フィリピンの医療と障害分野 【障害局の方にお話を伺いました!】

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2月3日、Voice of Youth JAPANのメンバーは、フィリピンのMuntinlupa(ムンティンルパ)市から来日中のBuboyさんと懇談する機会に恵まれました。Buboyさんは、ムンティンルパ市で看護師としての仕事に従事された後、保健局で勤務され、1年ほど前から障害局に移られました。自らの経験をもとに、フィリピンの行政システムの概要やムンティンルパ市の医療・障害をめぐる現状と課題についてわかりやすくお話してくださいました。伺った内容をまとめ、皆さんにフィリピンやムンティンルパ市の公衆衛生、障害分野の一端をご紹介したいと思います。

 

フィリピンは7,000以上の島々からなる国家で、その内4,600ほどの島に名前がつけられています。Buboyさんの住むムンティンルパ市はルソン島のマニラ首都圏に属し、マニラ市から30キロメートルほど南に位置する都市です。

まず、フィリピンの行政の仕組みとしては、州(province)、市(city)、町(municipality)、バランガイ(Barangay)という四つの単位が存在します。このうちバランガイとは、50から100世帯程度の集落からなるフィリピンの地方自治における最小単位で、住民にとって最も身近な組織で、地域に根ざした農業、保健・衛生、福祉サービスの提供、公共事業などを行っています。医療サービスの提供も、各自治体がバランガイに設置したヘルスセンターを拠点に行われているのだとか。

ムンティンルパ市のバランガイヘルスセンターでは、診察・治療に加え、予防接種や検診に及ぶ医療サービスを無料で提供しており、地域住民にとってアクセスしやすい状態となっていると言えます。しかし、医師や看護師の不足は深刻な問題です。その他の課題として、フィリピン全土において、狂犬病による死亡者数が未だ年間300人ほどいること、結核患者の多さなども挙げられます。

また、メンタルヘルスの問題にも熱心に取り組んでいるそうです。自然災害の多いフィリピンで、被災後にその影響を最も受けやすいのは子どもたち。Buboyさんは、火災や洪水で家や家族を失ったことによって子どもたちが負った心の傷を、どう回復させていくかがとても重要だとおっしゃっていました。

 

現在Buboyさんは、ムンティンルパ市の障害局に移り、地域に暮らす障害のある人々やその家族を訪問し、その声を聞くことを大切にしながら仕事をされています。ムンティンルパ市ではまだ、障害者の自立や社会参加は十分に達成されているとは言えません。だからこそ、彼らを勇気づける存在、特にユースの存在が不可欠だと協調されていたことがとても印象的でした。また、災害時に最も困難な立場に置かれやすいのが、障害のある人々です。障害局では、彼らをどのようにサポートしていくのかという課題についても、検討を重ねられているそうです。

 

災害時における障害者の支援について学ぶため、初来日されたというBuboyさん。「日本の一番好きなところは?」という質問に対し、「resilience(回復力)が素晴らしい。」というお答えが。多くの災害から復興を遂げてきた日本の事例から、フィリピンに活かせることを学びたい、とお話してくださいました。

今回、参加したメンバーの多くが世界の医療・福祉や障害の分野に関心を持っていたため、Buboyさんのお話は非常に興味深いものでした。日本とフィリピンでは、行政システムや公衆衛生上の課題など、様々に違いはありますが、災害後のメンタルヘルスケアや障害者のインクルージョンなど、共通の課題や互いに学び合える点を見つけることができるのかもしれません。フィリピンやムンティンルパ市の状況について、これからもさらに深く知りたいと思いました。そして、誰もが健康で安全に暮らせる社会を実現するために、私たちユースにできることを考え続けていきたいです。Buboyさん、salamat po(ありがとうございました)。

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