おうちじかんリレー③レコードで音楽を鑑賞しよう!

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みなさんは普段何で音楽を聴いていますか?

私が小学生の頃は、CDプレーヤーで音楽を聴いていた記憶があります。
辞書くらいの厚さになったCDファイルとSONYのコンパクトCDプレーヤーを持ち歩いて、いつも聴いていました。MDなんてものもありましたね。

私の父からは「小さい頃はレコードをすり減るほど聴いていて、カセットテープが出てからは自分が好きな音楽を録音して持ち歩くようになった。」というような話を聞いていました。カセットテープに好きな音楽を録音してまとめて、友達に渡したりして。プレイリストですね。

中学生になった頃にiPodを手に入れて、何万曲を手のひらで持ち運べることに感動した覚えがあります。そして、今や、みなさんもそうなのではないかと思いますが、「Apple Music」や「Spotify」のようなストリーミングサービスで音楽を聴いています。

 

この音楽メディアの進化は、「いかに音楽を持ち運ぶか」という歴史であったとも言えます。とても持ち運べるようなものではなかったレコードがみるみる小さくなり、音楽はデジタル・データ化して、今では自分のデバイスの中にさえ音楽は存在していません。 

そして、この「いかに音楽を持ち運ぶか」という進化は、ストリーミングサービスで終止符が打たれたと言えるでしょう。この世の中にあるほとんどの音楽、何千万という曲がどこでもいつでも聴くことができます。あれほど手間がかかったプレイリスト作りも、あっという間にできるようになりました。

 

そこで、いつでもどこでも、手軽にどんな音楽でも聴くことができる今の時代だからこそ、「家でじっくり音楽を鑑賞する」ということを見つめてみたいのです。

家で好きな音楽を聴くのだから、別にメディアが軽くて持ち運べる必要はありません。

大事なのは、何よりも、音楽を聴く「体験」です。

 

「家でじっくり音楽を鑑賞する」ことを考えた時に、私はレコードっていいなあ、と思うのです。この記事では、そのオススメポイントをいくつか書いていきます。

    CDやストリーミングとは違った音がする

昔から言われる代表的なものとして「レコードの方がいい音がする」という言葉があります。その根拠を説明すると、レコードは音の波をそのまま記録している「アナログ・データ」なので、CD以後の、点の集合である「デジタル・データ」よりも単純に情報量が多いと言えます。また、「デジタル・データ」では容量を軽くするため、人間が聞こえない範囲の周波数をカットしていたりします。それゆえ、「レコードの方が音がいい」と言われることが多いのだと思っています。

イメージ図 http://www.amei.or.jp/report/DR_Div/base.htm より

ですが、「アナログ・データ」の最大の欠点は「劣化」で、ノイズなどが入りやすかったりします。再生機材によっても、その音のクオリティには差が出てしまったりもします。なので、その辺で買ってきたレコードを、適当な機材で再生して、「レコードの方が音がいい!!」って声高に言うつもりはありません。

 

しかし、レコードで聴くと、やっぱり、CDやストリーミングとは違う音がするんです。

先ほど言ったように、人が「聞こえないけど感じる音」が含まれているからでしょうか、暖かく感じたり、包まれるように感じたり、厚く感じたり、とにかく違う音楽体験がそこにはあります。

 

また、同じアルバムでも、発行された国や年代が異なるもの、リマスター1)されたもの、溝が深く掘られている重量盤など、色々な種類があって、そして「劣化」があるからこそ、1枚1枚のレコードの個性が違ってきます。買ってきたレコードをかける度に、新しい体験がそこにはあります。

私は大好きな『Abbey Road/The Beatles』を3枚持っています。左からUS盤、国内盤、UK重量盤 Remasteredという感じで、それぞれ違います。

②    作り手の思い描く音楽体験に近づくことができる

何も、90年代以降の音楽などもレコードで聴くのが1番いい!と言っているわけではありませんよ。最近の音楽などは、普通に家でもストリーミングで聴きます。なぜならCDやストリーミングで聴くことを作り手が想定しているからです。

私がとても好きなのは60〜70s頃のロックです。この頃は、当たり前ですが音楽を発表するとなった時、媒体はレコードでした。つまり、アーティスト達はアルバムを作る時、聴き手がレコードで聴くことを意識して作っていたのです。

 

今は割と音楽を「曲単位」で聴くことが多かったりしますよね。好きな曲をいろんなアルバムから引っ張ってきて、自分のオリジナルプレイリストを作って、シャッフルして聴く、なんてよくあることです。

ですが、レコードではそんなことは基本的にはありません。LP2)に針を落として、1曲だけ聴いて違う盤に変えるなんて、そんなことする人は少数です。シャッフルに関しては自力では不可能に近いです。

つまり、アーティスト達は「アルバム1枚」、もっというと「レコードで聴くアルバム1枚」を意識して音楽作りをしていたと言えます。

一貫したコンセプトの下、作成されたアルバムを「コンセプト・アルバム」と呼ぶことがあり、まさに「アルバム1枚」単位で聴かせる代表的なものです。中央の『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band/The Beatles』は世界初のコンセプトアルバムと言われています。

 

「A面には25分までしか入らないから、次は3分くらいの曲を入れたいな」

「ここでレコードをひっくり返してB面に移るから、B面の1曲目はこんな感じの雰囲気の曲がいいんじゃないか」

「片面で1曲にしちゃうか」

 

きっとそんなことを考えながらレコーディングをしていたに違いありません。

 

そう考えると、ストリーミング上のアルバムでは特に意識しなかった、曲順や、7曲目くらいに突如入ってくるポップな曲や、24分くらいのプログレ3)の曲も、レコードで聴くことで、そこにアーティストの想いや熱意を感じながら聴くことができると思うんです。

もちろん今でも、「アルバム」という単位に重きを置いて曲を出しているアーティストの方はたくさんいます。(今大人気「King Gnu」とかもコンセプチュアルなアルバム出してます。)そもそも聴くことを想定している媒体が違うので、今と昔では音楽の聴かせ方自体も変わっています。

特に、昔のアルバムが好きで、よく聴く人は、レコードで聴いた方が、よりアーティスト達が想定した音楽体験に近づくことができます!!!ということをお伝えしたいのです。

コンセプト・アルバムを更なる高みへ導いたのはプログレッシブ・ロックだと言われることもあります。プログレの代表格「Pink Floyd」の名作たち。

    耳以外でも楽しむことができる

そもそも、レコードを持つことの良さとして「好きな音楽を所有できる」ということがあります。ストリーミング上では、いくら好きだからと言ってその音楽を持つことはできませんが、レコードは持てば自分のものです。数千万曲を1000円で聴けるこの時代に、1つのアルバムにそれ以上の値段をかけるのはもったないことだと思う方もいるかもしれませんが、好きなものを所有できるという感覚には代え難いものがあります。

 

そしてレコードを所有した時、楽しめるのは音だけではありません。

 

まず、ジャケット。

310mm×310mmほどの大きなキャンバスに描かれたアートワークはまさに絵画です。二つ折りのジャケットになればさらにその2倍の大きさ。表面のジャケットだけでなく、いわゆる「中ジャケ」にもたくさんの工夫が凝らされているものもあります。それを部屋に飾って、眺めるだけでも、ウキウキしてきます。昔から画面の中で憧れていたジャケットなら尚更です。

お気に入りの『Goodbye Yellow Brick Road/Elton John』は三つ折りのジャケットになっていて、中には収録されているそれぞれの曲をイメージした、鮮やかなイラストが描かれています。

 

レコード盤そのものにも色々な種類があります。

みなさんがよく知っているレコード、あれは強度を出すためにカーボンを入れているので、黒くなっているのです。そもそもは透明のポリ塩化ビニルなので、どんな色にでも着色することができます。黒だけでなく、赤や青、透き通っておらずマットな色のものなど、様々な色のレコードがあり、それはそれは美しいです。中には、丸ではない形に切り出されてる「特殊盤」と呼ばれるものもあるんですよ。

色付きや特殊盤の綺麗なレコ盤たち。左から『Rubber Soul/The Beatles』、『Solid State Survivor/Yellow Magic Orchestra』、『Sunshine Days/The Beach Boys』、『FANTASMA/Cornelius』、『Pops We Love You / Various Artists』。

 

そして、ライナーノーツ。

レコードの中には大概「ライナーノーツ」と呼ばれる解説文が、歌詞カードとともに入っています。レコードを再生しながら、歌詞を見るだけでなく、ライナーノーツを読み、その音楽に浸ることが大好きです。

ライナーノーツを執筆している人はその盤によって様々です。音楽評論家やコラムニストなどが書いていることが多いですが、その作品作りに関わっている方々が書いていたり、アーティスト本人へのインタビューが載っていることもあります。

いずれにせよ、普段表に出ないような製作者の人生や、作品に対する想い、作品の背景などが文章の中に散りばめられており、その作品、そのアーティストへの理解を深める上で欠かせない情報が詰め込まれている、とても貴重なメディアなのです。この隠れた文章メディアにこそ、私たちの知的好奇心を満たし、世界を広げてくれる、素敵な出会いがあります。

 

さらには、歴史を感じて楽しむこともできます。

昔のレコードは、基本的に中古で買うことがほとんどです。

レコード屋さんに行って、レコードを探すのですが、そこには、その日その時間に行かなければ出会わなかった、一期一会なレコードとの出会いがたくさんあります。

例えば、私が持っているThe Beatlesの『Help』というアルバムはフランスで発行された欧州盤です。「MADE IN FRANCE」という文字や、売られたときに貼られたであろう「17.50」という値札が、お茶目な店主がジャケットに直接貼ってしまったんだろうな、という感じで貼られています。

値札の文字から、なぜか薬局で売られていたであろうことも伺えます。

 

このレコードは1965年の発売以降のどこかのタイミングでフランスで刷られ、いくつかのレコード屋さん、何人かの人の手に渡りながら、国境を渡り、今日本で私が聞いています。それってとても感慨深いものではありませんか?

ただ音楽を聴くだけでなく、このレコードが渡ってきた歴史や、かつてこのレコードを聴いていたどこかの誰かを想像しながら、さらに深いものとして味わうことができるのです。そう考えると、時々入ってくるノイズや、ちょっとした針飛びなども、レコードの個性として愛らしく感じてきます。

このような音以外の色々な情報が、聴覚だけではなく、五感や頭を使いながら、表現された世界を楽しむ、そんなレコードの音楽体験の欠かせない重要な役割を担っているのです。

Photo by M.Y 可愛いプレーヤーを部屋の片隅に置いて、気軽に楽しむこともできます。

 

この他にも、書ききれないレコードの魅力はまだまだたくさんあります。この文章を読んで下さったみなさんが、少しでもレコードに興味を持っていただけたら幸せです。

機材を揃えたりすることに、少しハードルを感じる方もいるかもしれませんが、今の時代、レコードを再生するための機能が全て備わっている「オールインワン・プレイヤー」も数千円で買うことができます。興味を持って下さった方、ぜひポチってみて下さい。

 

家で過ごすことが多い今日この頃。

ぜひレコードを手にとって、いつもとは違う音楽体験をしてみませんか。


1)旧譜や古い音源を再発するときに、マスター・テープを起こしなおすこと。アナログからデジタル化したり、ノイズを消去する作業が行われる。
2)「ロング・プレイング」の略で、いわゆる「アルバム」のこと。1番よく使われた12インチ盤では片面25分ほどの収録が可能。
3)プログレッシブ・ロックの略。1960年代後半のイギリスに登場したロックのジャンルの1つ。進歩的、革新的なロックを意味する。

 

<参考>
『はじめてのレコード』(2015)DU BOOKS
音楽電子事業協会「基礎知識」http://www.amei.or.jp/report/DR_Div/base.htm

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