セレンゲティ国立公園 〜自然は「守る」ものなのか〜

あなたの知らない世界
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2020年の春休み、私はずっと憧れだったサバンナの動物たちに会いに行くため、海外ボランティアとして6週間タンザニアを訪れました。アフリカ渡航も、一人での海外渡航も初めてだったのですが、大自然に囲まれた生活への憧れと、そこに住む人たちが自然に対して感じている気持ちへの興味から、勇気を出して渡航することを決めました。

 

私が訪れたのは、タンザニア北部にあるセレンゲティ国立公園です。「セレンゲティ(Serengeti)」とは、マサイ語で「果てしなく広がる平原」のこと。この国立公園は、関東平野と同じくらいの広さを持つ世界でも有数の国立公園で、「サファリのメッカ」と言われています。本当に果てしなく広かったです。ビッグ5と呼ばれる、ライオン、アフリカゾウ、バッファロー、ヒョウ、クロサイをはじめとして、数多くの野生動物が生息します。2019年には、“World Travel Awards” において、アフリカで一番の国立公園に選ばれました。

2歳半の時にパンダに一目惚れして以降、ずっと動物が大好きで、動物を「守る」仕事がしたいと思っていた私ですが、セレンゲティ国立公園の壮大な自然を目の前にして、考えの変化がありました。以下の文章は、セレンゲティ国立公園から帰ってきて次の日に書いたものです。まとまった文章ではないですが、考えの変化や大自然を目の前にした感動が最も表れているのではないかと思ったのでそのまま掲載します。

 


セレンゲティ国立公園。

 

そこには何もなかったけれど、大事なものが全てありました。

壮大で、美しくて、「命」が感じられる場所でした。3日間はあっという間で、夢なんじゃないかなって思ってしまうので、書き留めてみることにします。

 

ずっと憧れていたサバンナ。

どんな動物がいるんだろう?どんな景色が見られるんだろう?絶対楽しいに決まってる!

そんなことを思いながら期待に胸をふくらませて軽い気持ちでゲートをくぐると、感じたのはなんとも言えない張り詰めた空気。

 

恒常的に命のやり取りがなされる場所で、どの生き物も「生きよう」としていて、気を抜いたら自分の命も取られるかもしれないという緊張感がありました。

 

群れを守るため、鋭く澄んだ瞳をこちらに向かって真っ直ぐに向けてくるシマウマのオス。

ある程度近づくことは出来るけれど、けっしてセーフティゾーンを割らせないチーター。

1頭のインパラを狩るために、膨大な時間をかけてゆっくりゆっくり近づくライオンのメス。

赤ちゃんだけは守ろうと、決して警戒を解かないゾウ。

そして、畏怖の念さえ感じてしまうほど堂々としてかっこいいライオンのオス。

 

大自然はきっと、生易しいものではないのだと思います。包み込むようなものではないのだと思います。サファリカーの中で窓を閉めて籠っていたら、拒絶されるような気がしました。

けれど、窓を開けて深く息を吸い込んだ時、サファリカーから降りて周りを見渡してみた時、確かに受け入れてくれるような気がして、なんだか心地よく感じました。

「生きよう」とする彼らに会って、とにかく壮大で美しい大自然に囲まれて、思ったのは「彼らを守りたい」ではなくて、「あなたたちと一緒に居させて欲しい」っていう気持ちでした。

 

そう。「一緒に居させて欲しい」

 

環境が悪くなって、人間が生きられなくなって絶滅したとしても、究極的に生態系がなくなることはなくて、たぶん命は繋がれていく。違う形で生態系、自然は引き継がれていく。

でも、自分たちはこれから先も生きていきたくて、彼らと一緒に綺麗な自然に住んでいたくて、「変わらないで欲しいもの」は確かに存在する。そんな「変わらないで欲しいもの」を大切にしたいと、心から思いました。

そのために自分は、自分の人生を歩んでいきたいと、いまはすごく思っています。とてもとても素敵で、本当に来て良かったです。

あと、ツアーガイドのInnocent もとっても素敵な人でした。滞在中にずっと仲良くしてくれた、タンザニア人の友達のお兄ちゃんなんです。すごく親切で、すごく自然が好きで、かっこよかった。

 

彼に

“What is the best experience in this park?” (この国立公園での一番の思い出はなに?)

と聞くと、

“Everything. They are different every time.” (全部だよ。彼らはいつも違う一面を見せてくれるんだ。)

とのこと。

 

すごいなと思いつつ、何百回も来てるのにそんなこと言えちゃうの?って思ったのですが、自分たちも回ってみて思いました。ほんとに一つ一つが素晴らしいなって。

ツアーガイドのInnocent(右から2番目) とシェフ(右から4番目)、ドイツ人ボランティアの友達2人(右から3,5番目)と共に。セレンゲティ国立公園のゲートにて。

途中、すごいスコールで何にも見られないこととか、穴にハマっちゃったサファリカーを助けるために1時間くらい止まっちゃったこともあったんですけど、「リラックスして、自然をRespect していれば、きっと素敵な顔を見せてくれるよ」って。

ほんとにそうでした。雨が去った後、チーターのオスと、ライオン、ジャッカルやシマウマの群れに会うことが出来ました。雨は雨で、とってもパワフルな一面を見せてくれました。

観光で来ることももちろんできるんですけど、ボランティアとしてここに来ることが出来て良かったなって。

現地の人たちが何を考えて、どんな風に暮らしているのかを知ることが出来たから。タンザニアの自然にみんな誇りを持ってるんです。自然に囲まれた生活を1ヶ月して、自然への敬意を持つことが出来たから。1人で来れて、1人でいろんなことを考えられたから。

 

「環境問題はダメだ!地球を守ろう!動物が、自然が可哀想じゃないか!なんでわからないんだ!」

って、声を荒らげて叫ぶことも出来る。そうやって叫ぶことが必要なこともあるかもしれない。だけどやっぱり、自分の根っこはこの自然に出会い、囲まれて感じた「一緒に居させて欲しい」って気持ちなんだなって。この気持ちを、忘れないようにしたいです。

 

「守る。可哀想。」ではないのかもしれないですよね。

 


 

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