マイうつ #2:眠い。

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僕なりのうつとの向き合い方、マイうつ。本日は僕の天敵、眠気についてご紹介。

うつと診断されるまでに、様々な症状を経験しました。象でも背中に乗ってるのかなってくらい体が重い、人と話している時に言葉が出てこない、記憶力がすこぶる落ちて思い出すのに時間がかかる、などなど。診断を受けた後も症状はずるずる引きずっていて、それぞれの症状にエピソードがあります。

そんな様々な症状の中でも、僕にとっての天敵は、眠気。

眠い。とにかく眠すぎる。本当に眠い。

うつ病は睡眠障害を併発することが多いそうです。うつと聞いた時に、「眠れない」「気づいたら朝を迎えてしまう」といった不眠を思い浮かべる方もいるかも知れません。僕の場合、眠れなくなることもあるのですが、特に顕著なのは「過眠」です。寝過ぎてしまう。その上、いくら寝ても寝足りない。唐揚げ丼をかき込んだ後の5時間目に感じるちょっとした眠気とは違う。大蛇です。僕の身体にぐるぐると巻きつき、これでもかと言わんばかりに締め付ける。気絶してしまいそうな眠気。入院前の記憶は朧げと以前書きましたが、「とにかく眠い」という感覚は入院前から今に至るまで続いています。

入院前は、朝起きて着替えた後に玄関で横になり、アラームをかけた携帯を胸に置いて20分ほど寝てから家を飛び出す毎日でした。大英博物館とかに置いてありそうなエジプトのミイラを思い出してください。胸の辺りで手を組んでいるやつ。あいつです。玄関で靴を履いて、膝だけ折り曲げて眠りこける。ピピピと携帯が鳴るとガバッと起き上がって、リュックを背負いドアを開け、社会になだれこむ。ミイラの襲撃。まさにハムナプトラ。

ハムナプトラした後も、一度鎌首をもたげた眠気は僕を許してはくれません。家からバス停までは人通りの少ない道なので、目を瞑って歩きます。そうすると少しばかり眠気が和らぐのです。「寝ながら歩く」、そんなイメージ。歩きながら倒れ込みそうになることも、幾度となくありました。

バスと電車では爆睡。確実に座れるよう、数本電車を逃して列の最前に躍り出るタイミングを待ちます。ドアが開いたら端の席に直行。横に仕切りがあるので、存分に寄りかかって眠れるのです。運悪く座ることができなかった時は、吊り革に掴まっている腕に頭を乗せて寝ます。隣の方、スミマセン。

職場の最寄り駅に着いたら、人にぶつからない範囲で「寝ながら歩き」を発動。職場に着くのは始業の15分前。一目散に向かうのはデスクではなく、トイレです。崩れ落ちるように個室に入ると、トイレットペーパーがぶら下がっているラックに額を乗せて10分睡眠。始業5分前になったらデスクに駆け込み仕事を始める。

昼休みは貴重な睡眠時間です。昼休みの合図となる放送が耳に入ると、一目散に仮眠室へ直行。50分ほどベッドで横になる。残り20分、残り15分… と少しずつ減っていく時間にソワソワしながら、しがみつくように眠ります。

終業して家に着くと、怒涛の晩酌。今思えば、アルコールを適量に抑えられない自分の弱さは過眠をエスカレートさせる要因でした。近所のコンビニでワインボトルを買い込み、1本丸々飲み干してすっからかんにしてから布団に倒れ込む。目覚まし時計が告げる朝に絶望しながら、干からびた顔でハムナプトラ……。

こんな日々を送り続けていました。職場で大好きな同期たちとすれ違っても、絞り切った雑巾のようなカスカスの声で「オー… オツカレエ…」と挨拶することしかできない。ほとんどの場合「大丈夫……??」の声が返ってきました。忙しい中僕を気遣ってくれた仲間たちに感謝。

とにかく疲れた。とにかく眠い。そんな感情に埋め尽くされる中で、じわじわと「死にたい」という感情が頭をもたげてくる。気づけば主治医の先生に「入院させてください」と電話を入れていたのです。



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