「戦争って何?」20年後、戦争を知らない子供たちに聞かれたら

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「東日本大震災…って、なんか、おっきい地震ですよね?」

 

中学受験生向けの個別指導塾で、ある生徒に言われた言葉。この言葉が今回の記事を書くきっかけとなりました。

 

その日、ある穴埋め問題で「東日本大震災」と答えさせるものがありました。

「先生、これ分かんないよ」

知識はあるのに問題文をよく読まないで答えられない、という中学受験生あるあるのパターンだなと思いました。

「ほら、リード文に3月11日って書いてるんだから、東日本大震災でしょ」

そう説明すると、その生徒は何となく分かったような、分からなかったような様子で首をかしげました。そして、冒頭の言葉を口にしたのです。

 

驚きました。

震災時、私は関東に住んでいました。それでも私が経験した中で一番大きな揺れで、周りには泣き出す子もいました。そして何よりも、連日報道される東北の映像に言葉が出ませんでした。あれから8年。その頃の記憶がない子供たちにとって、それは年表の一出来事になってしまったのか、と感じました。

 

しかし、同時にあることに気が付きました。私にとって、祖父母が経験した「戦争」も、歴史上の出来事になっているじゃないか、と。もちろん、戦争の悲惨さは分かっているつもりです。実際に沖縄の方に話を伺ったことも、防空壕に行ったこともあります。毎年ニュースや特番も見ます。高校1年生の時に初めて原爆ドームを見て、広島平和記念資料館にも行きました。それでも、自分が大人になった時、子どもに「戦争って何?」と聞かれても、聞いたことや感じたことをうまく伝えられる自信がありません。仮に、未来の子どもたちに、教科書に載っているような戦争の様子を伝えたところで、「なんか、悲しい出来事だったんだな」で終わってしまうかもしれません。

 

だから、私は自分の中で小さな目標を立てました。それは、「直接聞いたこと、感じたことを、自分の言葉で表現できるようにする」ということです。歴史上の出来事を風化させないためにどうすればいいか。考えて、考えて出た結論は、やはり、伝え続けること、これしか思いつかなかったからです。そして、その時に事実よりも「思い」を伝えられる大人になりたいと思います。戦争を経験された人々の「思い」に触れ、それを言語化できるようにしたい、と。

 

2013年に公開された映画、「永遠の0」の劇中で、夏八木勲さん演じる賢一郎はこう言います。

“あと10年もすれば、私たちの世代はほとんどいなくなる。この話を、おまえたちに伝えられてよかった”

この言葉の通り、日本はこれから、「誰もが戦争を経験していない」世の中に向かっていきます。そして私たちは“経験した者”と“経験していない者”を繋ぐことができる最後の世代かもしれません。

 

「戦争って何?」皆さんは、20年後、そう聞かれたらどう答えますか?

 


 

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