秋田で知った、本当の豊かさ

VoY全国駅伝
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人口減少、ワースト1位。少子高齢化、ワースト1位。2020年には四年連続で自殺死亡率もワースト1位を更新した。電車もバスも1時間に1本。家の近くでは熊が出る。とんでもない地だ。4年間、暮らしていけるだろうか―。

東京生まれ東京育ちの私は大学進学を機に、ひとりで秋田にやってきた。知り合いはゼロ。それでも、留学生とともに学ぶ大学に魅力を感じた。しかし、入学早々何もない秋田に不安を感じていた。

「ファームステイをしませんか?」大学からのお知らせが届いた。このメールが、私の秋田に対する考え方を大きく変えてくれた。農家の夫婦のお家に泊まって、その様子を発信するプログラム。お家ではきりたんぽを作ったり、干し柿を食べたり、秋田の農家の生活を体験できるらしい。キャンパスにいるよりは楽しそうだ。そう思った私はふたりの友人とともにその企画に参加することにした。

初めて雪が降った11月の日。大学の授業を終えた私たちは、バスと電車に2時間弱揺られて大館駅に向かった。雪がどんどん激しくなり、秋田での初めての雪の激しさに驚きつつ、駅に到着。農家の「お父さん」が駅まで迎えに来てくれた。「大館へようこそ!」はじける笑顔で出迎えてくれた。お父さんの車に揺られ、お家へ行く。辺りは見渡すかぎり田んぼだった。雪の降る田んぼは格別だ。これから始まる2泊3日の旅に胸を躍らせた。そして、お家に到着。「お母さん」が待っていた。この時、みんなで写した写真は宝物だ。

メインイベントのきりたんぽ作り。お父さんたちが田んぼで作ったお米で作る。まず米をばちに入れて潰す。半殺しというそうだ。そして、棒につけて囲炉裏で焼く。鍋ができるまで時間がある。きりたんぽをそのままでも食べてみたかったので、食べた。秋田のお米の底力を感じる美味しさだった。そして、比内地鶏の鍋ができた。なにより、食べ物を育てた人の顔が見える料理の美味しさと言ったらこの上ない。

鍋の後は、お父さんとお母さんが地域伝統の酒こし舞を披露してくれた。優雅な動きに目を奪われた。次の日も、温泉に行ったり、大館で有名な駅弁を食べたり、習字をしたり。(お父さんは習字の先生だった。)とにかく充実した3日間だった。

私は、秋田が寂しい場所だと思っていた自分を責めた。寂しかったのは自分の心だ。ゆかりのない土地に来て、心細かったのかもしれない。そしてその心の隙間を、秋田に「なにもない」せいにしていた気がする。そうじゃなかったのだ。「なにもない」んじゃなくて、自分が楽しいことを見つけようともしていなかったのだ。

私はこの日を境に秋田で様々な挑戦を始めた。稲刈り、茅葺屋根の修理のお手伝い、雪かき、牧場のお手伝い。畑の手伝いでにんにくを植えたこともある。グローバルを求めてやってきた秋田だったけれど、今はローカルの良さにすっかり夢中になってしまった。予定していた留学はコロナで中止になってしまったけれど、ローカル、日本の良さを存分に楽しんで吸収してから海外に行こう。私はそう決心している。


 

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