渋谷再開発 —— インクルーシブな都市づくりは可能か。

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多様性のある社会はどう実現できるのか。

若い人も老いた人も、お金のある人もない人も、マジョリティもマイノリティも、誰もが心地よさとわくわくする気持ちを享受できる社会はどのようにつくることができるのか。

この記事では、渋谷の新たな商業施設「MIYASHITA PARK」をもとにインクルーシブな都市について考えます。

 

MIYASHITA PARK 完成

MIYASHITA PARK外観

2020年7月、渋谷駅のほとんど目の前に「MIYASHITA PARK」が開業しました。渋谷区立宮下公園と三井不動産の商業施設 RAYARD MIYASHITA PARK が一体となった複合型施設です。コロナの影響で1ヶ月遅れてのオープンでした。

 

進む渋谷の再開発

MIYASHITA PARKを一目見たとき、様々な文化が溶け合う街「渋谷」を体現した施設かもしれない、と興奮を覚えました。建物は横に長いつくりで周囲の高層ビルと比べて高さがなく(4階建て!)、1階に屋台風の飲食テナントがあるなど開放的なデザインで、街と建物が一続きになっているかのようなカジュアルさがあります。渋谷駅周辺はスクランブルスクエアといった東急不動産の商業ビル群が立ち並び「洗練された大人の街」へ変革しているような印象があったのですが、このMIYASHITA PARKには敷居の低さを感じました。幅広い層の人が生きる、雑然たる渋谷に溶け込もうとしているかもしれないと。

スクランブルスクエア。渋谷駅前の高層ビル。

 

誰のためのMIYASHITA PARKか?

しかし、実際に施設の中を散策したりネット上で「宮下公園」について調べたりすると、この施設が決して渋谷に溶け込んだものではないことに気が付きました。この施設はいったい誰のためのものなのでしょうか。

まず気になったのは、入居するテナントのターゲット層です。飲食店などに混ざってLOUIS VUITTONやGUCCIといった高級ブランドが入っており、これらのテナントのターゲット層が偏っていることは否めません。

そして何より知っておくべきだと感じたのは、この場所の再開発の歴史です。ここではかつて多数のホームレスが居住しており、再開発の歴史はホームレス排除の歴史でもあったのです。

はじめてホームレスの立ち退きが取り沙汰されたのは2009年ごろでした。このときはスポーツ用品メーカーのナイキジャパンが公園の命名権を買い取って改修する計画だったものの、ホームレス強制排除などに対する市民の反対運動があり、最終的にナイキは「宮下ナイキパーク」とすることを断念し手を引きました。しかし再開発自体は進められ、夜間の公園閉鎖、ホームレス避けのフェンス設置などが行われていきました。三井不動産が新たな事業者として選ばれたのは2015年で、そこから現在の複合型施設完成に至るということです。

(参考:https://news.yahoo.co.jp/articles/4c30cd852a857e577c46141ae43a8f72132018ce?page=1https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ミヤシタパーク#宮下公園

 

インクルーシブな社会を目指して

再開発により、この地区の治安は改善し、新しい商業施設が生まれ、見違える姿に生まれ変わりました。その一方で、再開発によって排除された人々がいるかもしれないこと、再開発の恩恵を受けているのは一部の人々だけかもしれないということは、表立って取り上げられません。

私は、誰もが生きやすさを感じるインクルーシブな社会の実現は、一つひとつの街がインクルーシブでないことには成し遂げられないと思っています。再開発は地価を上げますが、経済性だけでは測れない「都市の価値」を真に上げるにはどうすればいいのか、問い続けることが求められています。

 


 

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