違いの壁を超えて、対話し続けた3週間

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昨年の夏、私は”AIG高校生外交官渡米プログラム”、通称HSD U.S.に参加しました。HSD U.S.は日本人高校生40名が高校生外交官として渡米し、現地の政治・経済・文化等に対する理解を深めると共に、米国の高校生と共同生活を送るプログラムです。

http://www.highschooldiplomats.org/contents/us-hsd.html

幼い頃から英語が大好きで、将来国際協力に関わる仕事をしたいという目標を持つ私は、アメリカの高校生と交流できることをとても楽しみに、渡米しました。この記事では、3週間のプログラムの中で特に心に残っている思い出について、書いてみたいと思います。

 

現地ではアメリカの高校生40人と合流し、10日間プリンストン大学の寮で共同生活を送るという経験もしました。世界トップクラスの大学で講義を受け議論を繰り返す、私にとって夢のような時間でした。

授業は、日本のように教壇の先生が講義し、生徒がノートを取りながら聞くというスタイルでは一切なく、ディスカッションが中心でした。一番印象に残っているのは、人種差別がテーマの授業です。様々なバックグラウンドを持つ人々が共に暮らすアメリカでは、歴史上、人種や民族の違いを引き金とする数多くの対立が起こってきました。その影響は、現代のアメリカ社会にも暗い影を落としており、いまだに少数者であることを理由に、差別を受ける人々が少なくないという現状があるのだそうです。アメリカの歴史や現状を学んだ後、私たちも、それぞれの人種差別に対する考えについて、ディスカッションを行いました。その中でも、アフリカ系アメリカ人の女の子の、

「肌の色を見ただけで”差別がないよう配慮してあげなくてはいけない種類の人間”だと思われることが差別だと感じる」

という発言を聞いて、衝撃を受けました。配慮することが差別になるとは思いもよらなかったからです。しかし対話を重ねるうちに、彼女の発言には、外見のみを理由に過度な特別扱いをされたくないという思いが込められていたことを知りました。それと同時に、これまで”差別”というものに対して深く考えずに行動してきた自分自身を反省しました。

また、学生寮での共同生活からは、私自身も見かけや第一印象のみに基づいて、一方的に相手の像を作り上げていたことに気づかされました。10日間同室だったビクトリアは、モデルも経験したことのあるスポーツの大好きな女の子でした。プログラム開始前に送られてきたインスタグラムの、スタイル抜群で堂々とポーズする彼女の写真。読書などインドアな趣味を持つ私とは対照的に見えたため、”10日間も何を話せば良いのだろう”、”仲良くなれないかもしれない”と不安でたまりませんでした。

 

ところが、実際の彼女は、とても細やかな気配りのできる優しい女の子だったのです。私が議論の場で発言できずに落ち込んでいると、励ましの言葉をかけ、部屋に戻ってから、「自分の意見を口に出してみればいい。完璧な英語じゃなくても大丈夫」などと、的確なアドバイスをくれました。そんな彼女の優しさを感じるうちに私は、根拠のない先入観でビクトリアの性格さえをも決めつけていた自分自身が恥ずかしくなりました。

 

さて、アメリカ滞在中は、政治機関・企業などへの訪問、ハロウィンパーティやよさこい披露といった日米文化交流など、貴重な経験を多く積むことができました。しかし何よりも、高校生外交官が3週間熱い議論をし続けたことこそ、このプログラムの最大の意義なのだと思います。自分の考えをはっきりと述べ、互いに異なる価値観を認め合うことで、思考が深まっていくのです。当初は、頭の中で英文を考えているうちに議論が進んでしまい、何度ももどかしい思いをした私でしたが、いつのまにか英語で意見を交換する楽しさに夢中になっていました。また、正直な思いをぶつけ合うことで、高校生外交官80人の間にも属性を超えた強い友情が育まれていきました。

 

 肌の色が何色でも、共通点が全くないように思えたとしても、互いに気持ちを伝え合うことで、心を通わせることができる。

 

これは、私がプログラムを通して得た、もっとも大切な気づきです。私はこの先、ビクトリアをはじめ、79人の仲間と笑い、学び考え、切磋琢磨した3週間を忘れることはないでしょう。この経験を糧に、私はこれからも、国際協力に携わるという夢に向かって歩んでいきます。


 

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