第4回VoYJ全国ユースおうち会議を行いました!【第2弾】

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こんにちは、VoYJ事務局の金澤です!

9月23日(木・祝)、第4回おうち会議を開催し、今回も意欲のある多くの方に参加していただいたおかげで充実した会議となりました。
今回のテーマは、東京オリンピック・パラリンピックの開催にちなみ、「スポーツ×〇〇」。

前回の記事では東京事務所の原口さんのレクチャーの内容を発信しました。
第2弾は、1996年アトランタオリンピック競泳 日本代表であり、UNICEF教育専門官(休職中)として数々の開発途上国で教育支援をしてこられ、現在は東京2020組織委員会ジェンダー平等推進チームアドバイザーでもある井本直歩子さんのレクチャーの内容を発信いたします。

井本直歩子さん

 

井本さんが競泳選手からJICAやUNICEFに携わるようになったきっかけ

井本さんは選手として競技をしていく中で、特に開発途上国の方の練習装備の不足や栄養面での知識不足を目の当たりにし、国や地域ごとの不平等感を感じるようになったと言います。高校3年生の時にルワンダ大虐殺という衝撃的な事件が起こり、それを受けて「自分はこんなに恵まれているのだから、オリンピック出場という自分の夢を叶えたら、次は世界中の人のために働きたい」と思われたそうです。その後競技を続けながら大学へ進学し、アメリカに留学して国際関係論を学び、競技引退後は紛争解決について学ぶためにイギリスの大学院に進まれました。

それからJICAに就職され、紛争後のシエラレオネやルワンダで平和構築支援を行い、2007年からはUNICEFでスリランカやハイチ、ギリシャなどで難民支援を行われました。2020年3月には、赴任先のギリシャで、オリンピック・パラリンピックの聖火引き継ぎの日本代表の代役として務められ、今年3月からはオリンピック・パラリンピック組織委員会のジェンダーアドバイザーに就任されました。

©Naoko Imoto

 

スポーツが社会課題を解決するか

オリンピック・ムーブメントとは、「如何なる差別をも伴うことなく、友情・連帯・フェアプレーの精神をもって相互に理解し合うオリンピック精神に基づいて行われるスポーツを通して、青少年を教育することにより、平和でより良い世界を作ることに貢献すること」です。

 

★大坂なおみ選手は、ハイチと日本両方のルーツを持つ方で、多様性の象徴であり、ブラック・ライブズ・マターに関する活動もされています。

★ユニタードは足首まで覆われたユニホームで、ドイツチームが、女性スポーツ選手を性的な目で見ることへの抗議として採用しました。

★アメリカ砲丸投げ選手はアフリカ系アメリカ人で、同性愛者でもあり、抑圧と差別に対する抗議を行いました。

★パラリンピックは、障がい者とのバリアフリーにおいても多大な貢献があります。

★組織委員会関係者による差別的な発言により、ジェンダー問題への理解不足が浮き彫りになり、世間に広く認知されました。

★水谷・伊藤卓球男女ペアは、伊藤選手がメンタルや技術の面で主導し、水谷選手がサポートに回っている姿が見られました。

メディアを通して、男性優位のスポーツ界を覆し、伝統的な「女性らしさ」の価値観を打ち破ってくれる多様でかっこよく逞しい女性像を発信することができました。

また、多様性の象徴として、混合種目は9から18に増やし、男女の格差是正を試みました。

★アメリカで有名な女子サッカー代表キャプテン、ミーガン・ラビノー選手など、レズビアンのカップルのアメリカの選手もいました。

★難民選手団も平和問題への関心を高めました。

★重量上げに初めて「元男性」のトランスジェンダーの女性が出場しました。

 

※ブラック・ライブズ・マター(英: Black Lives Matter、略称「BLM」)
アフリカ系アメリカ人のコミュニティに端を発した、黒人に対する暴力や構造的な人種差別の撤廃を訴える、国際的な積極行動主義の運動

 

支援活動:UNICEFはスポーツを熱心に開発援助に取り入れている

イタリアにあるUNICEFイノチェンティ研究所では、「開発のためのスポーツ」というテーマで、スポーツの開発支援への効果についてのエビデンスを出し、それを用いた貧困削減や子どもへの効果のリサーチを深める動きがなされています。

井本さんが2007年にスリランカに行かれた際には、内戦によって多くの国内避難民(IDP)がいました。IDPキャンプではまず、スリランカで親しまれているクリケットというスポーツをできる場所を作りました。自然災害や紛争などの緊急支援においては子どもの心のケアが大切なので、避難所や難民キャンプや、仮設教室を建てる場合も、スポーツを行う場所を作ることも大切です。UNICEFは遊び道具やスポーツ用具が入った「レクリエーションキット」という支援物資の提供も行います。

井本さんは、赴任した国々で、週末に子どもたちに水泳を教えていたそうです。マリではかつての競泳のチームメイトたちからいらなくなったたくさんの水着を寄付してもらい、生徒の中から、リオデジャネイロ・オリンピックに出場した選手もいました。

ギリシャでは、日本ユニセフ協会大使の長谷部誠選手が、約1,500人が身を寄せるギリシャ最大規模の難民キャンプであるエレオナス難民キャンプを訪れ、子どもたちと​​​​一緒にサッカーをし、勇気を与えました。ギリシャには20ヶ国ほどからの難民がいますが、その中でも出身国によって格差や差別があります。その格差・差別是正のためにも、積極的にスポーツを用いているのです。

 

スポーツによって平和構築は達成できるのか

差別を無くすことや、心のケアによって豊かな心を育むことも、平和に繋がります。ただ、「スポーツは争いのある民族同士の融和を成し遂げられるのか」という研究については、仮設はとても有力ですが、まだそこまでエビデンスの提示が進んでいません。日本では大阪大学や静岡大学などで研究が行われていますが、「いかに民族融和及び平和を量的にはかるか」という研究を深めていかなければなりません。これは、スポーツによって個人の考え方、つまり敵対する民族に対する感情、平和へのモチベーションがどう変化したかを量的に表すということです。これからそのエビデンスを取っていくため、研究者たちは苦心しています。

私がUNICEFマリ事務所で平和構築教育を担当していたときも、対立する民族同士がいる内戦地域で、皆でスポーツ大会をして友情を深める取り組みも行いました。

 

スポーツに関して世界のユースが抱える問題

開発途上国ではスポーツをしたい子どもたちが多く、井本さんが男の子に夢を聞くとほとんどが「サッカー選手になりたい」と言うそうです。しかしその情熱は、慢性的なスポーツの機会不足や、女子や障がい者の参加機会不平等、指導者不足、空腹、紛争等によって阻害されます。

スポーツへのモチベーションは高いので、スポーツを使った取り組みを盛んに行おうとするのですが、なかなか上手くいかないことが多いのです。スポーツよりも職業訓練や勉強が優先される中、「どのようにスポーツを取り入れるか」は課題だと感じています。インフルエンサーや有名スポーツ選手との取り組みも効果的です。

 

全ての子どもたちへの包括的かつ平等なスポーツ機会の提供は、社会問題を解決し、平和構築へと繋がる。

“SPORTS X SOCIAL CHANGE”  “SPORTS X PEACEBUILDING”


 

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