許すということ

文化/芸術
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許すということ。それはどういうことなのか。私は物心ついた頃からことあるごとに考えているような気がします。

そのきっかけを与えてくれたのは、私が初めてちゃんと読んだ本でした。その本は、『妖界ナビ・ルナ』という小説でした。小学生の時に読んだ本なのですが、不思議なもので初めて読んだ本というのは、今でも鮮明に覚えているものですね。主人公のルナは優しくて、でも絶対に自分の意志を貫く強い女の子です。当時の私は、「そんな女の子になりたい!」とルナに憧れていました。

この小説の一つのテーマが「許すこと」だと私は思っています。主人公のルナは何があっても許せる心を持とうとするのです。この小説を読んでから、私は「許すこと」について考え始めました。当時の私はルナのように何でも許せる心を持ちたいと思っていましたが、嫌なことがあると許す気になれず、自分の心の狭さにすごく落ち込んでいました。

中学生、高校生になった私もなかなか「許す」ということが何なのかよくわかりませんでした。もしも私の筆箱を盗んだ人がいたとしたら。その人を許すということは、筆箱を盗まれても自分の悲しみや怒りを押し殺して「いいよー、大丈夫」と笑顔で言うことなのか。いや、そこは単純に怒った方がその人のためだし、感情を偽るのは違うだろう。そんなようなことを考えていました。そもそもルナは心から人を許しているわけで、私は怒りを感じてしまった時点で感情を取り繕っても許すことはできないのではないか。そう思って、「やっぱり自分の心は狭いなあ」と自己嫌悪に陥っていました。

しかし、大学生になった私はなんとなく「許す」ということについて、自分なりにわかり始めた気がしています。「許す」とは、相手がその言動に至った経緯、相手の考えをしっかり理解しようと心掛けた上で、自分の感情や考えも考慮して、自分が次に取るべき言動を考えるということだと私は考えています。例えば、私が筆箱を誰かに盗まれたとしたら。そのことに対して、自分が怒り悲しんでいるという事実、その人と自分の価値観の違い、その人自体が抱えている問題、自分にも悪いところはなかったのか。その全てを考慮したうえで、自分は何をすべきなのかを考えることが、「許す」ということなのかなと今では思っています。

私がこう考え始めたのは、大学生になって、自分とは異なるバックグラウンドや価値観を持った、多様な人々と出会えたからだと思います。自分にとっての当たり前が、当たり前ではない世界にきたなあと感じています。

これが正解なのかはわかりません。これからもずっと「許す」ことについて考えていきたいと思います。私は何かを許そうとしているとき、少しだけ大人な自分になれる気がするのです。一方的に感情をさらけ出すのでも、感情を押し殺すのでもなく、少しでも人のことを理解しよう、相手を受け入れようと思えるのです。

「許す」ということは本当に難しいと感じています。つい感情的になってしまうこともあります。嫌なことがあって落ち込むこともあります。そんな自分もちゃんと許せたらなあと思います。

また、私は初めて読んだ本がこんなにも自分に影響を与えていることに少し驚いています。これからも本との出会いを大切に、いろいろと考えていきたいです。みなさんも素敵な本と出会えるといいですね!

最後まで読んでくださってありがとうございました!


 

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