サラヤ株式会社 代島裕世取締役【後編】

サラヤ株式会社 代島裕世 取締役(ウガンダの工場にて)
インタビュー
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手洗い石けんで知られる日本の民間企業・サラヤさんは、日本の消費者のみなさんと「100万人の手洗いプロジェクト」をウガンダで実施しています。前編に引き続き、今回はプロジェクトが及ぼした影響や社会課題に対するサラヤさんの姿勢について伺いました。

– 企業として社会課題に取り組むということは、どういうことを意味するのでしょうか?

NPO、NGOは社会課題を見つけることに長けていると思います。ただ、何を解決するにも必ずお金が必要ですが、そのような団体は寄付やファンドレイジング(資金調達)で活動していますよね。寄付だけに頼り続けるのは脆弱。一方、企業は、ビジネスで解決しようとする。社会問題を解決するためのビジネスは生き残ることができますから。もともとビジネスというものはそういうものだと思います。

SDGsの社会課題も、元はビジネスが引き起こしてきたものが多いのです。貧困は、搾取のビジネスモデルから起きてしまったものかもしれない。熱帯雨林の伐採も。ビジネスが引き起こしてきた問題をNPOやNGOがアドボカシーするのも大事ですが、やはり活動資金が必要です。その資金を自らつくり出せるのが企業。日本には、良いことをしていても陰でやるという文化がありました。今は自社の活動をステークホルダーに報告して、社会課題を解決する企業が投資家からの資金も集められる、そういう時代になってきています。

サラヤがそうした活動を始めた頃、CSR(企業の社会的責任)、MDGs(ミレニアム開発目標)など新しいキーワードが出てきました。今はSDGs(持続可能な開発目標)いう枠組みに当てはめ、指針にして、事業計画を立てるという会社になってきている。思い返せば、2009年まではそんなことを考えてはいませんでした。ウガンダ支援を始める前に、ボルネオの熱帯雨林の破壊、生物多様性の損失を目の当たりにしたのですが、その時に、これからは社会課題の解決をしないと企業は生き残れないと思いました。ちょうどその頃に新型インフルエンザが流行してサラヤとしてやらなければならないことが見えてきたのでした。

– このプロジェクトによってどんな変化が起こりましたか?

ユニセフへの支援を始めたことによって生まれたソーシャルビジネスもあります。ウガンダでは、「100万人の手洗いプロジェクト」と「病院で手の消毒100パーセントプロジェクト」(院内感染を無くすために、アルコール手指消毒剤の現地生産および普及に取り組むプロジェクト)の2つを行なっているのですが、それらは両輪をなしています。

「100万人の手洗いプロジェクト」はチャリティー。その活動をきっかけにウガンダに入って、ウガンダに現地工場をつくり、院内感染を防ぐプロジェクトを今度はソーシャルビジネスとして実施する。あくまでもビジネスで、サラヤのやり方はチャリティーとビジネスを同時に走らせることで、途上国の社会課題に対してアプローチすることなのです。

「100万人の手洗いプロジェクト」がなければその後実現できなかったビジネスのプログラムがあって、どちらかに偏っているのではなく、両方がバランスして並列に走っているというのが私たちなりのやり方です。

– 社会貢献を通じてサラヤを応援したいと思う消費者は増えたはずです。社員のみなさんにはどのような影響がありましたか?

社員も、ステークホルダーとして重要です。まず、社員の満足度が上がりましたし、採用活動にも良い影響がありました。サラヤは、日本で初めて薬用石鹸を作ったものの、大阪の中小企業で、日本でほとんど知られていなかったのが、こういう活動で知られるようになって、働いている社員が誇りを持って働けるようになった。現在では社内のコミュニケーションにも力を入れています。サラヤはもともとファミリービジネスで、更家さんという社長自らが様々なことに取り組んでいて、社内に対する情報発信もトップコミットメントとして行っているのです。社長がこれを率いているということが大事ですね。

– 最後にユースへのメッセージを一言お願いします!

私が社会課題を実際に目にしたのは40歳を過ぎてから。現場に行くのが早ければ早いほどいい気がしました。身の安全を確保した上で、できるだけ早い時に社会課題が起きている現場に行くのが良いと考えています。聞くより早い。見るのが一番早い。今後の人生を左右するきっかけになると思います。

現代の課題は、日本という枠組みに収まらないものばかり。読者のみなさんが連携して、こういうことに関心を持って、現場に行って実際に見てきて欲しいです。きっと、背景にある社会課題が見えてくると思います。

前編・後編に渡ってインタビューの様子をお送りしてきましたが、いかがでしたか?NGOや国際機関の他にも、民間企業が本業で世界の社会課題に取り組むという関わり方についてお話を伺えたのは新鮮でした。代島さま、ありがとうございました!


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VoYJ代表。神奈川県出身。東京大学医学部医学科在籍。幼い頃海外で暮らして以来海外旅行が大好き。世界中の子どもたちが笑顔でいられるようにするという大きい目標に向けて勉強中。