あなたが今着ている服、誰がつくったか知っていますか?
私がこの質問に答えるなら、答えは「いいえ」。多くの人はこの答えを知らないと思います。
ファッションを楽しむことは人々の自由であり、人々の娯楽の一つと言えるでしょう。でもその裏で、苦しんでいる人々がいるという事実があるとしたら、皆さんどう思いますか?消費者である私たちが気づかなければならない、ファッションの裏側にある問題について考えてみましょう。
グローバル化によって国境を行き交うモノやサービス。サプライチェーンという仕組みによって、一つの製品が様々な国や地域で製造されている現代。その製造過程には、把握できないほど多くの人が関わっています。
以前、実際にアパレル企業で社長をしている方からお話を聞いた際、社長という立場にあっても、一つの洋服が作られる過程をゼロから把握することは不可能に近いとおっしゃっていました。
知らない人が作ったモノやサービスを使うことが、当たり前になっている現代において、自分が着ている服を誰がつくったかなんて、そもそも知る術がないですよね。それが当たり前であることこそが、私がここで提起したい問題です。
ここでもう一つ質問をします。
あなたが今着ている服、いくらで買いましたか?
この質問なら、多くの人が答えられると思います。
ファストファッションと呼ばれる大量生産型のブランドなら、シャツ一枚が1000円以下で売られていることも稀ではありません。
その価格、「正しい」と思いますか?
ここであえて「正しい」という言葉を使ったのは、「正しくない」可能性があるからです。
価格だけで判断ができる訳ではありませんが、一般的にシャツ一枚が1000円以下で売られているという状況は、私は間違っていると考えます。
理由は、その価格が倫理性を無視して作られた証拠だからです。
記事の序盤で述べたように、一枚のシャツが作られる過程で、多くの種類の人が関わります。コットンの栽培者(以下生産者)から、シャツのデザイナーまで、分野が異なるとともに立場も異なった人々です。
私たち消費者が知らないこの製造過程に、倫理性の欠如が発生します。
ここから、具体的にどのような問題があるのかを、シャツの製造を例としながら話していきます。
Pesticide Action Network (PAN)の調査1)によると、世界で使用されている殺虫剤の約16%、農薬全体の10%がコットン農場で使われていると報告されています。農薬の使用は、生産者の健康に大きな害があります。実際に農薬が原因で、癌、生殖機能障害、免疫力低下等、様々な健康被害があることが明らかになっています。このようなリスクのある状況下で働く生産者に支払われるのは、生産コストを下回るほどの低賃金です。つまり、「コットンを栽培するためにかかるお金(土地、農薬、水代等)>賃金」となるため、結局生産者にとっての利益はゼロ、もしくはマイナスになるということです。
このような問題を解決するため、最近では「フェアトレード」商品も多く流通しています。少し価格は高いですが、製造過程に関わる全ての人の労働環境を考えているからこその価格です。自分が着る服の背景を考えた洋服選びも、意識してみると意外と簡単です。
消費者として、「安くて良いものが欲しい」と思うのは当たり前でしょう。
でも、少し考えてみてほしいのです。
「あなたが今着ている服、誰がつくったか知っていますか?」
この答えを知らず、考えることもないままに進む消費社会の背景に、苦しむ人がいることを。
1) http://pan-international.org/wp-content/uploads/2013/12/WG1-Eliminating-the-Worst-Pesticide.pdf
日本出身の学生です。特にエシカル消費について関心がありますが、VoYJのライターとして、様々なトピックについて自分の意見を表現させてもらっています。