人を惹きつける「平和活動」

引用元: ICAN. “ICAN NuclearBan Week - Vienna 2022,” ICAN, vienna.icanw.org/. Accessed 12 Nov. 2022.
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今回私がお伝えしたいことは、「平和活動」と「あなた」とを切り離さないでほしい、ということです。

 

今から12年前。それは、私がまだ一人で留守番をすることができなかった頃、母に連れられて、人混みの多い市内の商店街にて、核兵器廃絶の署名活動をしていた時のことです。母が声をかけ、街へ遊びに来ていたと思われる数人の女子高校生が少しだけ足を止めてくれました。しかし、「すみません。私、引っ越して家の住所が変わっちゃったんですよね。」「私も。あまり署名とかしたことないんで。」最初は話を聞いて少し興味を示してくれていたようでしたが、寒いという素振りを見せてマフラーに顔をうずめ、ポケットを手に入れたままの彼女たちは皆、苦い表情を浮かべていました。「誰か署名してくれる人はいる?」そう声をかけた母ですが、結局、誰1人として署名してくれることはなく、ポケットに手を入れたまま、黒いブーツを履いてスタスタと人混みに消えていってしまいました。高校生たちの後ろ姿を見て、私は幼いながらに少し寂しく残念な気持ちになったことを覚えています。それでも、署名を断られたことにめげる素振りは全く見せず、少し離れた地点で署名を集めていた仲間達とともに声を掛け合いながら活動に尽力する母の姿がありました。

この時、直感的に「若い人たちは、平和活動に対して興味を抱きにくい」「離れていってしまう」と、私は感じたのです。しかし、これに対して何も行動を起こすことなく、成長していきました。

 

そんな中、2021年8月。「“バイト” で平和をつなぐ」というNHKニュースの見出しに、私は衝撃を受けました。

皆さんはご存知でしたか。これまでタブーとされ、あまりクローズアップして語られてこなかった平和活動のリアルな金銭的な問題を。

今でこそ私も被爆3世の次世代として、平和活動の持続性の模索に従事し、様々な活動に参加してきたのですが、この記事と出会うまでは平和活動に関して使命感や責任感はなく、むしろ受け身の姿勢で授業などを受けていました。

記事には、財政難を乗り切るために平和ボランティアに報酬を発生させる仕組みを導入することで、持続的なNPOの平和活動を実現させるという広島の平和NPO団体の活動が書かれていました。さらに調べてみると、平和団体の財政難はそれだけにとどまらず、広島県原爆被害者団体協議会は、運営の難化から被爆2・3世からも会費を徴収しているというのです。また、読売新聞によると、栃木県原爆被害者協議会や長崎県被爆者手帳友愛会・石川県原爆被災者友の会などの団体が解散し、全国の平和団体が非常に厳しい財政難という局面を迎えているということでした。そして、これまで耳にタコができるほど受けてきた平和教育は、かけがえのない他者の努力の賜物であったことも、同時に痛感しました。

 

皆さんは、平和学習や平和教育・平和活動に対して、どのような印象を持っていますか。硬い、怖い、真面目、親近感がない。そんな方のほうが多いのではないでしょうか。

私は、持続可能で革新的なビジネスを展開し、世界中の若者やインフルエンサーを平和活動に巻き込み、解決していきたいと考えています。今年の前期、私はStanford Entrepreneurship programのオンラインでの履修を行い、実際、失われつつある被爆者との対話や証言を、アーティストがNFT Artsとして世界に発信し、そのマーケットで得られた利益を平和のNPO団体の基金とする、というビジネスの構想を最終レポートに書き上げました。また、ICANによって開催されたICAN NUCLEAR BAN FORUMでは、イベント終了後に会食パーティーが開かれ、600名以上もの人々が、ドリンクやアルコールを片手に、とてもフランクに「平和」について語り合える場が提供されました。そんな大規模なイベントの開催を日本で目指しているKNOW NUKES TOKYOという団体もあります。

 

このように、他分野のエンタメ要素を含んだアプローチにより、先述したような平和に対する堅苦しいイメージを払拭できるのではないでしょうか。

最後に、どうか「平和活動」と「あなた」とを関係ないと切り離さず、あなたの大切な人を思い浮かべながら、「平和」について少しでも考える時間を作っていただければと思います。


 

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