ワークショップ「ミュージカル・映像を支える音楽の力」に参加しました

イベント
+10

こんにちは。VoYJ事務局です。

 

今回は、2022年5月15日(日)の東京大学五月祭にて、ウォルト・ディズニー・ジャパンで数百におよぶCD、 コンサートなどの音楽コンテンツを世に送り出した安井訓三さん、子役時代からミュージカル「アニー」の主演に加え、劇団四季「ライオンキング」などにも出演されてきたほか、20年に渡り「キングダムハーツ」の主役声優をつとめる内田莉紗さんをお招きして行ったワークショップの内容を記事にしてお送りします!

ワークショップのテーマは、訳詞の世界を体験すること。三つのグループに分かれ、長編アニメーション「ヘラクレス」の本編では使用されることのなかった隠れた名曲「シューティング・スター」の英語詞の日本語訳に挑戦しました。グループワーク終了後には、それぞれの訳詞を使った内田さんによるスペシャル歌唱も!

「ヘラクレス」は、神の力を持ったまま人間界に追いやられたメインキャラクターが、神の世界に帰るため、本当のヒーローになることを目指す姿を描いた作品です。「ゴー・ザ・ディスタンス」などの曲をご存じの方も多いかもしれませんね。「シューティング・スター」は、人間の世界になじめずにいたヘラクレスが、自らと一つの流れ星を重ね合わせ、内面を吐露する切なくもとても美しい楽曲です。

英語の場合、一つの音符に一つの単語を乗せて歌うことができますが、ほとんどの音が母音を持つ日本語では、原則として一つの音符に一つの文字を対応させなければなりません。つまり、複数の音を使って、やっと一つの単語を伝えることができるのです。そのため、日本語詞を作ることは、英語詞の中から重要な要素を取り出しながら、日本語として美しく響くように、歌詞を再構成していく挑戦とも言えるでしょう。

作業を通して感じたのは、メロディーという制約がある中で、英語詞の持つ世界観を大切にしながら、日本語として自然な語彙・イントネーションでメッセージを伝えることの難しさでした。一方、そうしたプロセスによって、楽曲の持つリズムのパターンを理解したり、この作品の核となるメッセージを洗練させていく面白さを味わうこともできました。

三つのチームそれぞれが作った日本語詞は、どれも異なる視点が反映されたものでした。「シューティング・スター」という言葉をそのまま残すのか、あるいは、全てを日本語に訳すのか。ヘラクレスがシューティングスターに自己を投影する様子も様々な解釈で描かれていて、とても興味深かったです。

今回は、限られた時間の中で1曲のほんの一部分の訳詞にチャレンジしましたが、1曲全体や一つの映画・ミュージカル作品の中でその曲の位置付けを見たときには、もっと様々な側面から原語詞を解釈する必要があることでしょう。その曲が登場人物の台詞として語られるべきなのか、歌としてそのまま美しく存在しているべきなのかといった視点によっても、異なる訳詞のアプローチが存在するのかもしれません。

普段、ごく自然に親しんでいる訳された楽曲たちが、どんなに繊細で注意深いプロセスを経て私たちに届けられているのか。その一端に触れることができたワークショップは本当に貴重で、作品を見る新たな視点を得ることができました。皆さんも、日本語に訳された楽曲を聴くときには、ぜひ、訳詞のプロセスに思いを馳せてみてください。さらに、原語から自分なりの日本語詞を考えてみると、そこには新しく、奥深い音楽の世界が広がっているかもしれません。

安井さん、内田さん、お忙しい中、とても特別で贅沢な時間を本当にありがとうございました。



+10