第4回VoYJ全国ユースおうち会議を行いました!【第3弾】

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こんにちは、VoYJ事務局の金澤です!

9月23日(木・祝)、第4回おうち会議を開催し、今回も意欲のある多くの方に参加していただいたおかげで充実した会議となりました。

今回のテーマは、東京オリンピック・パラリンピックの開催にちなみ、「スポーツ×〇〇」。

前回の記事ではアトランタオリンピック競泳 日本代表であり、UNICEF教育専門官(休職中)東京2020組織委員会ジェンダー平等推進チームアドバイザーである井本直歩子さんのレクチャーの内容を発信しました。第3弾では、井本さんとの質疑応答と、「スポーツ×教育、難民、ジェンダー」をテーマとしてそれぞれのグループで話し合って出た意見を一部抜粋してご紹介いたします。

井本直歩子さん

質疑応答

Youth:「難民の子どもたちの間にある差別感情やいじめ、対立がある現状の中、融和のためにスポーツがどれほど貢献できるか、量的に測ったエビデンスが不足している」と仰っていました。人種の違いや障がいの有無によっていじめが起こってしまう民族混合の学校で、スポーツを普及させる支援を行う前と後で、相手の民族や障がい者の方へ持つイメージを調査して、どれだけ「負の感情が軽減したか」という調査は具体的にどのように行われているのでしょうか。またその結果が知りたいです。

井本さん:「民族融和をどのように測るか」という指標がまだそこまで確立されていません。個人の感情や、いじめや喧嘩の件数などといったものは、とても測りづらく難しいです。その代わりに、一緒にスポーツする回数や参加率などの、間接的な代替指標を用いる必要があると思われます。
量的な測定は、個人の対立する民族への感情や、平和を求める感情を測る指標を統一しなければなかなか難しいです。
研究者は懸命に色々と研究していますが、「いかにエビデンスをしっかり残せるか」についてはまだ未開拓分野です。
大阪大学の岡田千あき先生は、「スポーツと平和・開発」の研究における日本の第一人者で、​​国際健康・スポーツ分科会副会長もされています。
岡田先生のシンポジウムでも、まだまだ未開拓な研究分野であることを実感しました。

Youth:「スポーツ参加において性差や障がいの有無によって起こる不平等が課題」と仰っていましたが、スポーツの有用性や優先度を認めてもらうため、例えば女子の参加を促すためには「健康な体づくりのため」、障がい者の方には「心のケアとリハビリのため」など、さまざまな理由づけとアピールをしていくことが必要だと感じました。スポーツの有用性や優先度を認めてもらうための具体的な解決策があれば、教えていただきたいです。

井本さん:私はもっとスポーツを前面に出したプロジェクトを増やすべきだと考えます。UNICEFにはセクターがあり、保健、栄養、水と衛生、子どもの保護、教育、HIVエイズなどの支援活動を行っています。スポーツを用いた支援は、子どもの保護や教育、ユースのための部署などで実施することが多いのですが、スポーツの促進をプロジェクトの目的に設定することはありません。
例えば、子どもの保護に関する支援で、プロジェクトの目的が「子どもにやさしい空間」の設置であれば、スポーツを取り入れるようになっています。そのためにはスポーツの有用性をきちんとデータで示し、資金を集めていかなければなりません。
男の子はスポーツが好きな人が多くすぐに参加するのですが、女の子の参加率は低いのが現状です。女の子の参加率を上げるために皆とても努力していますが、思春期の女の子たちはスポーツに参加したがらないことが多いです。いかに女の子、特にユースをスポーツに取り込んでいくかは課題になっています。
より多くの女の子にスポーツに参加してもらうことで、女の子のエンパワーメントやコミュニケーション、リーダーシップ、ジェンダー啓発を行うことができます。UN Womenではスポーツを積極的に使って女子のエンパワーメントを行う動きがあります。さらに教育、保健などの色んなセクションが協働して行っていく必要性を感じます。

Youth:対立の緩和や人間関係の構築のためにスポーツを用いる上で課題になることで、個人の身体能力に差がある時、スポーツコミュニティに入りづらくなってしまうことがよくあると思います。このような障壁を無くすために、スポーツを行う上でのルールやコミュニティの作り方で工夫されていることはありますか。

井本さん:従来はスポーツが得意な人たちの参加が多かったように思います。コミュニティーから阻害されがちな、自信がない方や、個人の身体的ハンデや運動能力差のある方を取り込むことは課題であり最初の目的です。民族融和となるとハードルはさらに上がるので、まずは一つのコミュニティの中で誰一人取り残さないことが必要です。
まず、幼少期からスポーツに触れること。遅れてしまうとどんどん参加率は下がります。次にゲームとしてのスポーツ実施です。体力勝負は避け、試合より練習を重視し、皆が楽しめる遊びの要素を入れて、ストレッチや運動への慣れ、ペア作りが有効です。ペアやチームは言語や出身で分かれがちですが、意識的に異なる民族同士を混合にするようにもしていました。

Youth:普段対立している民族同士が実際にスポーツをする際、すぐにその壁を越えて仲良くできるのでしょうか。その際の子どもたちの様子などが知りたいです。

井本さん:すぐに仲良くなるということはありません。喧嘩が絶えなかったり、差別感情や憎しみが再燃してしまうことがあります。教室やスポーツにおける子どもが作った独自ルールを皆で守ることが大事です。教室やプレー中で「差別的なことは一切言わない」「相手のことを否定しない」「話を聴く」などです。お互いの差別感情はなかなか消えず、大人になるほど強くなる傾向もあります。一緒にプレーする中で尊敬する気持ちを育むことが必要だと思います。

Youth:国民のナショナリズムを扇動するようなスポーツの政治利用により、紛争に発展した事例もあります。スポーツを通した平和構築と政治利用されかねないところのバランス、アプローチの仕方について教えてください。

井本さん:政治利用というのはどこにでもあって、身近なところでは最近のオリンピック開催があります。エルサルバドルとホンジュラスのサッカーの試合の結果が紛争の引き金となった事例もそうですし、パキスタンとインド、スリランカとインドのクリケットの試合や、アフリカのネイションズカップでのナショナリズムの動きはとても強いです。
それに対抗するため、政治が絡まないように、スポーツをポジティブにする取り組みをもっと増やしていく必要があります。国単位では対立構造が顕著になってしまうので、草の根でのNGO的な取り組みや、個人の感情に訴えかける形で、格差・分断を是正していくことが大切だと思います。

 

全国のユースと「スポーツ」を語ろう!

ここでは、それぞれのグループから出た意見の一部を紹介させていただきます。

  • 「スポーツ×教育」
  • スポーツが持つ、教育面でのプラス要素を積極的に考慮していく必要があります。
  • 部活では、運動部と文化部というふうに分ける必要はないと思います。
  • オリンピックがあるように、音楽などの文化にも比重が置かれたイベントがあると良いと思いました。

 

  • 「スポーツ×難民」
  • 民族対立の融和以前にクリアしなければならない課題が多いのではないでしょうか。「コロナによる授業不足」「低い就学率、高い退学率」「ジェンダー差、障がいの有無による教育機会の不平等」などです。
  • 取り組みが単発になってしまうことが多いですが、一回の取り組みで民族融和は達成されないと思います。スポーツだけで解決しようとするのではなく、学校教育やコミュニティの対話など、平和構築のためのたくさんのフレームワークの中の一つとして、スポーツを行うことが大切です。
  • UNICEFは長く関係省庁に関わっており、現地の役人とプログラムを行うことに長けています。一長一短ではありますが、UNICEFは色んなセクターが協力して国の政策を動かせるのに対し、JICAはセクターを決めて活動を進めていくことが多いです。
  • 民族融和は当事者の責任によるところが大きい問題であり、状況をあまり理解していない人が気軽に踏み込んではいけない場合が多く、できることが限られています。

 

  • 「スポーツ×ジェンダー」
  • チアリーディングやバレエなど、女性が参加するイメージのスポーツなどに憧れを持ち、女性側が取捨選択しているのではないでしょうか。すべてのジェンダーが参加できるはずのスポーツも、イメージで興味を持ってもらえないことがあります。男女平等参加の共通認識がないと人の目も気になります。
  • 見た目や服装など、競技に関係のない部分がクローズアップされていることに疑問を感じました。
  • ダンスは性差や民族を超える可能性を秘めていると思います。また年齢・性別・体力に左右されない「ゆるスポーツ」も包括的なスポーツ参加を促せるのではないでしょうか。
  • 「ママさんアスリート」の紹介はあるが、男性にはないということが疑問に感じました。

その背景には分業意識が残っているようにも思います。

 

事務局からのメッセージ

第4回おうち会議、第1弾〜第3弾の記事はいかがでしたか?
まだ読まれていない記事がありましたら是非目を通していただけると嬉しいです!

今回は同じ「スポーツ」というテーマを、あらゆる方面から捉え、考え直す新たな良い機会になりました。
おうち会議も回数を重ね、人との繋がりも強化・発展し、ここから新たなコラボプロジェクトもできないかと考えているところです!
ゲストスピーカーとして参加してくださった井本直歩子さんと原口さん、参加してくださった皆様、本当にありがとうございました!!

次回のおうち会議はさらに進化・充実するはずです。
どうぞお楽しみに!


 

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