現状を説明してもらいました。ネパールでは、公教育は学費が無償なものの教育の質が低いと思われており、ネパール国内の多くを占める貧困層や中間層が質の高い教育にアクセスできないという問題提起がありました。UN Traineesの皆さんは、中間層の出身だったこともあり、実体験をもとに、何を学びたいかではなく、家がどの程度教育費を捻出できるかで学校を選ばなくてはならないという現状を教えてもらいました。その時の経済状況を鑑みながら通える学校を探すため、また兄弟の何番目に生まれたかによって、兄弟とは違った教育経験を積むことになります。例えば4人の兄弟がいるOshinさんは、一番上のお姉さんは最初私立の学校に通っていましたが、のちに学費を支払うことが困難となったため公立の学校に転校しなければならなかったと聞きました。

 

また、医療についても同様のことが言えるという指摘もありました。政府の運営する病院では、医療費は安い一方、待ち時間が長かったり、私立病院に比べて設備が不足したりする現状があり、多くの人は病気になったら先ずは自宅で安静にし、どうしても我慢ができなくなって初めてお医者さんにかかるといったことが行われているそうです。

 

またジェンダーによる受けられる教育の格差についても話題に上がりました。ネパールでは、女の子は家事をこなすことができれば良い旦那さんとめぐり合うことができ、それがサクセスストーリーだと考えている人が多いと聞きました。(最近は国内のキャンペーンやプログラムの成果もあり、こうした考えを持つ人が減ってきているとも伺いました。)Gyanuさんは、学校に通いながら、洗濯や料理等の家事をこなす学生生活を送ったと言います。時には、家事をこなすことで精一杯となり、宿題を終わらすことが困難なこともあったことから、他の人より頑張らなければならないと感じることが多かったと教えてくれました。

 

運よく中等教育を修了できたとしても、大学や大学院修士課程といった高等教育に進むことは経済的には難しく、UN Traineesの皆さんは何らかの形で家族のサポートを得ながら、キャリアを追求していることがわかりました。また国連でのトレーニングは、大学や大学院で勉強したことを生かすことができて成長の場になっているということを伺いました。特にたくさんの仕事を同時に抱えた時のタイムマネジメントをはじめ、フレキシビリティーやリーダーシップなどのスキルを磨くことができたと話していました。プロジェクトを国連や世界の流れに位置付け俯瞰しながら、ローカルレベルで利益を受けている人の両方を見ることができるのは貴重な経験で、夢が叶ったと言っている研修生の方もいました。

また、VoYJメンバーからは日本でのユースの活動として、EMPOWER Projectやボイス・オブ・ユース JAPANやの活動について説明し、意見交換をしました。

 

EMPOWER Project(https://voiceofyouth.jp/archives/263)は、協力したい人が協力したい気持ちを表すマークをつけることで、協力者カミングアウトを推進する取り組みです。

ネパールの方も日本人の多くと同じように恥ずかしがり屋なところがあり、協力してほしいけれど声をかけられない場合や、能力や気持ちは十分にあるものの声をかけづらい場合に直面することがあるそうです。そうした場合に協力し合いのコミュニケーションが生まれる方法としてとても有効だとコメントをもらいました。加えて、ネパールでは、障がいのある方は教育や医療、インフラへのアクセスが十分でなく、個人同士で助け合いが解決できる問題に関しては、このマークが大いに役立つだろうと教えていただきました。一方で、このプロジェクトでは、障がいの有無や属性にレッテルを張るのではなく、協力する気持ちを表明するかどうかであるため、どんな人であっても誰かのヒーローになれる、という点を大変気に入ってもらえました。

 

ボイス・オブ・ユース JAPANに関しては、若者が声をあげる重要性について再確認し、話し合うことができました。例えば、ネパールでは多くの地域で月経中の女性は不浄とみなされており、女性が生理について話すことはタブーであると教えてもらいました。女性の健康に大切なことであり、もどかしさを感じることもあるようです。ユースが何を考えているかを伝える時、ネパールではソーシャルメディアを使うことが多いですが、それは友達登録した人にしか届けることができないけれど、VoYJのようなオンラインプラットフォームでは、ある分野の権威や広くいろんな方に声を届けることができるかもしれないと力強いコメントももらいました。発信する人の自信になることに加え、ユースが何を考えているか、どんな問題を抱えているのかを知り、イノベーションが生まれるきっかけになりそうだという意見をもらいました。

 

議論が盛り上がり当初の予定していた1時間では収まりきらないほどで、非常に有意義な時間でした。今回は本当にありがとうございました。

 

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