約4年前、私は韓国と日本の学生とのオンラインセッションに参加し、韓国と日本の歴史の捉え方について議論しました。シンガポールで育った私にとって、ニュースを見ていると、両国のなかにはいまだに、お互いに対して悪い印象を抱いている人がいることは不思議に思えました。韓国と同じように、シンガポールもかつて日本に占領されていましたが、私が知っているシンガポール人は日本に対して恨みを持っているという話を耳にすることはありません。学校のシンガポール人の先生や友人たちは、私をありのままに受け入れてくれました。シンガポールは、「過去の出来事を決して忘れず、二度と繰り返してはならない」という立場を取っていますが、それと同時に戦争について日本を許す姿勢も持っています。結局のところ、彼らが出会う現代の日本人のほとんどは戦争を経験していないからです。
私はこの考えをセッションで共有しました。許すことが対立を終わらせる鍵だという点では全員が同意しましたが、韓国の学生たちは「日本人は戦争について十分に知らない。当時何が起きたのかを理解し、苦痛をより深く知り、心から謝罪するべきだ」と述べました。
私は非常に混乱し、葛藤しましたが、日本人がわかっている範囲の真実を全体的に、客観的に見ない限り、許しは容易ではないという韓国の学生の意見には共感しました。このセッションのおかげで、私は物事を新しい視点から見ることができました。
戦時中日本軍によって占領されていた国々の人たちが、戦後の今、私たち日本人に求めているのは、彼らの歴史をなかったことにしないことなのだと思います。戦後の今、私たちには戦時責任がありません。ですが、戦後責任、つまり歴史と向き合う責任があります。
しかし、海外では、日本人は他国の歴史を知らないものだという印象があります1)。実際、現在、日本の中学校が社会科の一環として使用している歴史教科書では、第二次世界大戦の太平洋戦争に関する記述はわずか12ページに過ぎません2)。その中の3ページは第二次世界大戦時のヨーロッパの戦況を取り上げており、太平洋戦争とは全く無関係です。それに比べて、韓国やシンガポールが使用している歴史教科書では第二次世界大戦に関する記述が23ページほど含まれています。
実際に私が目にした日本の教科書『新しい社会歴史 [令和3年度](中学校社会科用 文部科学省検定済教科書)』では、第二次世界大戦についての記述は8ページしかありませんでした。最初の2ページは太平洋における第二次世界大戦ではなく、西側における第二次世界大戦に関するものでした。また次の数ページは、主に第二次世界大戦時の日米関係に関するものでした。こうした構成は、第二次世界大戦時の日本軍の行動の責任をドイツに転嫁し、日本はアメリカによる1945年の広島と長崎の原爆投下の犠牲者であることを強調しようとしている、と読み取られかねないものだと思います。このように、日本の教科書では第二次世界大戦について、韓国やシンガポールなどで期待されているほど詳しい記述を掲載しているわけではないといえます(詳しくは日本の教科書の著者の一人である家永三郎 “The Glorification of War in Japanese Education”3)や川崎哲の活動4)などをご覧ください)。
私はこれを変えていくべきだと思います。
歴史がどれだけ辛く、どれだけ残酷だとしても、日本は歴史と向き合えるということを世界に証明していくべきです。日本は他国の気持ちに寄り添えるということを示していくべきです。

プロジェクト「SEN(N)OU」は、「戦争」と「洗脳」を掛け合わせた由来があります。ひとつの歴史、特に戦争についての歴史からは、立場によって生まれてくる物語が異なるということを意識し、より多くの見方によって生まれた物語に触れる重要性を強調しています。「SEN(N)OU」は日本人が第二次世界大戦の歴史についてグローバルな視点を持ち、日本人としてのアイデンティティを真に見い出し、責任ある世界市民になるために私が1年前に立ち上げたプロジェクトです。日本人学生や教員、歴史のよりさまざまな物語、さまざまな解釈を共有することで、歴史を検証する大切さ、そして日本人として知らなければいけない歴史を広めています。歴史に留まらず、全てのことにおいてただただ与えられた情報を鵜呑みにするのではなく、話者による偏見や考え方により「事実」が変わるということに気づき、さまざまな物語、さまざまな解釈を学び続け、受け止め、問い続けることを広めたいです。
ウェブサイトはこちら:https://sen-n-ou.my.canva.site/sen-n-ou-japanese
1) Japan’s way of remembering World War II still infuriates its neighbours
2) The Japanese History Textbook issue – EDUCATION IN JAPAN COMMUNITY Blog
3) The Glorification of War in Japanese Education
4) Japan’s erasure of WWII history education is causing problems: Japanese peace-promoting activist – Global Times

高校2年生 17歳
日本生まれ、シンガポール育ち
ひとつの歴史、特に戦争についての歴史からは、立場によって生まれてくる物語が異なるということを意識し、より多くの見方によって生まれた物語に触れる重要性を強調するプロジェクト「SEN(N)OU」を実施しています。